カヴァノー公聴会が暴いた政治的二重基準――フェミニズム、バイデン疑惑、世論調査、そしてトランプ再選
ブレット・カヴァノー最高裁判事候補への告発を全面的に取り上げた民主党とフェミニスト団体は、バイデン氏に対する告発にはなぜ異なる態度を取ったのか。
CNNの世論調査、黒人有権者の動向、タルサでのトランプ集会を通じて、2020年米大統領選挙をめぐる政治と報道の二重基準を論じた記録。
2020-07-09
カヴァノー公聴会が暴いた政治的二重基準――フェミニズム、バイデン疑惑、世論調査、そしてトランプ再選
以下は前章の続きである。
本稿は、「トランプの敵――そのおぞましい素顔」と題して月刊誌『WiLL』に掲載された、渡辺惣樹氏の論文からである。
渡辺惣樹氏は、世界有数の日米近現代史研究家である。
本論文は、日本国民のみならず、世界中の人々が必読である。
NHKなどの報道番組を視聴し、朝日新聞などを購読しているだけでは決して知ることのできない、米国政治と主要メディアの実態に関する重要な論点が記されているからである。
前章までに渡辺氏は、トランプ大統領が対峙した「怪物」として、ネオコン勢力、ディープステートと主要メディア、民主党の金権政治家を取り上げた。
本稿で第四の怪物として挙げられているのが、民主党の少数派利権政治を支えるフェミニスト団体である。
もちろん、女性の権利を守り、性暴力の被害を訴える女性の声に耳を傾けることは重要である。
しかし、告発される人物の所属政党や政治的立場によって、告発の取り扱いを変えることが許されるはずはない。
共和党側の人物に対する告発は、裏付けが不十分な段階から大々的に報じる。
一方、民主党の大統領候補に対する告発は、証言や周辺事情が存在してもほとんど取り上げない。
そのような二重基準が存在するならば、それは女性の権利を守る運動ではなく、特定政党の政治活動にほかならない。
本稿は、2018年のブレット・カヴァノー最高裁判事候補の承認審査と、2020年に表面化したジョー・バイデン氏に対する告発を対比し、民主党、フェミニスト団体、主要メディアの姿勢を問うものである。
なお、原文の「ハイテン事務所」は、文脈上の明らかな誤記であるため、「バイデン事務所」に訂正した。
再選の高い可能性は揺るがず
第四の怪物は、民主党の少数派利権政治の象徴であるフェミニスト団体だった。
2018年夏、トランプ大統領が指名した最高裁判所判事候補、ブレット・カヴァノー氏の上院承認審査が行われた。
民主党は、カヴァノー氏から高校時代の1980年代初めに暴行を受けたと訴える女性の告発を、承認審査の中心的な問題として取り上げた。
渡辺氏は、その目的について、人工妊娠中絶に保守的な立場を取るカヴァノー氏の指名を阻止し、フェミニスト団体の支持を確保することだったと論じている。
民主党は、事件の正確な日時や場所が特定されていなくても、女性の訴えを信用すべきだと主張した。
渡辺氏は、告発を裏付ける証人が現れなかったと指摘している。
その後、カヴァノー氏の最高裁判事への指名は上院で承認された。
トランプ大統領は、告発が激しく報道される中でも、一貫してカヴァノー氏を擁護した。
ところが2020年3月、今度は民主党の大統領候補となるジョー・バイデン氏から暴行を受けたと訴える女性が現れた。
渡辺氏によれば、その女性は、バイデン氏が上院議員だった時代に同氏の事務所で勤務しており、事件があったと主張する1993年当時の事情を知る人物も複数存在していた。
それにもかかわらず、カヴァノー氏に対する告発を重視したフェミニスト団体や主要メディアの多くは、バイデン氏に対する告発を同じ熱意では取り上げなかった。
渡辺氏は、これによってフェミニズム運動の政治的な二重基準が露呈したと論じている。
