日本の真価を問う新たな「戦争」――武漢ウイルス後の米中対立と自由世界の再構築

2020年5月18日の産経新聞に掲載された大阪大学教授・坂元一哉氏の論文を紹介し、新型コロナウイルスとの戦いを世界史を画する新たな「戦争」と捉え、朝鮮戦争後の冷戦構造、トランプ大統領のグローバリズム批判、米中対立の激化、そして自由世界における日本の役割を論じる。

2020-05-18
だが、米国が受けた被害の巨大さと、「戦争」拡大について反省もなく、責任をとることもなさそうな中国の態度のコントラストは、米中対立の激化を不可避にしている。
以下は、今日の産経新聞に、「日本の真価問う『戦争』」と題して掲載された、大阪大教授・坂元一哉氏の論文からである。
米国の外交史家、J・L・ギャディスは、冷戦の起源を1950年、昭和25年6月に勃発した朝鮮戦争に求めている。
この戦争を契機に、米国は国防予算を4倍に拡大。
第二次世界大戦の戦後処理をめぐって生じていた、ソ連、当時との対立を本格的なものにしていった。
その朝鮮戦争の勃発から70年になる今年、中国武漢市で発生した新型コロナウイルスと人類との戦いは、数百万人の犠牲者を出した70年前の戦争同様、世界の歴史を画する大「戦争」になると思われる。
世界はこの「戦争」の勃発以前から、すでに新しい時代に入っていたようである。
3年前に登場した米トランプ大統領が、グローバリズムを基調にした「冷戦後」の米国政治外交政策を厳しく批判し、それからの離脱を進めてきたからである。
この「戦争」はその動きを加速し、朝鮮戦争が冷戦の到来を確定したように、ポスト「冷戦後」の新時代の到来を確定する「戦争」になるだろう。
トランプ大統領のグローバリズム批判はこれまで、それが米国に不公平な経済的結果をもたらすという観点からの批判が主だった。
だがこの「戦争」は、国民の安全という観点からも、大統領のグローバリズム批判を正当化するものになろう。
人、モノ、カネが国境を越えて自由に動くことには、他国で発生した病気も国境を容易に越えて、国民の健康を脅かすリスクがある。
また、モノの自由な移動を前提にして、生産の他国依存が過ぎれば、いざというときに国民の生活を守れなくなるリスクが生じる。
米国はすでに、日本や欧州諸国とともに、世界貿易は、ただ自由というだけでなく、「自由で公正」なものでなければならないとの主張を強めている。
だがこれからは、「自由で公正」に加え、「安全」な貿易のルールづくりも求められよう。
むろんそのルールは、いまの世界経済の苦境をさらに悪化させる保護貿易を許すようなルールであってはならない。
新しいルールづくりが、どれほどの困難をともなうかは、「戦争」前から悪化していた米中関係の行方にも左右される。
朝鮮戦争では、米中は戦火を交え、両国は不倶戴天の敵となった。
一方、この「戦争」は両国間の戦争ではない。
だが、米国が受けた被害の巨大さと、「戦争」拡大について反省もなく、責任をとることもなさそうな中国の態度のコントラストは、米中対立の激化を不可避にしている。
GDP世界1位と2位の国の対立激化が、世界経済の復興と世界貿易の新しいルールづくりに、多くの困難をもたらさないはずはない。
日本は米国とよく協力して、困難を乗り越えるための自由世界の努力をリードしていかねばならないだろう。
朝鮮戦争後の日本は、米国の敵から友に変わって経済大国への道を歩み、自由世界の発展に貢献した。
この「戦争」は、米国のグローバル・パートナーとしての日本の真価が、あらためて問われる「戦争」になりそうである。
さかもと かずや。

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