伊四百型潜水艦――地球一周半の航続力を誇った「潜水空母」と戦後潜水艦への影響

特殊攻撃機「晴嵐」3機を搭載し、理論上は地球を一周半できる航続距離を備えていた大日本帝国海軍の伊四百型潜水艦。
第二次世界大戦中に就航した潜水艦として最大級の規模を持ち、戦後の弾道ミサイル搭載潜水艦にも影響を与えたとされる、世界でも類例のない「潜水空母」の構想、性能、発見の経緯を記録する。

2020-08-05
本稿について
伊四百型潜水艦は、大東亜戦争中に大日本帝国海軍が建造した、特殊攻撃機「晴嵐」3機を搭載できる「潜水空母」である。
その航続距離は、理論上、地球を一周半することが可能とされ、日本本土から地球上のほぼあらゆる地点へ進出し、攻撃後に日本へ帰投できる能力を想定していた。
同型艦は3隻が就航したものの、本格的な戦果を挙げる前に終戦を迎えた。
連合国側は、日本の降伏までその存在を知らず、終戦後に接収した米軍士官は、その巨大さと航空機運用能力に驚愕したと伝えられている。
その構想は、潜水艦を単なる対艦兵器としてではなく、航空機や戦略兵器を搭載する長距離攻撃拠点として運用するものであり、戦後の巡航ミサイル搭載潜水艦や弾道ミサイル潜水艦にもつながる先駆的なものだったと評価されている。
出典
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「伊四百型潜水艦」
引用
「理論的には、地球を1周半航行可能という長大な航続距離を誇り、日本の内地から地球上のどこへでも任意に攻撃を行い、そのまま日本へ帰投可能であった」
伊四百型潜水艦
伊四百型潜水艦(いよんひゃくがたせんすいかん)は、大東亜戦争中の大日本帝国海軍の潜水艦の艦級である。
特殊攻撃機「晴嵐」3機を搭載する「潜水空母」である。
別名、潜特型(せんとくがた)とも呼ばれる。
なお、本型の計画縮小の補填として、巡潜甲型を改造した伊十三型潜水艦があり、外形が似ている。
3機の特殊攻撃機「晴嵐」を搭載可能な潜水空母である。
第二次世界大戦中に就航した潜水艦の中では最大で、その全長はアメリカ海軍のガトー級潜水艦を27メートル上回る。
通常動力型潜水艦としては、2012年に竣工した中国人民解放軍海軍の032型潜水艦、水上排水量3,797トン、水中排水量6,628トンに抜かれるまで、世界最大であった。
理論的には、地球を一周半航行可能という長大な航続距離を誇り、日本の内地から地球上のどこへでも任意に攻撃を行い、そのまま日本へ帰投可能であった。
排水量3,350トンという、軽巡洋艦「夕張」と比較しても大きな船体を持つが、水中性能は良好であった。
急速潜航に要する時間は1分である。
同型艦3隻が就航したが、いずれも大きな戦果を挙げる前に終戦を迎え、連合国は日本が降伏するまで、その存在を知らなかった。
終戦直後にアメリカ軍が接収した際、その大きさにアメリカ軍士官が驚愕したという逸話が残っている。
伊四百及び伊四百一は、アメリカ軍による調査の後、自軍で使用することも検討されていた。
しかし、ソビエト政府代表から見聞の要請があった直後、ソビエトへの情報漏洩を恐れたアメリカ軍によって、ハワイ沖で魚雷による海没処分となった。
処分後、その詳しい位置は記録されていなかった。
その後、アメリカの調査関係者による長年の海底調査により、2005年3月に伊四百一が、2013年8月に伊四百が発見された。
さらに、2015年8月には伊四百二が海底から発見された。
専門家によれば、伊四百型潜水艦は、それまで対艦兵器としか見なされていなかった潜水艦の用途を一変させ、第二次世界大戦後の潜水艦の設計と運用思想に大きな影響を与えたという。
その結果、核の時代における弾道ミサイル発射能力を備えた潜水艦へと発展していったとされる。
実際、戦後、アメリカ軍が浮上した潜水艦からパルスジェット式ミサイルの発射実験を行った際に使用した潜水艦は、伊四百型と酷似した形状をしていた。
航空機搭載可能潜水艦
第一次世界大戦後、日本海軍は、ドイツが製作した小型水上偵察機をもとに、横廠式一号水上偵察機、すなわち潜水艦搭載偵察機を開発した。
昭和初期、日本海軍は、潜水艦を敵艦隊の監視、追躡、触接に用いるという運用方法を、おおむね確立していた。
潜水艦への小型水上偵察機の搭載は、潜水艦の偵察能力と監視能力の強化につながっていた。
これらの航空機搭載可能潜水艦、伊号第五潜水艦や伊号第十二潜水艦などに搭載された機体は、九六式小型偵察機や零式小型水上偵察機といった、通常の潜水艦作戦における索敵用のものであった。
一方、特型潜水艦に求められたのは、当初、艦上爆撃機「彗星」の搭載であった。
しかし、それは現実的ではないと判断されたため、特殊攻撃機「晴嵐」が新たに開発されることになった。
設計当初、「晴嵐」はフロートを装着せず、非水上機として運用される予定であった。
この場合、発進した機体の回収は不可能となり、事実上の使い捨てとなる。
純粋な爆撃・攻撃用途の航空機を戦略的に運用することを計画上の主目的とした点で、伊四百型は、専用の小型水上偵察機を偵察目的で搭載していた従来の潜水艦とは、完全に一線を画していた。
この稿、続く。


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