怪物国家・中国を育てた日米――対中ODAの検証と「利益外交」から「価値外交」への転換
2022-11-30
以下は、2022年11月25日発売の月刊『WiLL』2023年1月号に、呪い殺したい 習近平独裁!と題して掲載された、阿古智子 東京大学教授、 譚璐美 作家、 楊 逸 作家、 劉燕子 中国文学者の4人による対談特集からである。
何度も言及するようにWiLLとHanadaは、本物の論文が満載されていながら980円!なのである。
今、世界最高の月刊誌であると言っても全く過言ではない。
本稿は日本国民のみならず世界中の人達が必読。
老若男女、わけても若い人たち全員が必読である。
今、中国で起きている現象を既にして予感させていた箇所もある。
見出し以外の文中強調は私。
怪物国家・中国を育てた日米
劉
天安門事件のとき、なぜ日本は中国の本質を見抜けなかったのか。
阿古さんがおっしゃるように、今日の怪物国家・中国を育てたのは日本と米国にほかなりません。
譚
問題なのは、日本は中国に莫大な政府開発援助(ODA)を拠出したにもかかわらず、一般の中国人はODAによる支援を受けた事実を知らないことです。
日米が資金を援助し、官民挙げて合弁企業をつくったおかげで世界中の投資が中国に集まり、中国は経済成長したわけですが、中国はそれを忘れている。
中国人たちは中国の経済発展は自分たちの力だと思っている。
だから日本はもっと日本の業績を宣伝するべきですよ。
阿古
実際に私は中国の日本大使館でODAを担当していましたが、日本は箱物ばかりをやっていました。
戦争の贖罪史観の影響で内政干渉を恐れるがあまり、中国政府にカネだけ渡して終わりです。
本来であれば、学校をつくるのであれば、学校で何を教えるのか、先生となる人材をどう育成していくか、そういった中身をセットでつくる必要がありますが、それをほとんどやらなかった。
だから一般の中国人は、日本がODAを出した事実を知らないんです。
譯
日本はずっと同じ過ちを繰り返してきました。
1920年代、世界中が清朝時代に起きた義和団事件の賠償金を中国に返却しましたが、米国は中国に学校をつくり、米国が選んだ学生を入学させ、米国に留学させて博士号を取得させた。
帰国した博士は大学教授になり、「米国には恩義を受けた。米国はすばらしい国だ」と次世代を教育した。
だから次世代も米国はすばらしいと思っています。
しかし日本は中国政府に賠償金の一部を返却し、学生選抜も中国政府に任せて日本へ留学させた。
だから留学生たちは日本の資金だとは知らず、ちっとも日本に恩義を感じない。
また、日本は返却資金の大半で北京と上海に研究機関をつくり、日本人研究者を日本から派遣して、中国人とは関係ないところで中国研究に没頭しました。
そのおかげで胡散臭い研究機関だと思われて排斥された。
同じカネを使うのなら、米国のように活かして効果的に使ったほうがいいに決まっています。
設備や機関に投資するのではなく、人材に投資すべきなのです。
阿古
やはり欧米はキリスト教のベースもあるし、人権感覚がしっかりしています。
しかし、日本は政経分離を意識するがあまり経済だけ良ければいいと考え、中身の人間らしさを育てようとしなかった。
楊
実際に日本のODAの大半は官僚のポケットに入り、日本でビジネスを成功させた中国人の大半はその官僚の親戚・支援関係者です。
阿古
私は実際に担当していたので、その悲しい現実をイヤというほど知っています。
中国人が感謝するにしても、ODAの橋渡しをした日本の政治家が関わっている中国の政治家や役人に対してであり、日本には感謝してくれません。
日本は中国に物申すとき!
劉
米国や台湾の「民主主義基金会」は、中国の人権派弁護士などを支援する活動をしていますが、これまで私は「なぜアジアで最大の民主主義国である日本には民主主義基金会がないのか」と耳にタコができるほど聞かれました。日本もつくるべきですよ。
劉暁波は「利益外交」から「価値外交」への転換を提唱していました。
経済大国である日本はアジア経済の発展の重要な責任を負い、政治においてはアジアで最も成熟した民主主義の大国であるのだから、道義的にアジアの社会的転換、政治の民主化の進展において最大の担い手になるべきである、ということです。
中国共産党が政権を担って70年以上経ちますが、いつまでも日本は謝ったまま。
それでは何も始まりません。
阿古
日本は中国政府に弾圧される人たちを横目に、ただかわいそうと思っているだけでいいはずがありません。
民主主義のために、具体的に考え、行動することが求められます。
楊
世界的に中国への圧力が強まるなか、日本はどうするのでしょう。
立ち上がるならもう、いましかありません。
譚
1974年の国連第6回特別総会で、鄧小平は次のように演説しています。
「もしも中国がいつの日か変節し、超大国となり、しかも世界の覇権を握り、至るところで他国をいじめ、侵略し、搾取するようになったなら、そのときには、世界の人民は、中国のことを『社会帝国主義だ』と非難し、中国の悪事をあばき、中国に反対し、そして中国人民と協力して中国を打倒すべきです」
いまこそ日本はリーダーシップを発揮して、世界の国々や悩める中国人と協調し、明るい日中関係のために毅然として中国に物申すときです。