香港は21世紀の民主政治を守れるのか――「古代脳」の中国共産党と香港デモの本質

2019年10月17日発信。
月刊誌WiLL掲載の古田博司氏と藤井厳喜氏の対談をもとに、香港デモ、中国共産党の全体主義、天安門事件、台湾情勢、アメリカの対中制裁、5G覇権、中国製造2025をめぐり、近代民主政治と「古代脳」の専制支配の衝突を論じる。

2019-10-17
陳浩天氏は「今は21世紀じゃないか、全体主義的な政権に、仮にも700万人の民主政治の国が潰されていいのか」と憤っていましたが、チャイナは21世紀を生きていません
以下は月刊誌WiLL今月号に、韓国は昔も今も古代脳、「古代脳」は対処のしようがない。と題して掲載された古田博司氏と藤井厳喜氏の対談の続きである。
香港に経済制裁を
古田 
香港デモの情勢はどう見ていますか。
藤井 
東京で日米協力の保守政治活動討論会「J‐CPAC」(Japanese Conservative Political Action Conference)が八月三十一日と九月一日に開催されました。
これはアメリカの草の根保守団体「AmericanConservative Union」(ACU)が主催する討論会CPACの日本版です。
香港独立を訴える著名な運動家、陳浩天(アンディ・チャン)氏も参加予定だったのですが、八月二十九日夜、香港から日本に向かう飛行機に乗ろうとして、空港で警察に拘束されたのです。
保釈金を払って解放されましたので、会にビデオメッセージを送ってくれました。
彼が言うには中国共産党はナチスと一緒で、警官隊がデモ隊に対して無制限の逮捕や暴力を振るっているそうです。
古田 
天安門事件とやっていることが一緒ですね。
藤井 
あと、香港警察に対して装備品を売らないでくれと言っていました。
また、経済制裁を香港にかけてほしいと訴えていました。
そうしなければ方向転換できない。
そこまで追い詰められているわけです。
韓国にも少数ながら親日派の人や良識的な学者がいます。
そういう人たちも、日米は韓国に対して厳しい経済制裁をかけるべきだと言っている。
そうしなければ文政権の暴走を止めることができないということです。
古田 
目覚めさせるための処方箋ですよ。
香港に対して、台湾はどう動くだろうか。
藤井 
台湾は事実上の独立国ですから、手を差し伸べることができます。
アメリカも台湾に対して兵器を売ることができる。
でも、香港の民主化運動に兵器を供与することはできない。
一つ言えるのは、香港のデモの影響で、台湾の来年の総統選は蔡英文が勝利する流れになったことは確かです。
古田 
香港は中国のIT系に関する秘密情報が入ってくる場所ですから、中国だって簡単に潰すわけにはいかないでしょう。
藤井 
そうなんですよ。
香港は中国共産党にとって利用価値の高い場所だと思います。
さまざまな状況を踏まえると、軍隊を導入することはないでしょう。
古田 
そう思います。
藤井 
その代わり、香港警察を動かして自由を圧殺する行為をやらせる。
催涙ガスを撒いたり、無制限に殴り掛かったりしていますから。
古田 
警察の連中は香港人ではないのかな。
藤井 
チャイナ本土から新しく香港に流入してきた人たちで構成されている可能性があります。
だから、中国共産党寄りなんですよ。
古田 
あとは刑務所の囚人を連れてくる場合があります。
韓国では全斗煥政権のとき、政治デモを弾圧するために、機動隊ではなく囚人を使って石を投げさせていた。
あのとき現場にいて、あやうく石にぶち当たりそうになりました。
藤井 
ただ、デモが激化し、政治体制が揺らぐような事態に陥ったら、当局は躊躇なく軍隊を投入し、血の弾圧を実行するでしょう。
それが共産党の正体ですから。
古田 
だって、天安門事件だって中国共産党は正当化している。
藤井 
中国共産党は、あの事件があったから、その後の政治的安定が生まれたと主張しています。
彼らの歴史観から言えば成功例なのです。
二~三年我慢していたら、西側の連中がチャイナの経済力を魅力に感じて、経済制裁も解除しましたから。
古田 
中国も韓国と同じで、いまだに「古代脳」です(笑)。
藤井 
ただ前の天安門事件とは様相が異なる面があります。
あの頃のチャイナ経済は高度経済成長に入ろうとしている時期でした。
今回は経済的に落ち目になっている。
しかも、アメリカに強力な反中政権が誕生し、関税をかけられマイナス成長です。
天安門事件のようなことをしたら、チャイナ経済は崩壊する可能性があります。
古田 
でも、習近平だからな。
藤井 
習近平は政治も経済も統制すればいい、と考えている。
ネット規制や武力行使による強権発動となれば、怖いことは何もないーそれが共産党です。
下策中の下策ですけど習近平がその決断をしたら、体制の綻びが生まれるのではないかと期待できます。
