「ポスト安倍」は誰か—枝野幸男の錯覚と野党迷走、自民党後継問題の深層
2019年7月9日発信。
本稿は、月刊誌Hanada掲載の堤堯氏と久保紘之氏の対談を通じて、「ポスト安倍」をめぐる野党の思惑と、その空疎さを鋭く論じたものである。
枝野幸男氏の発言、立憲民主党成立の経緯、改憲論や安保観のぶれ、さらに中曽根康弘、金丸信、吉田茂らの逸話を交えながら、政治指導者に求められる力量と自民党の後継問題の重大性が語られている。
野党の限界と日本政治の現実を見抜くうえで示唆に富む一篇である。
2019-07-09
これを聞いて、俺は「バカだな、こいつは……しかし、よくぞ言ってくれた」と思った。
以下は前章の続きである。
前文省略。
一方で、いまや野党は「安倍がやっている限り、自分らに勝ち目はない」と悟ってギブアップしている。
そりゃそうだろう、ひっくり返せる要素がどこにもないんだからね。
だから「ポスト安倍が狙い目だ」というのが野党のホンネだ。
ポスト安倍といえば、昨年の自民党総裁選の時に、立憲民主党の枝野幸男がこんなことを言った。
「野党第一党として政権の選択肢となり、遠からず政権を担う。
私の責任は政権を得ることではなく、長期政権を作ることだ。
野党第一党の党首である私が『ポスト安倍』だ!」
これを聞いて、俺は「バカだな、こいつは……しかし、よくぞ言ってくれた」と思った。
というのも、「ポスト安倍はこの俺だ」といえば、嫌でも人は安倍と枝野を比べる。
誰が見たって結果は明らかじゃないか(笑)。
久保
ところで、麻生が最近テレビで、安倍とトランプの親密ぶりを踏まえて、こう言っていました。
「安倍晋三を取り換えるなどと簡単に言うけど、戦後日本の外交においては、歴代政権がアメリカといかに親しくなるかで、どれだけ悩み苦心してきたか、わかるかい」
実際、国家間の関係は、往々にしてトップ同士の個人的な親密度に大きく左右されます。
たとえば、ニコラス・ワプショット(『レーガンとサッチャー』新潮選書)はこう書いいます。
「レーガンとサッチャーが後世に残る強いリーダーシップを発揮できたのは、長年連れ添った夫婦のように、お互いが意見の違いを広い心で受け止める“政治上の結婚”(a political marriage)のような特別な関係だったからだ」
中曽根なんかは、「首相になってまず心掛けたことは、第一にサミットで何か何でもレーガンの隣に並んで写真を撮ること、第二に相手をファーストネームで呼べる関係をつくることだった」と言っていた。
多くの人はその“軽さ”を笑いものにしたけど、そうしたことの積み重ねで「ロン・ヤス」関係ができて、かつてないほど日米関係は強固になった。
ただ、中曽根は前のめりになって、サッチャーに対しても初対面で「マーガレット」とファーストネームで呼んで、鉄の女を面食らわせていましたけどね(笑)。
立民は「新党・落ちこぼれ」
堤
金丸信が大幹事長と呼ばれていた頃に、「いずれは首相の座を狙いますよね」と記者に訊かれて、こう答えた。
「俺の顔を見てみろ。
この俺がサミットに並んでいる姿を想像できるか?」とね(笑)。
金丸は己の分を弁えていた。
枝野は全くダメだね。
見てくれだけの話じゃない。
政治家としても問題外だ。
たとえば枝野は民主党の時代に、『文藝春秋』(2013年10月号)に「憲法九条 私ならこう変える」と題して改憲私案を書いた。
読んでみると、集団的自衛権を一部認めていて、安倍の安保法制と大した違いはない。
おまけに、「(自衛権を)個別的か集団的かという二元論で語ること自体、おかしな話です。
そんな議論を行っているのは、日本の政治家や学者くらいでしょう」とも書いている。
俺が以前から言っていることで、「オヤ、こいつも少しはわかってきたのかな」と思ったけど、立憲民主党の代表になった途端、その私案を撤回して元の木阿弥だ。
撤回理由もロクに説明しない。
およそ定見がない。
あげく「安倍に改憲はやらせない」と連呼する。
支離滅裂だよ。
久保
あんな政治のイロハも知らない輩を舞い上がらせたのは、遡っていくと小池百合子のせいだな(笑)。
堤
民進党が希望の党に合流することになったとき、枝野たちは排除されて、仕方なく立憲民主党を作った。
当初は代表の前原に白紙委任して、希望の党への移住を望みながら、小池に選別・排除された、いわばヤドカリになり損ねた連中だ。
俺は言ったよ、「彼らは立憲民主党なんかじゃない。
『新党・落ちこぼれ』だ」とね(笑)。
それが何を間違えたのか、スジを通したと評価されて今日に至っている。
スジもヘッタクレもない。
小池のスカートのなかに入り損ねただけの話じゃないか。
そんな党の代表が「ポスト安倍はこの私」だって?
気は確かかと言いたい。
ただ、「ポスト安倍」というのは自民党にとっては深刻な課題というか、下手すれば危機だね。
かつて吉田茂の後継は池田勇人か佐藤栄作かと取り沙汰されていたとき、朝日の記者が吉田に直接そのことを訊いたら、
「これからの日本で一番大事なのは経済だ。
経済がわかるのは池田だから、次は池田だ。
佐藤はその次だ」と答えた。
これはいわゆるオフレコ発言で、表に出さない約束をしていたんだけど、その記者が書いちゃった。
しばらく吉田邸を出入り禁止になったそうだ(笑)
久保
それを聞いて書かないやつは政治記者失格だ、
立派ですよ(笑)。