朝日新聞は自らの報道と責任に向き合ったのか――「宮澤首相は八回謝罪」の出典から慰安婦報道・靖国問題・日中関係まで

朝日新聞が国家基本問題研究所に「宮澤が八回謝ったという確証はあるのか」と尋ねたのに対し、その根拠として示されたのは朝日新聞自身の「時々刻々」の記事だった。本稿は、このやり取りを起点に、慰安婦報道の検証、国際社会への情報発信、朝日記者の「権力監視」意識、靖国問題、日韓・日中関係への影響をめぐる櫻井よしこ、門田隆将、阿比留瑠偉の議論を記録する。

2020年8月18日
本稿は、朝日新聞の慰安婦報道とその検証をめぐり、櫻井よしこ、門田隆将、阿比留瑠偉が語った対談の一節である。
議論は、国家基本問題研究所が全国紙に掲載した意見広告に対して朝日新聞側から寄せられた質問を起点として、慰安婦報道に対する朝日新聞の姿勢、国際社会への情報発信、記者の「権力監視」意識、靖国問題、そして日中関係へと広がっていく。
その冒頭で象徴的に語られているのが、「宮澤が八回謝ったという確証はあるのか」という朝日新聞側の問いに対し、その根拠として示されたのが朝日新聞自身の「時々刻々」の記事だった、というやり取りである。

本稿を象徴する引用

櫻井
「第一点については、朝日新聞の『時々刻々』というコラムで八回と朝日が報道しているんですね。ですから『おたくの記事ですよ』と回答しました。」

「権力の監視役」への自己陶酔目立つ朝日記者

櫻井 実は、朝日の慰安婦の二日に渡る記事が出る前に、国家基本問題研究所ではすべての全国紙に慰安婦、河野談話作成のプロセスの検証が不十分だという意見広告を出しました。いくつかのポイントを書いたのですが、その中で強制連行という間違った情報が独り歩きして、宮澤さんは九二年の一月の訪韓で八回謝った。朝日の誤報でこれが始まったと書いた。すると朝日新聞から広告代理店を通じて二つ質問が来ました。「宮澤が八回謝ったという確証はあるのか。資料はあるのか」というのが一つ。もう一つは「朝日の誤報と言うけれど、誤報の資料を示してほしい」という内容でした。
第一点については、朝日新聞の「時々刻々」というコラムで八回と朝日が報道しているんですね。ですから「おたくの記事ですよ」と回答しました。第二点は、これはもう山ほど証拠があるわけですから、その証拠を出しました。すると、それ以降、梨のつぶてになってしまいました。
いろんなところで朝日は批判され、それが今回の慰安婦報道の検証につながったと思うのですが─広告をめぐるやりとりもそうでしたが─朝日は、まったく説明しようとしないのです。高飛車で、被害者の立場に自分たちを置く。この新聞に反省を求めることは、とても難しいのではないか。反省させる唯一の道は、読者が朝日を見限ってしまうことではないか。みんなが朝日と訣別するのがよいのではないかと思います。
門田 朝日の記者と話すと、俺たちが権力を監視しなければいけないという、そういう意味の話をよくしますね。権力を監視する。これは確かにジャーナリズムの役割の一つでもあるので、それはそれで構わないのですが、朝日の場合、そういう自分に自己陶酔しているというか、酔っているような記者が非常に多い気がします。例えば彼らは民主党政権のときは権力を監視するどころか、もうべったりでしたし、結果的には日本と日本人を貶めることばかりやっていながら、自分の頭の中では、俺たちは権力と対峙している、監視していると頭の中を都合よく塗り替えている。そんな興味深い記者たちが多いですね。

