「武漢―400」の開発地は、なぜ「ゴーリキー」に戻されたのか――光文社『闇の眼』日本語改訂版の不可解な変更
ディーン・R・クーンツの小説『闇の眼』を光文社が復刊した日本語改訂版では、生物兵器の名称が「武漢―400」でありながら、開発地は武漢ではなくゴーリキーと記されていた。
単なる誤植なのか、それとも意図的な改変なのか。
光文社の説明と「誠意」が問われる不可解な問題を取り上げる。
2020-07-01
まさか、中国からの圧力などで、設定をドサクサに紛れて変更したのだろうか?
光文社の「誠意」に注目しよう。
以下は前章の続きである。
意図的な改ざんか
この『闇の眼』の日本語版が、光文社文庫から5月15日に「再出版」された。
担当編集者による紹介文が、ネット版『女性自身』の5月18日付記事に掲載されている。
そこには、「原著は1981年に刊行され、1990年に光文社文庫で刊行された。その際、ウイルスはソ連からアメリカに来たことになっていた。だが、1996年の改訂版では、中国・武漢から持ち出されたウイルスに変更して描かれていた」「今回の復刊にあたっては、その改訂された原書をもとに、翻訳を全面的に修正した」と書かれている。
プレスリリースも確認したが、同様の文言だった。
ところが、「再出版された日本語改訂版」では、生物兵器の名前は「武漢―400」だが、開発地は武漢ではなく、ゴーリキーになっていた……。
同著の「六刷」を持っている知人が編集部に電話し、この件を問い合わせたところ、「誤植です。すみません」と答えたという。
六刷になっても誤植が残っており、そもそも1996年の改訂版以降、英語の原文には存在しない「ゴーリキー」を日本語改訂版で使っているのは、意図的な改ざんとしか考えられない。
まさか、中国からの圧力などで、設定をドサクサに紛れて変更したのだろうか?
光文社の「誠意」に注目しよう。
さて、ホラー小説とサスペンス小説で名高いディーン・R・クーンツは、ベストセラーを含む100作以上の小説を上梓し、数々のヒット作を生み出し、作品が映画化されるなどした大物作家である。
ただ、『闇の眼』の1981年の初版は、レイ・ニコルズ(Leigh Nichols)の名前で書かれている。
その他にも、デイヴィッド・アックストン(David Axton)、ディーナ・ドワイアー(Deanna Dwyer)、ブライアン・コフィー(Brian Coffey)など、複数のペンネームを持っているようだ。
なぜ、複数のペンネームを使い分ける必要があったのか。
同著と合わせて、シルビア・ブラウン(Sylvia Browne)女史が2008年に発表した『End of Days: Predictions and Prophecies About the End of the World(終わりの日――世界の終わりについての予測と予言)』も話題になっている。
自称霊能者で、日本でいうイタコのような存在であり、「未来が予測できる」と語っていた著者は、2013年に死去している。
彼女は同著で、「2020年頃に、重度の肺炎のような病気が世界中に広がり、肺や気管支を攻撃し、治療法がなく……」「突然消えるが、10年後に再び現れ、そして完全に消える」などと書き記している。