原発規制委は猛省せよ――科学的・合理的・迅速な審査こそ国民生活を守る使命である

2019年10月17日発信。
櫻井よしこ氏の産経新聞掲載論文をもとに、関西電力の金品受領問題と日本のエネルギー政策を混同すべきでないこと、原子力規制委員会の審査遅延、IAEAによる厳しい評価、泊原発3号機、柏崎刈羽原発、特定重大事故等対処施設の問題を通じて、科学的・合理的・迅速な原発安全審査の必要性を論じる。

2019-10-17
規制委の使命は原発の安全性を、科学的、合理的、迅速に審査し、稼働させ、電力供給の安定化をはかり、豊かな国民生活の実現に寄与することだ。
以下は昨日の意産経新聞のフロントページに、原発規制委は猛省せよ、と題して掲載された櫻井よしこさんの論文からである。
何度も言及している様に櫻井よしこさんは国民栄誉賞に値する人物であるだけではなく、今を生きる最澄であり、日本の国寶であると言っても過言ではない人である。
菓子箱の底に多額の現金が入っていた。
金貨や米ドル札も手渡された。
関西電力首脳陣が高浜原発の立地する福井県高浜町元助役から億円規模の金品を受領した際の様子である。
いまどきこんなことが行われていたとは驚きだった。
信用失墜の金品授受の背景から、当事案の複雑怪奇さが浮き彫りになる。
金品の返却は、元助役から厳しく叱責されできなかったと関電側は説明する。
そこに恫喝と不条理が横行する社会の深い闇がのぞく。
それでも責任ある企業として、金品を社で一括管理し、供託する道もあったであろう。
それを成し得なかった関電の責任は厳しく問われなければならない。
関電の不祥事を受けて、すでに大幅に遅れている原発再稼働がさらに遅れると懸念する声がある。
だが、関電の金品受領問題と、日本のエネルギー政策の混同は国益を損ねるだけだ。
原発政策に関して日本はいま、世界に類例のない異常で特殊な状況に陥っている。
その主な原因は、更田豊志氏以下、5人で構成する原子力規制委員会(規制委)が専門家集団として世界水準に達しておらず、従って有効に機能していないことだ。
専門家集団として体をなしていないことの具体例は後述するが、原子力に関する国際社会の権威、国際原子力機関(IAEA)の規制委に対する評価は実に厳しい。
彼らは平成28年1月に、上級専門家19人から成るチームを12日間にわたって日本に派遣し、規制委および原子力規制庁の評価を実施した。
約130ページに上る報告書には、規制委のお寒い現状に鑑みて大いなる改善の必要があることなどが率直に記述されている。
規制委は三条委員会として政府も介入できない強い独立性を担保されている。
強い権限にはそれに見合う重い責任がある。
重大な責任を遂行するには優れた人材が必要だ。
IAEAは、しかし、「規制委の人的資源、管理体制、特にその組織文化は初期段階にある」と酷評、「課された任務を遂行するのに能力ある職員を抱えていない」と斬り込んだ。
日本の規制には予見性がない、行き当たりバッタリだとの批判こそピッタリ的を射ている。
この点を更田氏らは深く心に刻むべきだ。
原発の高度な安全文化を促進するために規制委は「意識啓発研修又は意識調査などの具体策導入を検討」せよとまでIAEAに勧告された。
わが国の原子力発電の現場を支配するのは国際社会の第一線では通用しない人々だ。
だが、誰も口をはさめない。
来年、IAEAは先に指摘した問題を規制委がどこまで克服し、改善したかを調査に来る。
規制委はこの間ほとんど改善も解決もしていないために、結果は大変厳しいものにならざるを得ないだろう。
規制委の使命は原発の安全性を、科学的、合理的、迅速に審査し、稼働させ、電力供給の安定化をはかり、豊かな国民生活の実現に寄与することだ。
しかし、現在、審査が長引いている原発のどのケースを見ても科学的に合理的に迅速に、審査がなされている事例はない。
代表例がわが国最新の加圧水型軽水炉、北海道電力泊3号機である。
地質・地盤調査で3年前に「おおむね了」とされたにもかかわらず、敷地内の断層が将来動く可能性を否定する証拠となる火山灰の量が少ないとされ、審査は振り出しに戻った。
この泊3号機が稼働していれば、昨年9月の北海道胆振東部地震の際も大停電は発生せず、多大な経済的損害も回避できていたはずだ。
東京電力柏崎刈羽原発も同様だ。
刈羽原発6、7号機は平成29年12月末に適合審査に合格したが、いわゆる「後出しじゃんけん」で、敷地内液状化の可能性を指摘された。
その対策は膨大で現段階で目途は立っていない。
原子力基本法第2条2項は、安全の確保は「確立された国際的な基準を踏まえて行う」と明記している。
ところが、活断層の判断やその合理的な対策、液状化に対する「確立された国際的な基準」はまだ存在していない。
そうした中、日本地質学会元会長の石渡明規制委員が主導する審査では、最悪40万年前に遡って断層が動かないことを証明することが求められる。
活断層審査は石渡氏が主導するために多くの事案がここで滞っている。
現在運転中の原発9基のうち、九州電力の川内1、2号機、関西電力の高浜3、4号機と大飯3、4号機、四国電力の伊方3号機などが「特定重大事故等対処施設(特重施設)」の工事遅延で停止させられるのも、安全審査が4年近くもかかる中で、要求事項が次々に追加されるからだ。
これらすべての原発で、地下に原子炉建屋の強度を上回る大型施設と巨大水源を設置せよと規制委が指示し、その工事が規制委が主張する5年以内の期限に閧に合わなくなった。
わが国の行政手続法には審査条件を明示すること、途中で変えないこと、速やかに審査することが明記されている。
規制委の所業は明らかにそれに抵触する。
更田氏は、今年4月24日、原子力規制委員会で「締め切りがきたからといってリスクが増大するわけではない」「プラントの状態は私たちが求める安全レベルに達している」と述べながら、工事の遅れで期限をすぎれば原発は停止させることを決定した。
電力会社と十分な意思疎通もはからず、安全な原発を止めるのである。
まさに三条委員会の権力を使った恫喝ではないか。
冒頭の助役とどこが違うのか。
更田氏以下規制委に猛省を促すものだ。

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