自分達の責任と向き合っていない朝日

櫻井 もうひとつ今回の特集記事で見逃せないことがあります。例えば朝日が報道して広げていった吉田清治の証言は国連のクマラスワミ報告や米国下院の対日非難決議の基本資料として引用されているのです。にもかかわらず、朝日には国際社会に日本の汚辱を広げたという自覚がまったくないのではないか。自分たちに重大な責任があるというような姿勢は見えませんね。
今米国では国務省のサキ報道官が記者会見の席上、日本の慰安婦問題について言及し、日本を非難する出来事も起きています。議会の調査局は議会のために資料を用意し、その資料に基づいて下院が決議をするわけです。この議会調査局がまとめた基礎資料には、二〇万人強制連行、性奴隷、大部分を殺した、といったどこの国のいつの時代の話かと思うようなことが書かれています。議会調査局が偏見を持って集めたのではありません。彼らはありとあらゆる資料を集めて、それをまとめて議員に渡すわけです。それらの大本に朝日新聞の偏った、間違った報道が含まれている。ところが当の朝日は国際社会の対日批判と自分たちの報道は無関係であるかのように振る舞っている。阿比留さんがおっしゃったように、英文で全然発信していないのも、自分達の責任と向き合っていないからではないでしょうか。この問題は女性の権利侵害の問題だとすり替えてしまっています。
私は朝日の今回の検証を、まず全文、間違いのないように英語や中国語、ハングルに訳し、海外に発信しないとおかしい。朝日は自ら国際社会に自社記事の間違いを発表すべきですが、それだけでは不十分です。ここは政府も情報発信に大いに力を入れなければならない局面です。
阿比留 朝日の体質についてもう一言だけ。卑怯だという指摘に私も同感ですが、同時に現場クラスの記者を見ていると、基本的に彼らは慰安婦問題について不勉強で何もわかっていないといわざるを得ません。象徴的な出来事は第一次安倍政権のとき、慰安婦問題が大きな政治問題となって当時の安倍首相が「広義の強制性はともかく、狭義の強制性はなかった」という趣旨の発言をしたことがありました。これはもともと、朝日新聞が展開してきた論議や中央大学の吉見義明教授の主張などをわざと逆手にとって発言したものでした。ところが塩崎恭久官房長官の記者会見の場で朝日新聞の記者が質問に立ち怒ったような大声で「総理は狭義だの広義だの言っていますけど、意味がわかりません」と質問しはじめたのです。でも狭義だの広義だの言い出したのはあんたたちだろうと。
櫻井 そもそも彼らがつくり出した区分けですね。
阿比留 そう。ですから客観的に勉強した結果、自分が正しいと思うのではなく、アプリオリに自分たちは正義で正しいという前提から、ものを申すという感じです。
門田 日韓関係が破壊され、将来的に大きな禍根を残したことは明らかですが、私は日中関係でも朝日の責任は大きいと思う。私は昭和六十年八月以前の日中関係と、それ以降の日中関係は、まったく異なったものになったと思っています。八五年の八月に何があったのか。戦後政治の総決算を掲げた当時の中曽根首相の靖国公式参拝を阻止すべく、朝日は大キャンペーンを張りました。そして、ついに人民日報が「靖国問題について日本の動きを注視している」という記事を出すのです。さらに八月十四日に正式にスポークスマンが「中曽根首相の靖国参拝はアジアの隣人の感情を傷つける」といいだした。
戦後ずっと続いてきた靖国神社への参拝が、あそこから問題にされ始めたのです。つまり、靖国問題が〝外交カード〟になった瞬間です。朝日新聞の「ご注進報道」によってそれ以降も、どんどん、この問題が大きくなってくるわけです。朝日の報道で外交関係が悪化したり、禍根がもたらされたのは日韓関係だけでなく、日中関係にもいえると思うのです。
阿比留 南京事件にしてもこれを大きな騒ぎにしたのも朝日でした。本多勝一さんの『中国の旅』をはじめ、プロパガンダをずっと繰り返してきましたからね。おもしろいことに、朝日は靖国については後に狂ったように批判していますが、確か昭和二十六年十月の朝日の記事には、GHQで日本に来て米国に帰る青年がずうっと靖国参拝を続けており「自分は米国に帰るけれども、日本の友人に参拝をお願いして、御霊へ祈りを」といった話を大きく記事に取り上げています。朝日は初めから反靖国だったわけじゃないのです。途中からやっぱり何らかの意図があったのでしょう。
門田 材料にできると思ったのではないでしょうか。
櫻井 いわゆるA級戦犯合祀を念頭にしたのですね。日本の外交で反日的なところは中国と朝鮮半島です。この中国と朝鮮半島に反日の種を蒔いたのは朝日です。朝日新聞が本当に諸悪の根源になっています。
門田 多くの中国人は決して反日ではなくて、やさしいのです。やさしくて人がよくて、私が経験している八〇年代の中国人は、非常に日本人のことが好きでやさしい存在だった。けれども、それが今、どんどん変わってきている。朝日新聞はそういう人たちの味方ではなく、必ず共産党独裁政権の味方なのです。
櫻井 門田さんの御指摘はすごく大切だと私も思います。中国にはいろんな人たちがいます。日本をきちんと理解していて、人間的にも素晴らしい方がいるのです。実は国基研で日本研究賞を出しているのですが、初年度の今年、その特別賞に東工大の劉岸偉さんを選びました。この人は魯迅の実弟の周作人の研究をしている学者です。彼に記念講演をお願いしましたさい、彼は「日本研究をした中国人で日本を悪く言う人はいません」と語ったのです。これは日本を知っている人たちは、日本のよさをきちんと理解することができるということでしょう。ほんとに大事なことを言ってくださったと思います。本当に日本をきちんと見ている人たちは、日本を嫌いになるはずがないし、なっていないのです。
朝日新聞に反日的な意識を掻き立てられた中国人ではなく、中国の底辺に必ずいる誠実で、事実を事実として見ることができる人たち、今の共産党支配におかしいと思って異を唱えている民主化のリーダーの人たち、民主化に傾いている若い世代たちとの交流をしっかりとやっていかなければいけないと思いますね。
門田 真の日中友好というのは朝日新聞〝廃刊〟から始まるということですね。

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