トランプが対峙した米国の「怪物」――黒人層に迎合する政治家、暴動を支える構造、そして法と秩序の崩壊

トランプ大統領が掲げた「Drain the Swamp」とは何だったのか。
2020年のジョージ・フロイド氏死亡事件後に全米で発生した暴動、民主党系政治家の対応、バイデン陣営スタッフによる保釈基金への寄付、警察予算削減運動をめぐり、渡辺惣樹氏が論じた米国政治の構造を記録する。


2020-07-09
トランプが対峙した米国の「怪物」――黒人層に迎合する政治家、暴動を支える構造、そして法と秩序の崩壊
以下は、「トランプの敵――そのおぞましい素顔」と題して月刊誌『WiLL』に掲載された、渡辺惣樹氏の論文からである。
渡辺惣樹氏は、世界有数の日米近現代史研究家である。
本論文は、日本国民のみならず、世界中の人々が必読である。
NHKなどの報道番組だけを視聴し、朝日新聞などの論調だけに接している人々には、決して知ることのできない事実と論点の数々が記されているからである。
本稿が発表された2020年、米国では、ミネソタ州ミネアポリスにおける黒人男性の死亡事件を契機として、大規模な抗議運動と暴動が全米に広がった。
人種差別や警察活動のあり方を問う平和的な抗議が行われる一方、一部の都市では商店の略奪、放火、公共施設や警察施設への襲撃が発生した。
しかし、日本の主要メディアは、暴動や略奪の責任、民主党系政治家の対応、警察予算削減運動が地域社会の治安に及ぼす影響について、十分に検証していたとは言い難い。
渡辺惣樹氏が本論文で明らかにしたのは、トランプ大統領とその反対勢力との争いが、単なる共和党と民主党の党派対立ではなかったということである。
それは、雇用と治安、法と秩序を重視する政治と、社会の混乱さえも政治的利益のために利用しようとする勢力との戦いだったのである。
就任から3年半、トランプは米国に巣くう「怪物」を退治してきた。
次に倒すのは、「黒人層に媚びる政治家たち」だ。
バイデンの邪心
2016年の大統領選挙前、ドナルド・トランプ候補の本質を知る者は、日本の保守層にも少なかった。
今年11月の大統領選挙では、トランプ大統領の再選を願う保守層は多い。
その理由を、あらためて書く必要はないだろう。
トランプ候補の公約の目玉は、「Drain the Swamp」、すなわち「ワシントンの汚泥をさらう――腐敗を一掃する」ことだった。
ワシントンに深く根を張る政官財のトライアングルや、利権団体の構造にメスを入れるとの宣言だった。
トランプ政権の3年半は、汚泥の中から現れた怪物たちとの戦いだった。
筆者は、民主党に保護されていた怪物が次々と退治されていく政治劇を「堪能」した。
最近現れた怪物が、黒人層に媚びる政治家たちである。
5月末、ミネアポリスで、警察官による拘束の過程で黒人男性が死亡した。
それを契機として全米各地で暴動が発生したが、渡辺氏は、激しく荒れたのは民主党市長が統治する都市ばかりだったと指摘している。
暴徒は商店を略奪し、警察施設まで襲撃した。
5月29日と30日には、少なくとも13人のバイデン陣営の選挙スタッフが、暴動に関連して逮捕された人々の保釈金を支援する「ミネソタ自由基金」に寄付したことを、Twitterに投稿している。
トランプ大統領は、彼らが「ビジネスを破壊し、人々の生活と仕事を台無しにしている騒乱を容認し、金銭的に支援している」と非難した。
渡辺氏は、バイデン陣営が、経済が疲弊し、治安が悪化している方が選挙で票を集められると考えたのではないかと指摘する。
雇用を第一に考え、経済活動と社会秩序の回復を重視するトランプ大統領とは、正反対の政治姿勢である。
さらに不可解だったのは、暴動への警備体制の不備を批判するのではなく、警察予算を削減せよという大合唱が起こったことである。
あたかも暴動の責任がトランプ大統領にあるかのように発言する市長たちも、これに同調した。
今度は、現場の警察官たちが憤った。
渡辺氏は、ある民主党市長の都市において、特殊部隊に所属する57人が一斉に辞表を提出した事例を挙げている。
警察官労働組合は伝統的に民主党を支持してきたが、法と秩序、すなわち「Law and Order」の回復を訴えるトランプ大統領を支持する方向へ転じる可能性もある。
本稿が提起しているのは、人種差別の存在を否定することではない。
黒人を含むすべての国民が、法の下で平等に扱われなければならないことは当然である。
しかし、人種差別への抗議を名目として暴力、略奪、放火が行われたとき、それを政治家や選挙陣営が容認し、直接または間接的に支援することまで正当化されるわけではない。
政治家が人種問題を利用し、特定の人種層に迎合することによって票を得ようとすれば、社会の分断はさらに深くなる。
被害を受けるのは、大企業や裕福な政治家ではない。
暴動によって商店を失う地域住民、仕事を失う労働者、治安悪化の中で暮らさなければならない市民である。
警察組織に問題があるなら、その問題を具体的に検証し、必要な改革を行わなければならない。
しかし、警察予算を一律に削減し、警察そのものを弱体化させれば、最も大きな被害を受けるのは、治安の悪い地域で生活する一般市民である。
トランプ大統領が訴えた「法と秩序」とは、単なる選挙用の標語ではない。
それは、国民の生命、財産、仕事、商店、地域社会を守るという、国家と政治の最も基本的な責務を意味していた。
一方、暴動と混乱が続くことによって政権への不満が高まり、選挙で有利になると考える政治勢力が存在するならば、それは米国社会に巣くう真の「怪物」と呼ぶほかないのである。
この稿続く。

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