ソ連を正義とみなす戦勝国史観はもはや通用しなくなっているのだから。
2026-07-28
2022-03-29に発信した章である。
以下は今日の産経新聞、正論に、ロシアの侵略に対峙する歴史観を、と題して掲載された、江崎道朗の論文からである。
彼が戦後の世界で気鋭の評論家である事は既述の通り。
本論文は日本国民のみならず世界中の人達が必読。
読者は、本論文が、そっくりそのまま中国に当てはまる事に気づくだろう。
見出し以外の文中強調は私。
自由奪われ弾圧に苦しむ
ロシアによるウクライナ「侵略」に対して近隣諸国のポーランドやバルト三国などは激しく反発し、ウクライナに対する支援を続けている。
これら近隣諸国は第二次世界大戦とその後、ソ連によって占領・支配され、人権弾圧に苦しんできた記憶があり、「明日はわが身だ」と受け止めているからだ。
だがソ連の徹底した情報統制のせいで国際社会は戦後長らくソ連の「犯罪」をよく知らなかった。
知らないどころか国際社会、それもリベラル系のマスコミは、ナチス・ドイツを打倒したソ連の功績を強調したのだ。
ソ連による占領と人権弾圧の実態が広く知られるようになったのは、1991年にソ連邦が解体し、バルト三国やポーランドなどが自由を取り戻してからだ。
自由を奪われ、人権弾圧に苦しんできた近隣諸国がその実態について記録を集め、公開するようになったのだ。
こうした近隣諸国の奮闘もあって3年前の2019年9月19日、EU(欧州連合)の一組織である欧州議会は「欧州の未来に向けた重要な欧州の記憶」と題する決議でこう主張した。
(80年前の8月23日、共産主義のソ連とナチス・ドイツがモロトフ・リッペントロップ協定と呼ばれる不可侵条約を締結し、その秘密議定書で欧州とこれら2つの全体主義体制に挟まれた独立諸国の領土とを分割して、彼らの権益圏内に組み込み、第二次世界大戦勃発への道を開いた)
開戦80年にあたり、ようやく欧州議会も、ソ連は「侵略国家だ」と批判し、ソ連を正義の側と見なしたニュルンベルク裁判の誤りを認めたのだ。
決議はこう続ける。
《モロトフ・リッペントロップ協定と、それに続く1939年9月28日の独ソ境界・友好条約の直接の帰結として、ポーランド共和国はまずヒトラーに、また2週間後にはスターリンに侵略されて独立を奪われ、ポ―ランド国民にとって前例のない悲劇となった。共産主義のソ連は39年11月30日にフィンランドに対し侵略戦争を開始し、40年6月にはルーマニアの一部を占領・併合して一切返還せず独立共和国たるリトアニア、ラトビア、エストニアを併合した》
停戦協定守らなかったソ連
ソ連の「侵略」は停戦合意成立後も続いた。
ソ連は停戦協定を守らず、近隣諸国への「侵略」を続けたのだ。
《第二次世界大戦終結のあと(中略)幾つかの欧州諸国は独裁体制のもとに残り、一部はソ連の直接占領や影響下に置かれ、自田、独立、尊厳、人権及び社会経済的発展を半世紀の間、奪われ続けた》
戦時中に、ソ連に占領されたポーランドやバルト三国では、知識人の処刑、略奪・暴行、シベリアなどでの強制労働などが横行した。
しかも停戦協定後、自由と独立を取り戻すはずだったこれらの国々は、ソ連の衛星国にされてしまう。
91年にソ連邦は解体され、バルト三国は独立を取り戻し、ポーランドも自由を取り戻した。
だが、プーチン政権はソ連の「侵略」を正当化し、再びソ連邦の復活を目指す動きを始めた。
ポーランドをはじめとする近隣諸国が警戒するのも当然のことだ。
欧州議会もこう指摘する。
《2019年8月にロシア政府当局者は、このモロトフ・リッベントロップ協定とその結果に対する責任を否定し、真に第二次世界大戦を引き起こしたのはポーランド、バルト諸国および西側であるという見解を現在広めつつある。(中略)現在のロシア指導層が歴史的事実を歪(ゆが)めてソビエト全体主義体制が犯した犯罪を糊塗(こと)しようとする努力を深く憂慮し(中略)欧州委員会がこうした努力に対して断固として対抗することを求める》
「戦勝国史観」は通用しない
ところがプーチン大統領は翌20年6月18日、米政治外交誌「ナショナル・インタレスト」(電子版)に「第二次世界大戦75年の本当の教訓」と題する論考を寄せ、この欧州議会の決議を「たわごとだ」と批判したのだ。
このようにソ連の「侵略と人権弾圧」を批判する欧米諸国と、ナチスを打倒した側面をもってソ連の「侵略」を正当化する「戦勝国史観」にこだわるプーチン政権との対立が激化していたのだが、日本側の関心は薄かった。
しかし日本も自由と人権を尊重する立場から、この論争に加わるべきではないのか。
何しろ、日本もポツダム宣言受諾後にソ連によって多数の日本人がシベリアに抑留されて、命を落としたほか、北方領土を奪われ、いまなお、不法占拠をされているのだ。
今回のウクライナ「侵略」を受けて日本も「力による現状変更」に反対する立場から、対露制裁に蹈み切った。
併せて、ソ連の「侵略」を正当化するプーチン大統領の特異な歴史観に対しても欧米と・連携して対峙し、徹底批判すべきだ。
ソ連を正義とみなす戦勝国史観はもはや通用しなくなっているのだから。