HIMARIと鳥羽咲音――アレンスキー《ピアノ三重奏曲第1番》が結んだ不思議な縁
アレンスキーの《ピアノ三重奏曲第1番 ニ短調 Op.32》。
HIMARIにとって、この曲との出会いには忘れられない物語がある。
NHKで放送されたHIMARIの特集で、彼女自身が語っていたエピソードである。
ある時、HIMARIが曲を探していて、偶然、ものすごいヴァイオリニストが鮮烈に弾いている演奏に出会った。
「誰が弾いているのだろう」と調べてみると、そのヴァイオリニストは、なんと彼女がカーティス音楽院で師事しているアイダ・カヴァフィアンだった。
その演奏との出会いから、HIMARIはアレンスキーのピアノ三重奏曲を「いつか弾いてみたい」と憧れるようになったという。
そして、その憧れは現実になった。
HIMARIと鳥羽咲音による、このアレンスキー《ピアノ三重奏曲第1番》の演奏である。
私にとって、ここからさらに不思議な縁がつながった。
先日、沖澤のどか指揮・京都市交響楽団でドヴォルザーク《チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104》を聴くため、その予習として映像作品を制作した。
その時、私が選んだ演奏のチェリストが、鳥羽咲音だった。
そして昨日、新たに公開されたアレンスキーの映像を見て驚いた。
HIMARIの隣でチェロを弾いていたのが、その鳥羽咲音だったからである。
そこで私は彼女の経歴を改めて調べた。
すると、さらに驚くべき名前がつながった。
2018年、モスクワで行われた若い音楽家のためのコンクール《くるみ割り人形》。
私が確認した記録では、弦楽器部門で金賞・村田夏帆、銅賞・鳥羽咲音。
そして翌2019年には、HIMARIが金賞を獲得している。
村田夏帆。
鳥羽咲音。
HIMARI。
それぞれが幼い頃から際立った才能を示し、それぞれの道を歩んできた三人の名前が、ここで思いがけず一つの線で結ばれた。
そして今、HIMARIは、かつて師アイダ・カヴァフィアンの演奏を聴いて憧れたアレンスキーを、自らの音楽として奏でている。
その傍らには鳥羽咲音がいる。
偶然という言葉だけでは片づけられないような、音楽が音楽家を呼び、才能が才能と出会い、時間を超えて一つの演奏へと結実していく物語を感じる。
アレンスキーの哀愁と美しさ。
そして若い音楽家たちが、それぞれの人生を背負って出会った瞬間。
この演奏を聴きながら、私は改めて思った。
音楽の歴史とは、こうして人と人が出会い、憧れが次の世代へ受け継がれ、新しい名演が生まれていく歴史なのだ、と。