—報道ステーションのHIMARI報道が隠したもの——グァルネリ・デル・ジェズの貸与元をなぜ報じないのか—

◎報道の名を借りた演出。
報道ステーションの今回のHIMARI報道には、看過できないどころか、報道機関としての姿勢そのものを問われる重大な問題がある。
同番組は、HIMARIが「いろいろな楽器を試して、この楽器にたどり着いた」と語り、新たな相棒が世界に約150本しかないグァルネリ・デル・ジェズであることまでは大きく報じた。
だが、そこで当然示されるべき、その楽器が誰の所有で、どのような形で貸与されているのかという最も本質的な情報は、意図的と疑われても仕方がないほど見事に伏せられている。
これは説明不足などという生易しいものではない。
報道の名を借りた演出である。
◎貸与元を明らかにするのは通例である。
前の楽器については、日本ヴァイオリンが、前澤友作氏所有の1717年製ストラディヴァリウス「Hamma」をHIMARIに貸与したと明確に公表していた。
貸与元を明らかにするのは通例である。
それにもかかわらず、今回は番組自体が「伝説の名器」として強調するグァルネリ・デル・ジェズについて、貸与元を語らない。
これを不自然と言わずして何と言うのか。
◎視聴者に最も重要な背景を知らせない不自然。
そもそも、幼い、あるいは若い演奏家が、この種の超高額名器を用いる場合、その背景には通常、財団、楽器商、企業オーナー、あるいは個人の大資産家による購入と貸与がある。
それはクラシック界では常識に属する話である。
ならば、なおさら、今回の報道でそこを曖昧にする理由は何なのか。
視聴者に最も重要な背景を知らせず、美しい物語だけを差し出すのであれば、それは報道ではなく誘導である。
◎HIMARIだけを特別扱いする偏向。
しかも問題は、それだけではない。
報道ステーションは、HIMARIをほとんど特別扱いと言ってよい形で取り上げ続けている。
しかし、日本にはHIMARI以外にも、村田夏帆をはじめ、世界的水準で語るべき超弩級の才能が存在する。
にもかかわらず、一人だけを突出させ、その背後の事情のうち不都合になりかねない部分だけを伏せる。
これが偏向でなくて何なのか。
公共の電波を使う放送局として、極めて重大な問題である。
◎今回の報道の欺瞞。
問題は、HIMARIを取り上げたことではない。
これほど特別な名器を使っている以上、その楽器が誰によって、どこから、どのような形で貸与されているのかを、なぜ正面から説明しないのか。
そこにこそ、今回の報道の欺瞞がある。
私は、ここにテレビ朝日の報道姿勢の本質を見る。

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