リニア中央新幹線の開業延期が関西経済に与える重大な打撃――静岡工区問題と大阪の将来
リニア中央新幹線の開業延期が大阪・関西経済、新大阪駅周辺の都市開発、生産年齢人口の減少に与える影響を論じた2020年7月17日の記録。
静岡工区をめぐる川勝県政の対応と、2026年7月の自然環境保全協定締結までの経緯を踏まえて再掲載する。
2020-07-17
本稿を発信した2020年7月、JR東海は、令和9年、すなわち2027年としていたリニア中央新幹線品川―名古屋間の開業時期を再設定せざるを得ない状況にあった。
その最大の焦点となっていたのが、南アルプストンネル静岡工区である。
川勝平太前静岡県知事は2024年5月9日をもって退任した。
その後、鈴木康友知事の下で、大井川の水資源と南アルプスの自然環境をめぐる対話が進められた。
2026年7月18日、静岡県とJR東海は、リニア中央新幹線工事に関する自然環境保全協定を締結した。
水利用に影響が生じた場合の補償、着工後のモニタリング体制、環境影響評価の継続などについても確認された。
同日には、中央新幹線の建設と地域振興に関する基本合意書も締結された。
静岡工区の着工に向けた重大な前進ではある。
しかし、失われた時間が戻るわけではない。
JR東海は現在、品川―名古屋間の工事完了予定を「2027年以降」としており、正式な開業時期は依然として明示していない。
2025年10月に公表された資料では、財務試算のため便宜上「2035年開業」が仮置きされたが、JR東海自身が、それは開業時期の見通しを示したものではないと明記している。
2020年当時に指摘されていた大阪・関西への影響は、過去の議論ではない。
静岡工区が着工へ向かう現在だからこそ、誰の政治判断によって何年が失われ、その結果をどの地域が負担するのかを検証する必要がある。
以下は、2020年7月17日に発信した原文である。
原典性を守るため、当時の筆者による強い批判的表現を含めて収録する。
【原文】
「開業時期のずれ込みは、リニアで結ばれる東京、名古屋、大阪の三大都市圏において、特に大阪への影響が大きい」と警鐘を鳴らす。
以下は、「関西財界目算狂う、リニア延期企業に打撃」と題して、昨日の産経新聞に掲載された記事からである。
*私は、少なくとも関西は静岡県産品の一切の購入を停止し、日本国民は静岡県を観光で訪問することを一切停止しなければならないと確信する。
川勝がやっていることは、それほどに下種なことだからだ。
静岡県に何のメリットもないからといって、日本が長年かかって進めてきた国策に反対し、JRに嫌がらせをして、ついに国家の事業計画を遅らせた。
その損失は何兆円に上るのだから。
川勝を選んだ静岡県民にも、その同等の損害を与えて、事の次第を理解させなければならない。
どうやら静岡県民というのは、小学生レベルの頭脳しか持ち合わせていないようだから。
静岡県民は数兆円の損害が出るまで――10年どころではない歳月になるだろう――自分たちの醜悪さの報いを、地獄で受けるのではなく、現世で受けた方がよいだろう。
下種な考えを隠すために環境などを持ち出す態様は、底知れぬ悪と、まことしやかな嘘の国である中国、朝鮮半島と何ら変わらない態様である。*
JR東海の金子慎社長が、令和9年としていたリニア中央新幹線の品川―名古屋間の開業時期の再設定を表明したことで、同区間開業後の着工が見込まれる名古屋―大阪間の開業も遅れることが確実となった。
開業時期が大幅にずれる事態になれば、東京、名古屋との交流強化を通じて経済の浮揚を狙う関西経済界の思惑に狂いが生じ、地盤沈下が進むとの懸念が高まっている。
黒川信雄=1面参照
リニアの所要時間は、品川―名古屋が最短40分、大阪までが最短67分。
大阪までの全線開業は当初、品川―名古屋間の開業から18年後の令和27年が予定されていた。
しかし、関西財界を中心に国への働きかけを強め、財政投融資の活用が決まったことで、最大8年の前倒しが見込まれていた。
今回のリニア開業延期は、関西経済界のこれまでの努力に冷や水を浴びせることになる。
リニア開発に詳しい三菱UFJリサーチ&コンサルティングの宮下光宏主任研究員は、「開業時期のずれ込みは、リニアで結ばれる東京、名古屋、大阪の三大都市圏において、特に大阪への影響が大きい」と警鐘を鳴らす。
宮下氏によれば、三大都市圏では、大阪圏――大阪、京都、奈良、兵庫の2府2県――の人口減少ペースが最も速く、リニアの主要乗客と想定される生産年齢人口――15歳から64歳――も、現在の1100万人から令和27年には780万人まで減少する。
このため、「開業時期が遅れれば遅れるほど、大阪ではリニアの経済効果が薄れることになる」という。
リニア開業の遅れは、都市開発にもマイナスの影響を与える。
宮下氏は、リニアの停車駅と想定されるJR新大阪駅周辺や、JR大阪駅北側の開発などにおいて、「ビジネス客の流入低迷につながり、開発に携わる企業にとっては打撃だ」と指摘する。
関西経済連合会や大阪府市などで構成する「リニア中央新幹線早期全線開業実現協議会」は、令和7年の大阪・関西万博や、大阪へのカジノを含む統合型リゾート施設――IR――の誘致から時期を置かずにリニア開業を迎えることで、リニアの効果を「最大限引き出す」ことを狙っていた。
開業の遅れは、この思惑にも疑問を突きつけることになる。