香港住民が立ち上がったのは自治がないからである—習近平失脚をめぐる死闘と香港デモの深層

2019年7月5日発信。
前章に続き、香港デモの背後にある中国共産党内部の権力闘争、香港統治をめぐる江沢民派と習近平派の攻防、そして「一国二制度」の形骸化を論じた一篇。
キャリー・ラム行政長官の実態、中国外交部の弁明の欺瞞、香港・マカオ工作を担ってきた中国共産党幹部の系譜、さらに習近平政権をめぐる粛清と内戦の構図を通して、香港住民が命懸けで立ち上がった理由を抉り出している。

2019-07-05
中国外交部の報道官は、北京の管理・統治を否定し、「香港政府自身の決定だ」と弁明するが、香港にそのような「自治がない」から香港住民が立ち上がっているのだ

以下は前章の続きである。
習近平を引きずり下ろしたい勢力
「行政長官は、中共の操り人形であり彼女に選択肢はない。さもなければ彼女の家族も危険にさらされる」「悪法の実施を表立ってやる切り込み隊長として、彼女は使われているだけ」 
これが反中共の民主活動家らの分析だが、私も同様に考えている。 
香港の有識者らは少なからず、「中国共産党がこの二十余年、香港行政にたえず介入し、今や全面的に管理統治権を握っている」「香港人が求めてきたのは、自由と民主の堅持と共に、『港人治港(香港人が香港を統治する)』だが形だけになってしまった」と語っている。  
一方、中国外交部の報道官は、北京の管理・統治を否定し、「香港政府自身の決定だ」と弁明するが、香港にそのような「自治がない」から香港住民が立ち上がっているのだ。 
お飾りのキャリー・ラム行政長官は、二〇一七年三月に行政長官に任命(七月就任)された。
結論から言えば彼女は第一次習政権で序列三位、香港を主管する中国政府の最高機関「中央香港マカオエ作協調小組」の当時トップだった張徳汪が推した人物である。
中国政府が香港行政長官に求める基準として、「愛国愛港、中央の信任、統治能力、香港人の支持」の四つの基本条件を述べた上で、「行政長官は中央と香港の橋渡し役を担うため、選挙に口出ししないわけにいかない」と強調した彼は、香港の民主派から、「行政長官選挙制度で強硬手段を採った」と非難をされた。 
江沢民派の張徳江は二〇〇四年に現職の広東省書記として香港を初めて訪れ、汎珠江デルタ=香港マカオの中国化を担った幹部である。 
ただ、彼の上にさらに黒幕がいる。
香港マカオと海外工作は、長年、江沢民派の超大物、二一号人物”の曽慶紅元国家副主席(元序列五位)が担ってきた。
同地の工作は習近平にバトンタッチされ、その後、張徳汪が引き継ぎ、そして現在の第二次習近平政権では、江沢民派で筆頭副首相の韓正(序列七位)がその地位にある。 
第十六回党大会(二〇〇二年十一月)で曽慶紅が得たポジション(政治局常務委員・中央書記処常務書記・党中央党校校長)を、第十七回党大会(二〇〇七年十月)以降に継いだのは習近平である。 
すなわち、習近平が昇格していく過程で、江沢民と曽慶紅の力によるところが大きかった。
黒幕二人は胡錦濤政権の時と同様、傀儡政権を目論んでいた。
ところが総書記と国家主席の座を射止めた習近平は、突如、牙を剥いた。
王岐山(当時・序列六位)と共に、「トラもハエも」の掛け声で、江沢民派の利権や資産を奪取し、曽慶紅の部下である、国家安全部副部長をはじめ汚職等の罪状で次々と捕まえ、牢獄や鬼籍に追いやってきた。 
香港・マカオの利権-詳細は後述1の奪取に向けた、中国共産党幹部の内戦は、習主席を袋小路に追いやる悪法、「逃亡犯条例」改正と香港デモとなって顕在化していると考えられる。
悪夢の「易姓革命」 
習主席とその一派にとって、香港が危険な地であることがわかる内容を、私はかつて本誌に記している。 
二〇一七年六月二十九日から七月一日まで、習主席と夫人が香港を訪問した。
国家主席になってからは初めて、九年ぶりだったが、香港の保安当局や警察当局は、習主席の訪問中の香港安全保障レベルを最高級の反テロ厳戒態勢に引き上げ、機動部隊や特別警務部隊など八千人から一万人規模の精鋭部隊が投入されたことが報じられた。 
中国本土からも、人民解放軍や武装警察などが事前に大量に投じられ、「暗殺に怯える」習主席の周囲によそ者が近づかない体制を整えたのだ。 
また、昨年十月に習主席がマカオ入りする直前には、マカオのトップ、中国政府の出先機関である「マカオ連絡弁公室」の鄭暁松主任の転落死も報じられていた。 
習一派と敵対関係にある江沢民派に属する鄭主任の死因について、国務院香港・マカオ事務弁公室は「鬱病を苦に自宅マンションから飛び降り死亡」と発表した。
「中国の裏」どころか世界の悪とも精通する幹部の拘束や転落死は、囗封じと受け止められてもおかしくない。 
問題は、江沢民派だけが悪なのではない。
新しい悪が、古い悪を駆逐するのがお隣りの権力者の習わしで、これを易姓革命と言う。 
「長老たちはもう、習近平をかばうことはしない。匙を投げている」 
鄧小平一族にも「近い」、ある筋から、先日このような話を聞いた。
既得権益者から、あらゆる利権を強奪すべく粛清や弱体化に心血を注いだ結果が、敵ばかりということか。 
さらには「米中貿易戦争で、中国の体制が変われば良い」といった意味深な発言をオフレコでしたとされる序列四位の汪洋、メディア(プロパガンダ)を牛耳る超マルキストの序列五位の王滬寧など、一体どこを向いているのかわからない。
大迷惑なのは、中国の支配者らは世界・メディアを巻き込み“死闘”を繰り広げ、そして漁夫の利を狙う欲望の権化たちであることだ。 
すなわち、国民目線など一切存在しない。
この稿続く。

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