日本の総理大臣を「摩耗」させる国会制度――野田佳彦総理の問題提起と、諸外国を大きく上回る国会出席負担
野田佳彦総理が2012年3月の参議院予算委員会で指摘した、日本の総理大臣を国会対応によって「摩耗」させる制度上の問題を検証する。
日本の総理の国会出席日数は127日であり、フランス、イギリス、ドイツの首脳による議会発言日数を大きく上回る。
一日七時間に及ぶ予算委員会への拘束が、国際交渉と国益のために行動する時間を奪っている実態を示す。
2020年9月3日
以下は、前章で紹介した成田憲彦による「総理大臣の国会出席負担」と題する2015年3月の記事である。
2012年3月、野田佳彦総理は参議院予算委員会において、日本では総理大臣が国会対応によって著しく消耗し、国際交渉や国益に関わる本来の職務へ十分な時間と体力を振り向けることが困難になっているという、統治機構上の重大な問題を提起した。
日本の総理大臣の国会出席日数と、フランス、イギリス、ドイツの首脳による議会での発言日数を比較すると、その負担の差は極めて大きい。
しかも、日本の予算委員会では総理大臣が一日七時間にわたって拘束され、早朝から答弁準備に追われる。
これは単なる多忙の問題ではなく、日本の政治指導者が国益を考え、外交と国家戦略を遂行するための時間を、制度そのものが奪っているという問題なのである。
引用
以下は前章で紹介した記事である。
総理大臣の国会出席負担
2015/03 成田憲彦
野田佳彦総理は、2012年3月の参議院(参院)の予算委員会で、「日本はリーダーが摩耗する仕組みになっている」と述べた。
野党が「総理がころころ代わる状況を変えるべきだ」とただしたのに答えたもので、野田総理は首脳会議などに出席するため3週連続で外遊した際に、アメリカのオバマ大統領や韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が「ふらふらだ」と話していたエピソードを紹介して、「その間、彼らは国会に呼ばれていないが私は毎日だった」と述べ、日本の首相は他国に比べて国会対応の負担が重く疲弊してしまうとの認識を披露して、「リーダーが国際交渉の舞台に元気に出て行く状況をどうつくるか胸襟を開いた与野党の議論を」と提案した。
この野田総理の提言を受けて、財界人や学者が日本のリーダー育成のために設立した日本アカデメイアは、同年9月「日本アカデメイア有志による国会改革に関する緊急提言について」と題した提言の中で、「総理大臣や国務大臣に国益を考え行動する時間的余裕を与える」ことを提案し、各国総理の議会出席日数または議会での発言回数について、日本の総理の国会出席日数は127日(11年1月~12月)、フランス首相の議会での発言日数は12日(07年7月~08年7月)、イギリス首相の議会での発言日数は36日(08年12月~09年11月)、ドイツ首相の議会での発言日数は11日(09年11月~10年11月)というデータを示した。
提言はまた月刊「文藝春秋」10月号に「『国会改革』憂国の決起宣言」として掲載された。
このデータでは日本の総理は国会出席日数、他は発言日数(議会での発言が1回でも記録されている日数)になっているが、日本では総理が衆参の予算委員会等に出席するときは、通常9時から5時まで、昼休みの1時間を除き7時間拘束されるので、拘束時間数で比較すれば日本の総理の拘束度合いはさらに極端に多いものになる。
しかも9時から委員会があるときは、総理は5時起きで答弁準備に追われるなど、その負担は尋常のものではない。