2022年12月29日|「100年の人」安倍晋三元首相――未来の戦争に備え、歴史の舞台を変革した為政者|ジェイソン・モーガン
「100年の人」安倍晋三元首相 麗澤大学准教授 ジェイソン・モーガン
2022/12/29
【正論】「100年の人」安倍晋三元首相 麗澤大学准教授 ジェイソン・モーガン – 産経ニュース

米「タイム」誌は、2022年の「パーソン・オブ・ザ・イヤー(今年の人)」に、ウクライナのゼレンスキー大統領と「ウクライナの精神」を選んだ。
毎年、同誌がその年の最も重要、顕著な人物やイベント、運動などを選び、表紙に載せる。
ゼレンスキー氏は今年を象徴するうえで当然だが、もし今年1年ではなく、「パーソン・オブ・ザ・センチュリー(100年の人)」を選ぶとしたら、私は迷わず安倍晋三元首相を選択するだろう。
戦争に反応と備えるの違い

安倍氏が今年7月に奈良市内で凶弾に倒れたという悲報は、残念ながら日本国内の最も大きなニュースとなった。
世界がその死を悼んだ。
が、安倍氏を理解するのに、その1日の出来事、または1年だけで考えては無理だと思う。
100年、1世紀の規模で考慮しないと、安倍氏の意義が見えない。
彼は21世紀の最も重要な人で、彼を「100年の人」にノミネートしたいと考えている。
それは、起きた戦争への対応ではなく、まだ勃発していない、未来の戦争に備える意義が大きな理由だ。
ゼレンスキー大統領は、ロシアによる侵略に対し、自国を守ろうとした。
目の前に展開する戦争に立ち向かい、戦いをリードすることはヒーローの行動だ。ヒーローは歴史の舞台で輝く存在だ。
しかし、いくら勇気のある男だと高く評価しても、彼が立っている歴史の舞台は、すでにそこにあったわけだ。
しかし戦争がくることさえ信じてくれない平和ボケの国民の目を覚まして、「ファシスト」「軍国主義者」「歴史修正主義者」などのレッテルを貼られても覚悟をもって、国を強くし守るという大義を果たそうとした安倍氏は、地政学的なビジョナリー(先見性ある人)であったし、戦略の才を評価せざるを得ない。
複雑な世界の動きを解読して未来の瀬戸際に備えて万全な準備をすることは、ステーツマン、偉大なる為政者そのものだ。
「平和憲法」の危険除く
戦後の呪縛を解き、戦後体制を終わらせようとした安倍氏は歴史の舞台で輝いたのはもちろん、歴史の舞台をも変革したといえる。
その意味で彼は100年に一人しか、この世に現れない男だったと思う。
安倍氏が歴史の舞台の大きな「つくり物」を変えようとしたことの一つは、「平和憲法」とも呼ばれる日本国憲法に対してだ。
「平和憲法」は現実に、世界で最も危険な文章である。
なぜなら、日々に強みを増している中国、ミサイル発射や核兵器開発を加速する北朝鮮、反日病に慢性的に侵され日本の領土を不法に占領している韓国、現在進行形で他国を侵略し、日本の領土を不法に占領しているロシア―に直面している日本が「平和憲法」の支配下にあって丸腰になっているからだ。
それは雄牛の前に赤い旗を翻しているのと同じだ。
日本の「平和憲法」が侵略や大戦争を招きかねないし、日本国民をはじめ東アジア、全世界の人々を危うさに晒(さら)しているだけだ。
「火遊び」そのものだ。
安倍氏はこの危険をよく理解していたと思う。
1945年、第二次大戦に敗れた日本が、GHQ(連合国軍総司令部)の占領下でつくられた、お仕着せの憲法に、2022年に生きている日本国民の掛け替えのない命を託することは日本国のプライドにもかかわる問題だ。
安倍氏はそれもよくわかっていたと思う。
安倍氏のビジョン実現せよ
だから安倍氏は防衛費を国内総生産(GDP)の2%まで引き上げるよう呼びかけた。
「戦略的な曖昧さ」をやめて「台湾有事は日本有事だ」とはっきり言った。
日米豪印のクアッドの連携など、自由で開かれたインド太平洋の戦略を主唱し、全体主義に奔走した中国を囲んで抑えようとした。
命をかけて国を守る方々を「軍隊」と呼べるよう、戦後の呪縛である憲法を改正しようとした。
そしてアメリカをほめ立てながら、米軍の腕力に依存するという戦後の負の遺産を少しずつ解消しようとした。
彼が挑戦していた仕事は、たったの1年間で評価できるはずがなかった。
沖縄が次のウクライナのヘルソン、東京が明日のキーウにならないためにも、全力を尽くし戦争を防ぐために必死に戦い、殉職した安倍氏のビジョンは、この先の日本を見通したもので、やはり安倍晋三氏は「100年の人」だったと思う。
日本が完全に自立して、戦後の葛藤を切り離し、誇りを持って、胸を張れるか。
日本領土を外国に占領されないという安倍氏が見ていたビジョンは、まだ完成していない。
それは、2023年という1年間にこそ実現するか、次の「100年の人」を待つか、決める時期がきた。
安倍氏は他界から、「待たないで急げよ」と、きっと懸命に呼びかけていると思う。