李登輝が遺した国家安全保障と台湾民主化の教訓――米国民主党政権とチャイナマネーをめぐる重大な疑念

『月刊Hanada』掲載の堤堯・久保紘之両氏の対談を引用し、李登輝が重視した国家安全保障会議、台湾民主化への政治的手腕、中国の軍事的威嚇への対応、米国民主党政権とチャイナマネーをめぐる対談上の指摘を記録する。

2020年9月4日
以下は、月刊誌『Hanada』今月号の、堤堯×久保紘之の連載対談特集からである。
私は朝日新聞を購読していた6年前の8月までは御両名の名前は全く知らなかった。
世界の人たちも酷い話だと思うだろう。
堤堯氏については仙台のわが母校の先輩のような感じがしたので検索したら、その通りだった。
私はわが母校と仙台を永遠に愛している人間なのだが、彼は我が母校そのものの極めて優秀な人間である事は読者も御存知の通り。
先日、録画していたディスクを整理して発見したマーチン・スコセッシがローリング・ストーンズのライブを演出した映画『Shine a Light』はビル・クリントンの誕生日を祝うパーティーコンサートでもあった。
クリントンがウクライナの要人を伴って登場する場面を観た私は、クリントン夫妻が中国から得ているお金は馬鹿にならない額だろうと書いた。
私の推測が全く正しかった事も、この対談集は証明していた。
【一番大事なのはNSC】

7月30日に李登輝さんが亡くなった。
97歳。
2月に牛乳を誤嚥して肺炎を発症し、以来、入院生活が続いていた。
天寿を全うした大往生だけど、なんとも寂しいねえ。
07年だったかな、高山正之、宮崎正弘、中村彰彦、それに花田編集長の5人で、台湾の李登輝邸を訪ねたことがある。
初対面の挨拶が終わるやいなや、「日本のNSC(国家安全保障会議)はどうなっているんですか」と、いきなり問われてヘドモドした。
なぜなら、安倍首相(第一次政権)が「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」、通称「安保懇」を設置し、憲法の見直しに取り掛かったばかり。
おまけに当の安倍政権が相次ぐ閣僚の不祥事で、安保懇どころの状態ではなかったからだ。
「いいですか、国家にとって一番大事なものはNSCですよ。日本は3桁に及ぶ国民を拉致されている。国家の最大の役目は国民の生命と財産を守ることです。いったい日本の政治家はどう考えているんですか」
畳みかけるように言われて、返答に窮した。
ちなみに「安保懇」は安倍の病気退陣後、福田(康夫)内閣に引き継がれたけど、座長の柳井俊二から聞いた話では、福田はただの一度も出席せず、開店休業状態になった。
第二次安倍政権がNSCを創設するまで、日本にNSCは無きに等しい状態が続いた。
俺は李登輝に会ったら是非にも訊いてみたいことがあった。
「台湾も核武装を意図して極秘裡に開発に乗り出したことがありましたよね。インドから技術導入したとか。その後、どうなりました?」
ちょっと言葉に詰まった李登輝は言った。
「あれは私が総統になってすぐ、施設をコンクリートで塗り潰しました。台湾は小さい。核を持ってもどうにもなりません」
この返答を額面どおりに受け取るわけにはいかない。
おそらく中止をカードに使って、何か見返りを得たに違いないと思ったね。
ついで会話は、彼が実施した台湾初の民選による総統選挙に移った。
これに反対する中国は、40数発のミサイルを台湾に向けて発射して恫喝した。
「あのとき一番気を使ったのは人心の安定です。そのため、私は2000億元の基金を作って株価の変動を抑えると発表した。これで民心の動揺が鎮まりました」
中国の反応に備えて、事前に李登輝は二つの手を打っていた。
留学したコーネル大学の級友らを頼って、クリントン政権が2隻の空母を台湾海峡に派遣するように仕向けた。
コーネル大学は、台湾の対米工作の根拠地として知られている。
留学時代に築いた在米の人脈を活かしたわけだ。
もう一つは、2人の密使を北京政府へ向けて放っている。
1人は愛弟子の蔡英文(現総統)だけど、彼女に江沢民の腹心・曽慶紅と水面下の交渉を持たせている。
この二つの工作が効いて、中国のミサイルは台湾本土に命中しない。
威嚇射撃に終わっている。
戦後のアジアは二人の哲人政治家を生んだ。
一人は李登輝。
もう一人はマレーシアのマハティールだ。
「わが台湾が今日のように自由と民主化を謳歌できるのは李登輝元総統のお陰である」
追悼のコメントで、蔡英文総統はそう言ってたけど、まさにそのとおりで、一国二制度を強要する中国共産党政権に対して、李登輝は実に巧みに対応した。
もう一つ、彼が腐心したのは毛沢東との内戦に敗れて台湾に逃げ込んで来た蒋介石一派、いわゆる外省人への対応だ。
蒋介石は「二・二八事件」で三万人の台湾人(本省人)、主にインテリを虐殺した。
その蒋介石一派が作った国民党に、李登輝はあえて参加し、息子の蒋経国に認められて副総統になる。
ほどなく台湾初の民選による総統選を中国の反対を押し切って強行、以後の民主的な総統選を定着させた。
その間、少しずつ慎重に「台湾を台湾人のための台湾にした」(蔡英文)。
いきなりやれば潰されるところを、実に忍耐強く、少しずつ巧妙に事を進めた。
その器量と政治力たるや凄いというしかないね。
久保
「虎口を脱する」という言葉があるけど、台湾はいわば中国という虎の口の中にいるようなものです。
しかし、決して呑み込まれはしない。
それは李登輝の強かな外交手腕に負うところが大きいでしょうね。
【バイデンに認知症の疑い】

トランプとポンペオのコンビになってからアメリカの対中政策はガラリと変わり、台湾についての扱いも全く変わった。
トランプ政権の強硬な対中政策は、必ずしも大統領選のためのカードだけじゃない。
かなり本気と見るべきだ。
仮にトランプが11月の大統領選で負けてバイデンになったら、またぞろアメリカは親中国になっちゃうだろうね。
久保
台湾は、バイデンが副大統領にオバマ政権の大統領補佐官で親中派だったスーザン・ライスを選んだら危ないと思っていたけど、カマラ・ハリスが副大統領候補に選ばれ、ホッとしているんじゃないかな。

どうかなあ。
バイデンは息子を連れて訪中し、帰国後ほどなく、中国の投資会社から息子の投資ファンドに15億ドルが振り込まれた。
チャイナマネーで組み込まれている。
クリントン夫妻の財団には数百万ドルのチャイナマネーが振り込まれていたし、オバマの弟は中国でチェーン店を経営している。
歴代、民主党は親中国なんだよ。
いま民主党は反中で共和党に歩調を合わせているけど、トランプに反中カードをフルに使われるのを避けるために「俺たちも反中だ」と装っているだけに見える。
この稿続く。

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