中国共産党体制と、その下で形成された行動原理――高山正之・坂東忠信対談「中国人の正体を知れ」を読む
高山正之氏と、元警視庁刑事・通訳捜査官の坂東忠信氏による対談を通して、中国共産党の一党独裁体制、天安門事件後の民主化論、香港国家安全維持法、南シナ海・尖閣諸島における中国の行動、日本国内の外国人犯罪対策と本人確認制度について考察する。
2020-07-06
指名を受けた坂東さんが立って、「仮に民主化勢力が共産党政権を倒したところで、次の政権の主人公は、やっぱり中国人でしかない」と、さらりと言い切った。
今月号の月刊誌WiLLに掲載されている、戦後の世界で唯一無二のジャーナリストである高山正之氏と、元警視庁刑事・通訳捜査官の坂東忠信氏による対談特集「中国人の正体を知れ」は、日本国民のみならず、世界中の人々が読むべきものである。
相手の行動原理を理解しないまま、理屈だけで外交交渉を進めても、次の一手を打つことはできない。
国家体制が変われば、社会も人々の行動も直ちに変わると考えるのは、あまりに単純である。
長期間にわたる一党独裁体制、歴史教育、社会制度、法の運用、家族や人脈を中心とした生活構造は、人々の判断や行動に深く影響する。
本対談が提起しているのは、中国共産党政権に対する批判だけではない。
仮に政権が交代したとしても、その社会で長年にわたって形成されてきた行動原理を理解しなければ、日本は正確な対中政策を構築できないという問題である。
以下は、同対談からの引用である。
発言内容および評価は、それぞれの発言者に帰属する。
【中国人は中国人】
高山
坂東さんは、まさに奇才!
甲冑師であり、元警視庁刑事であり、同時に中国人研究家の第一人者という顔も持っておられる。
坂東
甲冑は、ほぼ趣味ですので恐縮です(笑)。
高山
坂東さんの慧眼を実感したのは、6年前、市ヶ谷で開かれた天安門事件25周年の集会だった。
中国にゆかりのある人たちが次々に立って、あの事件を回想した。
中には、戦車に蹂躙されて散った同志を偲び、滂沱の涙に暮れる者もいた。
全体としては、「天安門事件によって中国の民主化は大きく後退した」という雰囲気だった。
そこで指名を受けた坂東さんが立って、「仮に民主化勢力が共産党政権を倒したところで、次の政権の主人公は、やっぱり中国人でしかない」と、さらりと言い切った(笑)。
坂東
周りが大爆笑してしまい、「なぜ、ここまで受けたのかな」と不思議でしたけど(笑)。
そのとき、会場にいた民主中国陣線、中国民主化運動組織の方から連絡があり、「ずばりと言ってくれて、私もよく分かりました」と言われました。
法輪功の信者もいて、「中国人が心から変わっていかなければ駄目だ」と賛同してくれたのは印象的でした。
高山
中国の歴代王朝を建ててきたのは、ほとんど異民族だった。
漢民族による王朝、例えば漢や明の時代には、国が乱れ、文化は廃れ、人心は倦み、最悪の治世だった。
今の習近平政権は、その最悪の漢民族政権であり、不釣り合いな力を持ったため、その被害は国内にとどまらない。
隣接するウイグル、チベットから、はるか南方の国々や欧州諸国にまで及んでいる。
日本人に今必要なのは、坂東的中国史観ではないか。
どう転んでも中国人は中国人なのだから、彼らの行動原理を正しく把握しなければならない。
坂東
今の中国問題の根にあるのは、中国共産党による一党独裁体制の弊害であることを認識する必要があります。
高山
かつては易姓革命によって皇帝の首がすげ替わった。
しかし今は、中国共産党という名の皇帝が支配している。
つまり、中国は何も変わっていない。
今度の武漢ウイルス騒動によって、世界はあまりにも大きな傷を負った。
アメリカは、朝鮮戦争とベトナム戦争の戦死者数の合計を超える死者を出し、経済は停滞し、リーマンショックを超える経済損失を被ると予測されている。
中国に対して何らかの責任を求めるのは当然だ。
この半世紀、中国に接近してきた米民主党も態度を豹変させた。
アリババ・グループ・ホールディングや百度、バイドゥなどの中国企業について、米国の証券取引所への株式上場を禁止する法案を全会一致で可決した。
欧州も激怒している。
【いわば宣戦布告】
坂東
中国が香港に国家安全維持法を導入したことを受けて、英国、オーストラリア、カナダ、米国の4カ国が、中国を非難する声明を出しています。
中国に対する意識は大きく変化しているとみて、間違いありません。
高山
いわば、中国に宣戦布告したようなものだ。
ところが中国は、むしろ開き直っている。
