「第二の李文亮」を恐れる中国――福島香織氏が暴く武漢封鎖下の情報統制と湖北人狩り

福島香織氏の論考をもとに、武漢封鎖下で独自取材を行った公民記者・陳秋実氏や方斌氏への弾圧、火葬場の遺体数をめぐる疑惑、そして中国各地で起きた「武漢人狩り」「湖北人狩り」の実態を論じる。
新型肺炎をめぐる中国当局の情報隠蔽、言論統制、報道統制が、中国社会に疑心暗鬼と差別、パニックを生み出したことを検証する。

2020-03-12
劉暁波のように、肺炎に罹患したことにして殺されるのではないか。
肝臓がん末期になるまで放置され、獄中死したノーベル平和賞受賞者の民主活動家、劉暁波のことである。
以下は全国民必読の月刊誌Hanada今月号に、「武漢人・湖北人狩りまで 新型肺炎残酷物語」と題して掲載された、有数の中国通である福島香織さんの論文の続きである。
彼女の論文もまた、朝日新聞等を購読し、NHKのwatch9等のテレビメディアの報道だけを視聴している人達は、真相は何も分からない情報弱者に置かれるだけであることを明示している。
福島香織さんは大阪大学を卒業して産経新聞に入社、復旦大学留学、北京駐在等を経て、ジャーナリストとして活躍している。
火葬場遺体数の謎。
だが、ここまで知識人たち、そして中国一般世論が、中国の情報隠蔽、言論統制の罪を訴えても、中国当局は「デマ」狩りを建前とした言論統制、報道統制を反省しようとしていない。
李文亮の死の悲しみもさめやらぬ二月十二日、今度は北京の弁護士で「公民記者」として新型コロナ肺炎の本当の死者数を暴こうと独自調査取材をしていた陳秋実が、公安当局に拘束されているという情報が流れた。
陳秋実は一月二十四日、武漢市が都市封鎖されたその翌日に武漢入りした。
そして、公民記者として動画配信などで実況しながら、武漢市の新型肺炎感染状況の真実を伝えると宣言した。
病院や火葬場などを取材し、死者数の不自然さに注目していた。
衛生当局が発表する武漢の死者数と、火葬場が受け入れている遺体の数が、かなり違うからだ。
旧正月前から火葬場はフル稼働し、平時の四、五倍の遺体を焼いている。
そのうち六割が病院ではなく自宅から運ばれている、と火葬場関係者がネットメディア「大紀元」の電話取材に答えている。
二月三日を例にとれば、ある火葬場で百二十七人の遺体が荼毘に付された。
だが、新型肺炎が死因の遺体は八人、疑似肺炎は四十八人だった。
衛生当局の発表の死者数に、疑似肺炎による死者は含まれていない。
何の診断、治療も受けずに自宅で亡くなった人も多いのではないか、という疑いがもたれていた。
陳秋実は二月六日から忽然と消息が途絶えていた。
彼が失踪する直前まで連絡を取り合っていた匿名の武漢市民は、陳秋実は病院とは違う居住区で、単独で軟禁状態に置かれている、と米国政府系華字メディア、ボイスオブアメリカ、VOAに証言した。
また、陳秋実の親友・徐暁東も、彼が監視状態に置かれているとの説明を“内部人士”から受けた、とYouTubeを通じて明かした。
陳秋実は、いまのところ肺炎に罹患しておらず、健康だという。
だが、公安当局は彼の取材を恐れ、身柄を拘束したという。
治安管理処罰法に基づく十五日間の「行政拘留」という名目で監禁しており、拘留期間が過ぎたのち、北京に強制送還される公算が高そうだという。
しかし、中国の公安の残酷さを知る人々は懸念している。
「劉暁波のように、肺炎に罹患したことにして殺されるのではないか」
「陳秋実は第二の李文亮になるのではないか」
そう懸念しているのである。
武漢のビジネスマンで、やはり独自に取材活動をして、その結果をSNSで発信している方斌も、二月十日に私服警官に連行されたという。
方斌も、病院から運び出される遺体の多さに注目していた。
中国では習近平政権になってから一層厳しい報道統制が敷かれ、中国の記者たちは長らく取材をしてこなかった。
公民記者もほとんど活動してこなかった。