古田 
習近平は教養がなく、単細胞ですから、本当にやるかもしれませんよ(笑)。
藤井 
警察隊を動員して大量逮捕し、厳罰化でデモ運動が退潮してきたら、リーダー格の連中を一人ひとり消していくーおそらくこの方法が一番現実的ではないでしょうか。
古田 
突然行方不明になるとか、闇に葬る。
藤井 
共産党が一番得意な方法でもあります。
香港に関心を
古田 
トランプ政権は静観し続けるのかな。
藤井 
アメリカからすると、香港問題はイギリスのマターなのです。
チャイナが一国二制度を約束したのは、香港の人民に対してではなく、イギリスに対してです。
だから、デモ弾圧を糾弾できる資格を持っているのは、イギリス以外にありません。
古田 
でも、先ほど話が出たように、イギリスは中国寄りでしょう。
藤井 
そうです。
さらに政治中枢も麻痺していますから、とても糾弾できる状況ではありません。
アメリカも手が出しにくいのです。
香港の民主派が訴えているのは「とにかく香港に関心を持ってくれ」ということ。
TV中継があれば、強力な鎮圧活動はしにくい。
ところで、今日のチャイナの中で香港のデモ鎮圧はもっとも残酷なことではありません。
古田 
チベットやウイグルはもっと悲惨な目にあっています。
藤井 
しかし、その悲惨な状況を動画や写真として見ることができません。
カメラも記者も入れないから実態が不明です。
古田 
香港は情報がまだ入ってきています。
藤井 
世界の関心が集まっている以上、強権発動をしにくい状況ではあります。
実は今回のデモに対して、私は少々驚いたのです。
そもそも香港人は金儲けだけに興味があって、政治的には無関心だと思っていました。
ところが、そうではなかった。
自由と民主を守る気概を持っていることに感動すら覚えます。
ただ香港の支援方法は難しいと言わざるを得ません。
古田 
「近代脳」の香港人を「古代脳」の中国人が専制支配しようとしている!
藤井 
陳浩天氏は「今は21世紀じゃないか、全体主義的な政権に、仮にも700万人の民主政治の国が潰されていいのか」と憤っていましたが、チャイナは21世紀を生きていません。
古田 
古代の淵に引きずり込まれるようなものですね。
藤井 
全くです。
反乱を起こしたら力で弾圧すればいいということしか知らないのです。
古田 
香港警察の隣に軍隊が並んでいたでしょう。
その映像を見ていたら、秦の始皇帝の兵馬俑を思い出しましたよ。
民主主義を古代からどうやって守っていくのか、その岐路に立っているようです。
アメリカの経済制裁が、中国にどう効いていくか。
藤井 
アメリカはチャイナのハイテクのサプライチェーンに関しては完全に排除していく方針です。
古田 
そのあたりの事情を深田萌絵さんが『5G革命』の真実』(ワック)で言及していますが、実に面白い本でした。
5Gを中国が独占すると大変なことになるから、トランプが矢面に立って戦ってくれていると指摘しています。
藤井 
全くです。
靴や衣料品をチャイナから購入するのは問題ない。
ただ、ITやAIの根幹的な技術の研究・開発・製造に関しては、何とかアメリカ本土に戻したい。
少なくとも友好国の問で生産したいと考えています。
古田 
あそこまで関税をかけられたら、アメリカの大手IT企業だって商売にならないでしょう(笑)。
藤井 
実際に、多くの企業は、チャイナから工場を引き揚げることを表明しています。
GAFA(グーグル・アマゾンーフェイスブック・アップル)は無国籍的企業ですから、本音としてはトランプ嫌い。
チャイナで安く生産できれば良かったのですが、それができなくなりました。
アップルも工場の一部をイスラエルと米本国に移すことにしたのです。
古田 
トランプはその点「先見」が利きますね。
藤井 
「中国製造2025」が実現していたら、アメリカも日本もアウトでした。
古田 
お得意の大ボラ気分でばらしてしまったのだろうか。
じつにトロいよね。
藤井 
だから、習近平は“優秀”なんですよ(一同爆笑)。
鄧小平のような狡知があったら、何も言わず粛々と進め、10年後に結果が出ていたら、恐ろしいところでした。
古田 
韜光養晦(「才能を隠して、内に力を蓄える」という中国の外交・安保の方針)だ。
藤井 
チャイニーズの不思議なところですが、一度自信を持つと妙に傲慢になります。
古田 
中国は近代史をすべて失敗しているからです。
いいところが一つもない。
最近少し良くなってきたから、無茶苦茶傲慢になってしまった。
今までの歴史上の恨み、つらみが溜まっていて、それを吐き出している。
藤井 
共産党が「怨念がある」と教えたんです。

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