加戸守行前愛媛県知事が訴えた教科書正常化――近隣諸国条項が生んだ歴史教育の歪み
阿比留瑠比氏の産経新聞コラムを通じ、前愛媛県知事・加戸守行氏の訃報と、教科書検定における「従軍慰安婦」記述の復活、自由社教科書の不合格、近隣諸国条項の弊害を考える。日本の歴史教育を歪めてきた左派勢力と検定制度の問題を問う。
2020-03-27
日本の歴史をおとしめることに懸ける左派勢力の執念と執拗さにあきれていたところ、加戸守行前愛媛県知事の訃報が届いた。
昨日の産経新聞も、今、最もまともな新聞は産経新聞であることを実証していた。
以下は現役最高の記者の一人である阿比留瑠比の連載コラムからである。
教科書改善訴えた前愛媛知事。
令和3年度から中学校で使われる教科書に、平成16年度検定以降は使用されていなかった「従軍慰安婦」という呼称が復活した。
これは元毎日新聞記者の作家、千田夏光氏の造語であり、教科書で史実として教えるのは明らかに不適切である。
一方で、左派勢力が跳梁跋扈してきた教科書の正常化を目指す新しい歴史教科書をつくる会が進める自由社の教科書は、検定で再申請も認められない形で不合格とされている。
日本の歴史をおとしめることに懸ける左派勢力の執念と執拗さにあきれていたところ、加戸守行前愛媛県知事の訃報が届いた。
加戸氏といえば県知事としての体験を通し、学校法人加計学園の獣医学部新設計画をめぐって認可手続きの正当性を訴え、次のような論陣を張ったことが印象深い。
「日本獣医師会に一切メスを入れないというのは、不思議な国会だ。徹底的な『悪』は、既得権益を死守するために獣医学部の新設をつぶしてきた獣医師会なのだが」
「近隣条項」の弊害。
くしくも加戸氏は、現在発売中の月刊『正論』4月号の特集「教科書検定を斬る」に記事を寄せ、教科書検定基準に近隣諸国への配慮を定めた「近隣諸国条項」が加えられた経緯を記し、こう批判している。
「『近隣諸国条項』が教科書記述をますます悪くしたことは確かです」
記事によると加戸氏は昭和57年、マスコミが一斉に文部省が教科書検定で日本の「侵略」を「進出」に書き換えさせたと大誤報した「教科書誤報事件」(産経新聞は訂正)の際の文部省総務課長だった。
加戸氏はマスコミ各社に「こんな誤報を流してあなた方は恥ずかしくないんですか!」と迫ったが、記者たちは産経新聞を除いて口を拭って間違いを正そうとはしなかったという。
その結果、猛反発する中国や韓国の圧力に当時の鈴木善幸内閣は屈し、宮沢喜一官房長官が「政府の責任において是正する」「検定基準を改める」などと釈明する「国家の主権を譲り渡したかのごとき談話」(加戸氏)を発表した。
そしてそれが近隣諸国条項を設ける根拠となった。
「平成7年に中学校の全歴史教科書に一斉に『従軍慰安婦』に関する記述が登場しました。南京事件をめぐる記述も、被害者の数を平気で盛り込んでくるのもそうで、これらは『近隣諸国条項』による弊害と言っていいでしょう」
加戸氏はこう指摘したうえで、教科書改善に向けたこんな希望も書いていた。
「ですが、学習指導要領が本当に良くなりましたから、指導要領に適うべく教科書検定を続けていれば、教科書は必ず良くなる」
座視できない現状。
ところが、今回の検定結果をみると、残念ながら加戸氏の思いとは反対方向に事態は動いている。
密室で審議される検定制度の問題点が明らかになった。
そもそも安倍晋三首相が盟友の故中川昭一元財務相らとともに9年、自民党の議員連盟、日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会を立ち上げたのはなぜか。
中学校の全歴史教科書に「従軍慰安婦」が記載されたことに、危機感を募らせたのがきっかけだった。
学習指導要領の改革などに取り組んできた安倍内閣において、従軍慰安婦の記述が教科書に復活するという皮肉な現状を座視するわけにはいかない。
党派を問わず、加戸氏の訴えに耳を傾け、教科書検定のあり方や近隣諸国条項を改めようという国会議員の動きは出てこないものだろうか。
(論説委員兼政治部編集委員)