米中対立の本質と中国の言行不一致—安倍晋三が語った対中外交、尖閣、拉致問題の核心

2019年7月8日発信。
米中対立の本質は、単なる経済摩擦ではなく、中国の人権問題を含む国家の在り方そのものにある。
本稿では、櫻井よしこ氏らとの対話を通じて、安倍晋三元総理が、中国の言行不一致、尖閣諸島周辺への継続的侵入、一帯一路をめぐる四条件、そして北朝鮮拉致問題への決意について率直に語った核心部分を紹介する。
日本外交が国際社会と連携しながら何を主張し、何を守ろうとしていたのかが明確に分かる一篇である。

2019-07-08
経済への悪影響を抑えるとしても、トランプ大統領をはじめ米国がいま問うていることは、人権問題を含め、中国の国の在り方だと思うのです。
以下は前章の続きである。
中国の言行不一致
櫻井 
経済への悪影響を抑えるとしても、トランプ大統領をはじめ米国がいま問うていることは、人権問題を含め、中国の国の在り方だと思うのです。
「こんなことは許されない」という姿勢が米国側でどんどん強くなってきている。
他方で、中国側も「原則的なことは一切譲らない」と強硬な姿勢を崩していません。
もちろん、米中が劇的に和解する可能性はゼロではありません。
しかし、この両国の対立はかなり深刻で、長期間にわたって継続するのではないか。
安倍 
日本にとって、中国は最大の貿易相手国です。
日本の経済の発展においても日中関係は非常に重要です。
他方、米国は日本にとってかけがえのない同盟国です。
そのなかで、先述したとおり、中国側に多くの課題があることは事実です。
中国にはその課題に真剣に取り組んでもらわなければなりません。
G20大阪サミットの場において、おそらく米中首脳会談が行われる可能性がありますので、その会談の行方に注目していきたいと思っております。
楼井 
いま尖閣諸島周辺の接続水域に、武装していると思われる中国船が六十二日間連続で侵入してきています(六月十三日)。
尖閣諸島国有化以降で、過去最長の連続日数です。
中国は日本に対して微笑外交を展開し、日中友好を演出しておきながら、一方では尖閣への侵入を続けている。
「なにが友好か」と私は強い憤りを覚えます。
米国が怒り心頭なのは、こうした中国の言行不一致にある。
囗では友好や協調を言いながら、全く行動が伴っていない。
中国には貿易や経済、安全保障などあらゆる面でこうした歪みが見られます。
安倍 
安倍政権の下、日中関係は改善してきています。
昨年五月には李克強国務院総理が訪日し、十月には私か日本の総理大臣として七年ぶりとなる中国への公式訪問を行い、習近平主席と首脳会談を行いました。
日中関係は正常な軌道に戻った。
しかし同時に、わが国の領土・領海・領空、安全保障など国家の原則にかかわる問題については、妥協する考えは一切ありません。
尖閣諸島周辺の領海への侵入についても、海上保安庁の皆さんが日々、負荷のかかる困難な任務に従事し、立派にその役割を果たしていただいていますが、私たちも断固たる対応をとっています。
「中国はこの日本の覚悟と決意を見誤らないでもらいたい」ということは、習近平主席にも直接申し上げています。
言うべきことはしっかりと言う。
これが大切です。
一帯一路についても日本はかねてから、日本が協力するにはプロジェクトごとに適正融資による対象国の債務の持続可能性、プロジェクトの開放性、透明性、経済性の四条件を満たす必要があると強く主張してきました。
その結果、先日福岡で開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議で、この四条件が入った合意文書を出すことになったのです。
中国も四原則が明記されたこの文書に賛同した。
これはひとえに、日本が国際社会を巻き込んで主張し続けてきた成果です。
もちろん、中国にはこれをきちんと実行してもらわなければなりません。
言行不一致は許されない。
このように言うべきことは言っていく、それも国際社会とともに主張していくことが、外交では極めて重要だと考えています。
金正恩委員長と直接会談を
桜井 
一帯一路に協力してけしからん」と安倍総理の対中外交を貶す専門家が日本にはいますが、いまのお話をお聞きして、安心する国民も多いと思います。
さらに、中国とも関係する北朝鮮問題について伺います。
総理は「金正恩委員長と無条件で会談に臨む決意だ」と述べておられますね。
これに対して、北朝鮮の報道官が「厚かましい」「面の皮がクマの足の裏のように厚い」(六月二日朝鮮中央通信)と、よくもまあここまでの比喩が思いつくものだと思うぐらいの譬えで、痛烈に批判しました。
安倍 
私は、若手政治家の頃や官房副長官の頃から北朝鮮に批判され続けてきましたから、免疫ができています(笑)。
二〇一八年にシンガポールで第一回米朝首脳会談か行われ、朝鮮半島の非核化について米朝両首脳が合意をしました。
この米朝プロセスを、日本は東アジアの安全保障のためにも支援していく考えです。
同時に、日本にとって最も重要な拉致問題については、私も櫻井さんとともに若い頃から取り組んで参りました。
二〇〇二年に五名の拉致被害者が帰国されて以来、一人の被害者の帰国も実現できていないということは、この問題に当初から取り組んできた政治家の一人として痛恨の極みです。
何よりも重要なこの拉致問題の一日も早い解決に向け、次は私自身が金正恩委員長と直接向き合わなければならないとの決意です。
条件を付けずに金委員長と会って、率直に、虚心坦懐に話をしたい。
トランプ大統領からも、こうした私の決意に対し、全面的に支持する、あらゆる支援を惜しまないとの力強い支持をいただきました。
残念ながら、日朝首脳会談について現時点で目処が立っているわけでは全くありませんが、日本としては日朝平壌宣言に基づき、拉致・核・ミサイルといった諸懸案を包括的に解決して、不幸な過去を清算して国交正常化を目指す方針に変わりはありません。
被害者のご家族の皆さんもお歳を重ねておられるなかにおいて、引き続き日米で緊密に連携しながら、あらゆるチャンスを逃さず、果断に行動して参ります。
ご家族の方々にお目にかかりますと、「とにかく、安倍政権で何とかしてください」と仰っていただいておりますので、何か何でも成し遂げなければならないと決意しています。
この稿続く。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


上の計算式の答えを入力してください