当局の情報隠蔽によって新型肺炎の感染が拡大し、武漢が都市封鎖されるまでになってから、既存メディアのなかにも独自取材を行う記者が登場した。
方斌や陳秋実のような公民記者も、感染と逮捕の危険を承知で現場取材に乗り込んできた。
だが、こうした動きを、当局側は必死に抑え込もうとしている。
獣を追うように。
こうした当局の情報隠蔽と報道統制、デマ撲滅を建前とした真実を語る者への抑圧こそが、中国人の疑心暗鬼と不安を煽り、さまざまなパニック症状を引き起こしている。
そのなかでも、最も残酷で悲惨なのが「湖北人狩り」「武漢人狩り」である。
湖北や武漢から来たというだけで包囲され、駆逐され、差別される。
ひどい場合は、殺人にまで発展するケースも報告されている。
ラジオ・フリー・アジアが、その残酷な状況を、現地の投稿動画などを交えて報じていた。
河北省石家荘市の多くの区では、武漢人および武漢人が密接に接触した人間の密告が奨励され、公安当局から懸賞金が出されている。
武漢人旅行者が帰省する際、同じ飛行機に乗っていた上海人の客から、降りるように迫られたという報告もある。
湖北省と隣接する河南省では、省境をまたぐ道路にバリケードを築き、見張りを立てている。
そして、湖北人が河南省に入ろうとするのを、獣を追うように追い払っている。
武漢から帰郷した家族がいる家の玄関を、隣人たちが外から板や鎖などで封鎖し、屋内に閉じこめて出られないようにしている。
この様子を映した動画がネット上に上げられると、けしからん差別だという怒りの声よりも、ほかの地域も河南省を見倣え、という声のほうが上がるのだった。
広東省梅州市のある鎮では、武漢人、湖北人を見つけ出して密告すると、政府からマスク三十個が贈られる。
一月二十六日から二月七日までに、その方法で百四十人以上の湖北人を見つけ出したという。
発熱者の密告に報奨金。
湖北省孝感市では、武漢人だけでなく、発熱者の密告も奨励され、その報奨金は一千元。
「天には九頭鳥、地上には湖北人」という差別的標語が巷に流れている。
九頭鳥とは、姑獲鳥のような不吉な妖鳥である。
四川省のある鎮では、武漢からの帰郷者がいる家庭を密告した人が恨みを買い、その武漢帰りの男性に殺されるという悲惨な事件も起きた。
パニックに輪をかけているのが、マスクをはじめとする防疫物資、医療物資の不足である。
武漢の協和医院をはじめ数十の医療機関で、マスク、消毒液、防護服、手術衣などの物資不足のために、緊急に寄付してほしいとの公告が、一月二十三日以降、相次いで出された。
SNSには、看護師が過労と恐怖で泣き崩れ喚く様子や、院内の廊下に遺体と生きている患者が一緒くたに寝かされている様子を映した動画などが、次々とアップされては削除された。
やがて削除が追い付かなくなるほど、そうした緊急事態を訴える動画は次々と上げられたのだった。
マスク不足の深刻化は、地方政府同士の、力ずくの奪い合いにまで発展している。
二月はじめ、重慶市が瑞麗経由で海外から購入したマスクを、雲南省大理市は、同市内の宅配会社によって輸送される途中に差し押さえて徴発した。
国務院は一月二十九日の段階で「医療物資の徴発禁止」を通達している。
だが、防疫工作に必須のマスクを確保するために、地方政府も形相を変えているのだ。
また、二月に入ってから、広東省は広州市や深圳市に、防疫工作に必要であれば、民間人や法人の施設、装備、車、物資などを徴用・徴発する権利を認める通達を出している。
すでに感染防止のためなら、個人の財産権を含む権利が後回しにされているのである。
この稿続く。
*この様な実態を、私が観ているNHKの報道番組は全く報道しなかったと言っても過言ではない。
それは、NHKには、ただの一人もジャーナリストはいない事、或いは、NHKは中国の工作下にある報道機関であるという事を証明しているだけだろう*

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