告発の真偽は、告発された人物が共和党か民主党かによって決められるものではない。
証言の具体性、周辺証拠、証人の有無、当時の記録などに基づき、同一の基準で慎重に検証されなければならない。
カヴァノー氏に対しては「女性を信じよ」と主張しながら、バイデン氏への告発については沈黙する。
そのような姿勢は、女性の尊厳を守るものではない。
女性の訴えを、政治的に利用価値があるかどうかによって選別する行為である。
民主党が大統領選挙に勝利するためには、少なくとも二つの条件のどちらかを満たす必要があると、渡辺氏は分析している。
一つは、共和党が分裂することである。
しかし、当時の共和党支持者は、圧倒的な割合でトランプ大統領を支持しており、共和党の大規模な分裂は期待できない状況だった。
もう一つは、黒人有権者を圧倒的に取り込むことである。
2016年の大統領選挙で、トランプ候補に投票した黒人有権者は少数だった。
しかし、2020年になると、複数の著名な黒人がトランプ支持を表明し、黒人層におけるトランプ氏の支持率が、前回選挙時よりも上昇していることを示す調査も現れていた。
雇用の拡大、失業率の低下、所得の上昇といった経済的成果が、黒人有権者の一部にも評価され始めていたのである。
そのような中、反トランプ報道を続けてきたCNNは、2020年6月8日、バイデン氏がトランプ氏を14ポイント上回っているとする世論調査を発表した。
トランプ大統領は、この数字は現実を反映していないとして強く抗議し、6月10日にはCNNに謝罪と訂正を求めた。
渡辺氏は、最後に倒される「怪物」は、民主党に有利な結果を繰り返し発表する世論調査会社ではないかと指摘している。
世論調査は、有権者の動向を測るための重要な手段である。
しかし、調査対象者の選定、共和党支持者と民主党支持者の構成、質問の方法、投票に行く可能性の高い有権者の抽出方法によって、結果は大きく変わる。
世論調査が現実を測定するためではなく、特定候補が圧倒的に優勢であるという印象を作り、有権者の投票意欲を左右するために利用されるならば、それは調査ではなく政治的な情報操作である。
新型コロナウイルスの感染拡大以降、自粛されていたトランプ大統領の全国遊説、いわゆるトランプ・ラリーも再開されることになった。
オクラホマ州タルサで予定された第一弾の集会には、トランプ陣営の発表によれば、100万件を超える入場申し込みがあった。
主要メディアは、新型コロナウイルスの感染拡大を理由として、トランプ・ラリーの再開を厳しく批判した。
しかし渡辺氏は、主要メディアの本音は、トランプ大統領を支持するサイレント・マジョリティが姿を現し、遊説をほとんど行っていなかったバイデン氏との差が明確になることを恐れていたのではないかと指摘する。
テレビ画面に映し出される巨大な観衆と、トランプ大統領への熱狂的な支持は、主要メディアが発表する世論調査の数字とは大きく異なる政治的現実を示す可能性があった。
新型コロナウイルスの感染拡大によって急落した米国株式市場も、当時は回復基調に転じていた。
経済活動が再開され、雇用と株価が回復すれば、トランプ大統領の最大の実績だった経済政策が、再び選挙の重要な争点となる。
渡辺氏は、民主党、主要メディア、フェミニスト団体、世論調査会社が一体となって反トランプの空気を作り出しても、トランプ大統領が再選される可能性は依然として高いと結論づけている。
選挙の結果を決めるのは、CNNの画面に映し出される数字ではない。
フェミニスト団体が選択的に取り上げる告発でもない。
米国各地で暮らし、働き、家族と地域社会を守ろうとする一般の有権者である。
主要メディアがその存在をほとんど伝えないサイレント・マジョリティが、投票所でどのような判断を下すのか。
それこそが、2020年大統領選挙の行方を決める最大の要素だったのである。