中国共産党の「三戦」と対日情報工作――心理戦・世論戦・法律戦、そして日本が備えるべき国家安全保障

以下は前章の続きである。
本章で論じられているのは、中国共産党政権が展開してきた「心理戦」「世論戦」「法律戦」という三つの政治工作、外国の報道機関や知識人を利用した対外宣伝、日本における親中勢力の問題、そして中国国内の混乱によって大量の難民や不法入国者が発生した場合に、日本がいかに備えるべきかという国家安全保障上の課題である。
原文では、中国人民解放軍政治工作条例が制定された1954年に「三戦」の概念が打ち出されたとされていた。
しかし、人民解放軍の政治工作にはそれ以前から長い歴史があるものの、「世論戦・心理戦・法律戦」の三つを一組の戦略として政治工作条例に明記したのは、一般に2003年の条例改定時とされている。
米国防総省の2024年版年次報告も、人民解放軍が「三戦」の概念を発展させ始めたのは2000年代初頭であると説明している。
したがって、本再掲載版では、原文の「1954年」を「2003年」に訂正した。
なお、本章には、報道関係者、新聞社、弁護士、中国人留学生、難民などに関する厳しい発言が含まれている。
それらは対談者による評価、証言、推測、政策提言として掲載するものであり、個々の人物の違法行為や外国政府との関係を確定的事実として断定するものではない。
また、難民・不法入国対策は、国籍や民族による一律の排除ではなく、個々の事情、身元、行動、犯罪歴、安全保障上の危険性などを法に基づいて厳格に審査する制度として構築されなければならない。

2020-07-07
【難民を阻止せよ】
坂東
中国共産党政権は2003年、中国人民解放軍政治工作条例を改定し、その中で「三戦」という概念を明確に打ち出しました。
その三つとは、「心理戦」「世論戦」「法律戦」のことです。
人間の心理に働きかけ、世論を形成し、法律の解釈と運用を自分たちに有利な方向へ導いていく。
高山
マイケル・ピルズベリーが『China 2049』という本を出して、中国共産党政権の「百年マラソン」構想を紹介していたが、中国は早い段階から情報戦の重要性を把握していたわけだ。
それと、何清漣の『中国の大プロパガンダ』(福島香織訳/扶桑社)を読むと、日本がいかに中国に籠絡されているか、その実態が分かる。
他国で情報工作を行う場合、中国側は大金を投じて相手を抱き込もうとする。
それでも、簡単には協力してもらえない。
ところが日本では、「日中友好人士」と称する人々が、自ら率先して中国の宣伝活動に関与する。
その一例として挙げられるのが、元朝日新聞北京特派員の横堀克己である。
中国を美化する記事を書き続け、後に『人民日報』日本版の責任者になった。
中国側は過去、「百人斬り」を報じた毎日新聞の浅海一男を北京に永住させ、その娘を北京大学に入学させたともいわれる。
墜落死した林彪について、長期間にわたって生存しているかのような報道を行った元朝日新聞北京支局長の秋岡家栄は、『人民日報』海外版の日本代理人に据えられた。
坂東
日本人は、本当にお人よしです。
新型コロナウイルス感染拡大後、中国と欧米諸国との対立が先鋭化することは間違いありません。
日本も中国に対抗するため、欧米諸国と歩調を合わせるべきですが、一つ難しい問題があります。
中国が今後の国際的な対立や国内の混乱によって重大な危機に陥った場合、多くの難民が日本に向かってくる可能性がある。
福建省から小型船に乗り、潮流などの条件が重なれば、一週間から十日ほどで日本の太平洋側沿岸に到達する可能性があるといわれています。
船舶のバラストタンクなどに隠れて密入国する事例も考えられる。
高山
1975年にサイゴンが陥落した後、ベトナム系中国人が難民となり、多くのボートピープルが発生した。
その多くが日本海側に漂着したともいわれている。
「そんなに多くの船がベトナムから流れてきたのか」と調べてみると、実際には福建省から出航した船が相当数含まれていたという話もある。
難民船を装い、最終的にはアメリカへ渡ろうとしていたということだ。
坂東
日本は、法整備を含めて難民・不法入国対策を進める必要があります。
領海侵犯などによって日本の主権を脅かしている国との関係、身元確認の可能性、日本国内における犯罪歴、安全保障上の危険性などを考慮し、審査と国境管理を強化する。
国民の生命と財産を守るため、日本独自の明確な受け入れ基準を定める必要があります。
ただし、それは国籍だけを理由とした一律排除ではなく、一人一人の事情と危険性を法に基づいて審査する制度でなければなりません。
高山
坂東さんの言う通りだ。
中国共産党政権の無制限な行動を、これ以上放置してはならない。
福沢諭吉の「脱亜論」になぞらえて言えば、日本は権威主義国家との不健全な関係を見直し、自由、法の支配、人権という価値を共有する欧米諸国と歩調を合わせ、情報戦、領海警備、難民・不法入国対策について、十分な備えを整える必要がある。

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