南シナ海の南沙諸島、西沙諸島の埋め立て島を国土に編入し、領海に仕立てる。
台湾海峡では領海侵犯を繰り返す。
東シナ海でも、尖閣諸島周辺に中国海警局の公船が公然と入り込み、果ては日本漁船を3日間も追い回している。
日本の穏やかな抗議に対して、中国外交部の趙立堅は、「中国の領海に入ったから追い立てただけだ」と、平然と虚偽を述べる。
事実上、日本に戦争を仕掛けているようなものだ。
日本は、最低でも大使召還を検討するところなのに、何の反応もしない。
蓮舫にも、ひと言言わせるべきところだろう。
折も折、4カ国声明に関連して、共同通信が「日本政府にも参加を打診されたが、日本は拒否した」と、意図的とも思える誤報を流した。
産経新聞は、その配信記事を掲載した。
対談中で高山氏は、共同通信の報道の背後に中国の影響があった可能性を指摘している。
それはともかく、日本では香港問題についても、野党が十分に議題にしようとしない。
政府も優柔不断な外交政策しか取れず、うつむいたままにしか見えない。
今こそ、旗幟を鮮明にすべきときだ。
しかし、肝心の新聞やメディアが野党以上に愚かで、ただ「戦争反対」「日中友好」「話し合いを」としか語らない。
中国が友好という言葉をどのように利用しているのか。
彼らの行動原理とは一体何なのか。
メディアは、もっと鮮明に報道しなければならない。
米国人宣教師アーサー・H・スミスは『中国人的性格』を書いた。
中国人である林語堂も、『中国=文化と思想』において率直な中国人論を書いている。
そうした論考を、今こそ伝えていくことがメディアの使命ではないのか。
坂東
私は過去、約1400人の中国人を取り調べました。
そのうち約3分の1は犯罪者です。
「犯罪者ばかり見てきたから、坂東の中国人評価は偏っている」と批判されることがありますが、そうではありません。
中国人は人脈を生かして仕事や住居を探すため、犯罪者に関する参考人も、ほとんどが中国人でした。
その中には密航者も混在しており、何食わぬ顔で普通に生活していることが多々ありました。
【ずる賢く、礼節を欠く】
高山
朝日新聞は、マイナンバーと銀行口座を結び付けることに反対する社説を書いている。
朝日新聞は、グリーンカードや住民基本台帳ネットワークシステムのときにも、「国民は番号で呼ばれてよいのか」「国民総背番号制だ」などと主張し、反対を繰り返してきた。
マイナンバー制度を徹底すれば、確かに脱税は難しくなる。
不正な口座も開設しにくくなり、虚偽の身分で不動産を購入することも難しくなる。
しかし、通常の日本人には大きな不都合はない。
困るのは、不法入国者や地下銀行を利用する外国人犯罪者である。
高山氏は、その中に中国人、朝鮮半島出身者、ベトナム人が多いと述べている。
現在の日本では、不法入国した中国人が家を購入し、中華料理店を開き、子供を学校に通わせることさえ可能になっている。
少し前には、足立区で、密入国した中国人夫婦の子供が学校帰りに誘拐され、1500万円の身代金を要求される事件があった。
逮捕された犯人グループ6人も中国人だった。
犯人たちは、子供の親が密入国者であるため、警察には届け出られないだろうと考えて犯行に及んだと供述した。
言い換えれば、日本に来れば、密入国者であっても東京の中心部で生活し、店を開き、子供を日本の学校に通わせ、1500万円の貯金を持つことさえできるということだ。
高山氏は、朝日新聞によるマイナンバー制度への反対が、結果的に日本の治安を脅かす外国人犯罪者に有利に働くと批判している。
そのような人権報道が、中国人犯罪者を含む外国人犯罪の実像を見えにくくしているという主張である。
坂東
現在では、外国人登録証明書、いわゆる外登証が在留カードに変わり、マイナンバーと同様に本人確認に利用できる仕組みが整えられています。
しかし当時、密航者の多くは福建省から来ており、当然、所持しているパスポートや外国人登録証明書は偽造されたものでした。
私が現役だった頃は、それほど精巧なものではありませんでした。
しかし、次第に偽造の精度が上がっていきました。
10年ほど前からはホログラム付きの偽造証明書も作られるようになり、真偽の判別が難しくなりました。
加えて、中国人が作る偽造証明書は漢字の間違いが少ないため、中国人だけでなく、ウズベキスタン人やイラン人まで購入するようになっていました。
高山
おそらく、ファーウェイの最高財務責任者、孟晩舟も精巧なものを持っていたのだろう。
カナダで逮捕された際には、7冊のパスポートを所持していたと報じられていたからだ(笑)。
この稿続く。