シアトル自治区と「記憶の抹殺」――ANTIFA・BLM、銅像撤去運動、そして2020年米国社会の混乱
古田博司筑波大学名誉教授と藤井厳喜国際政治学者の対談から、シアトル中心部の占拠、市長とワシントン州知事の対応、自治区内で発生した事件、ANTIFAとブラック・ライブズ・マター(BLM)、コロンブス像やジェファソン像の撤去運動を論じた章である。
後半では古田が、銅像撤去を野蛮な「記憶の抹殺」と捉え、日本の歴史研究や韓国の「慰安婦像」と対比しながら、歴史と記憶をめぐる問題を論じている。
2020-07-23
本稿は2020年7月23日に発信した章であり、前章から続く古田博司と藤井厳喜の対談を紹介したものである。
前半では、2020年に米国シアトル中心部の一部が占拠された際、市長やワシントン州知事がどのように対応したのか、占拠地域で発生した事件が世論にどのような影響を与えたのかを論じている。
後半では、コロンブス像やジェファソン像などの撤去運動へと議論が進み、古田はこれを過去への接続を断ち切る「記憶の抹殺」と表現している。
さらに日本の歴史研究や韓国の「慰安婦像」、中東からの資金、中国による工作の可能性についても対談が展開される。
以下の日本語本文は2020年7月23日の原文を一字も変更せず、句点で改行して掲載する。
【引用】
藤井 記者会見のとき、占拠について聞かれたら、「え、そうですか?知りませんでした」と、とぼけていましたよ(笑)。
「知っている」と答えたら、知事の義務で州兵を動員しなければならないからです。
古田 ずいぶんと汚い手を使いますね。
【原文】
2020-07-23
「え、そうですか?知りませんでした」と、とぼけて…「知っている」と答えたら、知事の義務で州兵を動員しなければならないからです…ずいぶんと汚い手を使いますね
以下は前章の続きである。
銅像撤去は野蛮な「記憶の抹殺」
古田 シアトル市では、過激派連中によって自治区ができた。
藤井 中心街6ブロック分が占拠されました。
その中は完全な心治外法権状態で、放火やレイプ・略奪が横行する無法地帯でした。
「みかじめ料」まで徴収していたというから驚きです。
古田 そこまでのさばった理由はなんだろう。
藤井 ANTIFAやBLMが警察署に抗議デモで押し寄せたとき、なぜか、ジェニー・ダーカン市長が、警察署から警察官を退避させたのです。
そのため、警察署が乗っ取られ、警察署を中心に占拠されてしまった。
トランプ支持派の市民は「早く軍隊を送れ」と訴えたのですが、市側はまったく制圧する気がなかった。
古田 市長はリベラルですか。
藤井 そう、民主党リベラルです。
加えて、ワシントン州のジェイ・インスレー知事も民主党です。
記者会見のとき、占拠について聞かれたら、「え、そうですか?知りませんでした」と、とぼけていましたよ(笑)。
「知っている」と答えたら、知事の義務で州兵を動員しなければならないからです。
古田 ずいぶんと汚い手を使いますね。
藤井 シアトル市で騒ぎが拡大すれば、トランプ再選の足かせになると、知事と市長は睨んだのでしょう。
トランプが「このままだと軍を投入する」と言っても、市長は「これは夏の祭りみたいなものだ」とごまかしていました。
ところが、市長が突然、方針を転換して立ち退き命令を出したのです。
その翌日、警官隊を出動させた。
銃撃戦もあり得るかと思いましたが、過激派の連中は、あっさり投降しました。
古田 市長はどうして心変わりしたのですか。
藤井 自宅が襲撃されたことも大きかったと言われています(笑)。
どうやら真相は、自治区内で19歳の黒人青年が殺されてしまったことが大きいようです。
被害者の父親はFOXテレビに出演し、涙ながらに訴えかけました。
息子の遺体に対面するまで、一週間も待たされたそうです。
病院に運ばれても、医者や看護師が避難していたので適切な治療が施されませんでした。
ほかにも14歳の黒人少年が襲撃されています。
これらの事件が明るみに出て、過激派たちの欺瞞が暴かれた。
「何がBLMだ」と、世論が大きく変化したのです。
古田 「ブラック・ライブズ・マター」にあるまじき行いというわけだ。
藤井 ともかくシアトル事件は解決したわけですが、過激派の連中が去った後はゴミの山だらけ。
ひどいものです。
古田 そういうのも人間の獣性かもしれない。
韓国人は引っ越しの時にメチャメチヤに汚して去ります。
「積極的不潔さ」を感じますね。
藤井 この一件以降、コロンブス像やジェファソン像の撤去運動も、ピタッと止まりました。
トランプが記念碑や像を「損壊、汚損、撤去」する行為に最大10年の禁錮刑を科す大統領令に署名したことが大きかった。
古田 あれはたぶん野蛮な「記憶の抹殺」ですよ。
過去をたどって、そこに着地できないように記憶自体を抹殺してしまうのです。
うちの国でも、マルキストの日本史研究者や記紀研究者、アジア主義の内発的発展論者のなかにいます。
シナ文化に肯定的でない本居宣長のような歴史上の人物をいなかったかのように扱うのですね。
聖徳太子も彼らの犠牲になりかけたのですが、藤岡信勝先生たちがうまく救い出してくれました。
ついでに言っておくと、韓国の「慰安婦像」の方は「歴史の捏造」、米国の銅像の撤去は「記憶の抹殺」です。
前のは普通名詞の幻像を入れ込み、後のは実在の有名人を取り除く。
どちらも進歩派の汚い手です。
藤井 シアトルの過激派の連中には、中東からの資金が相当流れていたようです。
実際、活動家の中には複数の会社を所有し、ペンツを乗り回したりしている人もいました。
古田 中国はかかわっていないんだろうか。
藤井 まだはっきりしていません。
ただトランプが落選するのを一番願っているのが習近平であることは間違いありませんから、チャイナが裏で工作していた可能性は高いと思います。
この稿続く。