朝日は令和にも皇室にも政治色を見ようとした――女性・女系天皇論の背後にあるもの
2019年8月8日発信。月刊誌Hanada掲載の櫻井よしこ、門田隆将、阿比留瑠比による鼎談の続き。新元号「令和」報道、皇室報道、女性・女系天皇論をめぐる朝日新聞の姿勢を批判し、その背後にある皇室観と政治的意図を論じる。
2019-08-08
新元号について、国民のほとんどが好意的に受け止めていましたが、朝日は違いました…〈新しい元号「令和」の選定過程を検証すると、安倍晋三首相主導の強い政治色が浮かんできた〉
以下は前章の続きである。
露骨な皇室批判を展開
櫻井
平成から令和にかけての報道もひどかったですね。
新元号について、国民のほとんどが好意的に受け止めていましたが、朝日は違いました。
新元号発表日の記事のタイトルは「新元号、濃い政治色」。
なかではこう書いています。
〈新しい元号「令和」の選定過程を検証すると、安倍晋三首相主導の強い政治色が浮かんできた〉
元号は専門家に元号候補を提出してもらい、有識者が選び、衆参両院正副議長や各党の承認も得て決められたもの。
それがなぜ、「安倍総理の政治色」と批判されるのか。
阿比留
首相が指示して元号案を追加し、皇太子さま(現天皇陛下)に事前説明をしていた、とその記事は書いているのですが、ある政府関係者は激怒していましたね。
「皇太子さまが朝日にそのことを漏らすはずもない。安倍首相と皇太子さましかわからないことなのに、なにを見てきたように書いているんだ!」と。
状況報告くらいはしたかもしれませんが、事前に元号案を示し、意見を伺ったなんてありえませんよ。
にもかかわらず、皇太子さまに意見を伺ったと断定したうえで、別の記事でこう批判しています。
〈高見勝利・上智大名誉教授(憲法学)は「皇太子への事前説明は、元号の制定を天皇から切り離した元号法の運用を誤るものだ」と指摘。そのうえで「憲法4条は政治の側か天皇の権威を利用することも禁じている。特定の政権支持層を意識した首相の行為は、皇太子に意見を求めたかどうかに関係なく『新天皇の政治利用』にあたり、違憲の疑いがある」と批判している〉
非常に卑怯なやり方です。
門田
朝日は中国にべったりの新聞ですから元号が漢籍ではなく国書から採用されたことが嫌なのですよ。
阿比留
令和の元となった歌をたどると漢籍で、純粋な意味で国書からの採用とはいえないと朝日はくさしていますが、そんなことを言ったら、いま中国で使われている漢字の七割は日本製です。
中華人民共和国の「共和国」だって、もともとは日本がつくった言葉。
そんなことにいちゃもんをつける暇があったら、もっと普通の報道をしろよと言いたい。
門田
御代替わりの時は、ついに明らかな皇室批判を「天声人語」で展開しました。
坂口安吾の「歴史的大欺瞞」という言葉を引いて、世襲に由来する権威をありがたがり、拠りどころにする国民の姿勢を痛烈に批判したのです。
最近、なぜ朝日が女性・女系天皇の実現を懸命に訴えているかというと、ここに答えがある。
一言でいえば「天皇制打倒」です。
櫻井
日本共産党も、その綱領などを読むと天皇制打倒を掲げる政党です。
いまは女性・女系天皇容認論を打ち出しています。
朝日と共産党の足並みが、ピッタリ揃っている。
朝日の「令和への課題:中 女性・女系、立ち消えた議論」(四月二十三日)という記事では、安定的に皇位を継承するには、女性・女系天皇を認める天皇の直系子孫を優先すべきとし、戦後、皇籍離脱した旧宮家の皇籍復帰案についてこう書いています。
〈朝日新聞の世論調査(2017年)では、旧皇族の皇室への復帰については、反対が67%で、賛成の20%を大きく上回った。当事者も消極的だ。久邇家当主の久邇邦昭氏は自著で、皇籍に戻すべきだとの意見に「『何を今さら』というのが正直なところ本心だ」と記している。
05年ごろに取材したノンフィクション作家の保阪正康氏は「当時、皇籍復帰したいという旧皇族やその男系男子子孫はほぼ確認できなかった。一般の生活者の視点を持ち、社会との関係性からも皇族に戻る気にはなれないようだ」と話す〉
第二の壬申の乱が起こる
門田
朝日や共産党は、皇室典範を改正してまで女性・女系天皇を実現しようとしています。
それはイコール「悠仁親王廃嫡論」でもあります。
恐ろしいことですよ。
正統な天皇家の男系継承者を「廃嫡」にしようというんですからね。
女性・女系天皇を容認するとどうなるか。
リベラル勢力の理論的支柱だった憲法学者の奥平康弘氏(故人)が、かつて『世界』で「『天皇の世継ぎ』問題がはらむもの―『萬世一系』と『女帝』論をめぐって」と題し、こう書いています。
〈天皇制のそもそもの正当性根拠であるところの「萬世一系」イデオロギーを内において浸蝕する因子を含んでいる。……「萬世一系」から外れた制度を容認する施策は、いかなる「伝統的」根拠も持ち得ないのである〉
つまり、女系天皇が実現すれば、萬世一系が途絶え、皇室は内から崩壊していくということです。
阿比留
奥平氏は日本共産党に近い、九条の会の呼びかけ人ですね。
奥平氏だけでなく、同じようなことを主張している反皇室の憲法学者は複数います。
櫻井
「女性・女系、立ち消えた議論」のなかでは、側室制度のない現代で男系男子の安定的な皇位継承は極めて困難としたうえで、こう書いています。
〈有識者会議は皇位継承順位について、天皇の直系子孫を優先し、天皇の子である兄弟姉妹の間では男女を区別しない年齢順の「第1子(長子)優先」が「適当」と結論づけた。
これを今回の代替わり後の皇室にあてはめると、皇位継承順位第1位は愛子さま、第2位は秋篠宮さま、第3位は眞子さま、第4位は佳子さま、第5位は悠仁さまとなる。
朝日新聞が今年実施した世論調査では、女性天皇は76%、女系天皇は74%が、それぞれ認めてもよいと回答した〉
阿比留
現在の皇位継承順位は、一位秋篠宮さま、二位悠仁さま。
そこに愛子さまの継承順位一位となるルールを持ち込もうとすれば、第三者による皇位簒奪でしかありません。
皇位継承者からその資格を事実上奪う、こんな恐ろしいことを、よく平気で記事にできるなと思います。
こんなことを主張すると、仮に愛子さまにお子さまが生まれたとき、「正統性争い」につながるおそれもある。
悠仁さまと愛子さまのお子さま、どちらに正統性があるか、と。
ご本人たちに争う気はなくても周囲が争う可能性があり、天智天皇崩御後、天武一(六七二)年に皇位継承をめぐって皇族、豪族がそれぞれ二派に分かれて争った壬申の乱に近いことが起こりえる。
櫻井
壬申の乱は当時、一大事件でした。
同じようなことを二十一世紀にも起こし、日本を不安定にし、基盤を崩していって共和制の国にする―朝日はそんなことを企んでいるのでは、と勘ぐられても仕方がない。
阿比留
朝日の皇室担当を長年務めたベテラン記者で岩井克己さんという記者がいます。
小泉政権で皇室典範有識者会議のときに彼とよく議論したのですが、面白いのは、彼は朝日にもかかわらず男系論者なのです。
社内で男系について話しても上が全然納得してくれない、と嘆いていましたよ。
この稿続く。