中国は国際社会の報道を監視している――櫻井よしこ氏が示す「ザーサイ指数」と中国統計の虚構
2020年3月7日、前章に続き、櫻井よしこ氏の週刊新潮コラムを紹介する。武漢ウィルスの感染拡大を中国当局が隠蔽しているとの報道に対し、中国メディア「21財経」は即座に反応し、広東省での病院建設中止を報じた。この素早い反応は、中国側が武漢ウィルスに関する国際社会の報道を隅々まで監視していることを示している。また、矢板明夫氏が語る「ザーサイ指数」は、中国統計がいかに信用し難いものであるかを端的に示している。
2020-03-07
少なくともこの素早い反応から読みとれるのは、中国側が武漢ウイルスに関する国際社会の報道を隅々まで監視しているという点だ。
以下は前章の続きである。
「ザーサイ指数」
武漢ウィルスの感染拡大を中国当局が隠蔽していると報じた中で、
私は、感染が広東省にも広がっていること、
そのひとつの証左として、病院とはいえない鉄格子つきのプレハブ収容施設が突貫工事で建設されていることを報じた。
同じ内容の情報を私は2月23日、フジテレビの朝の番組「日曜報道 THE PRIME」でも語ったのだが、
私の引用した中国メディアの「21財経」がすぐに「追加取材」して、
病院建設は中止されていると報じたのである。
広東省での感染拡大を否定しようという意図だろうか。
少なくともこの素早い反応から読みとれるのは、
中国側が武漢ウイルスに関する国際社会の報道を隅々まで監視しているという点だ。
「独立系メディア」と思われていた「21財経」も、
当然といえば当然だが、
中国政府の手の内にあることを忘れてはいけないということだ。
中国で育ち、中国社会を知悉している産経新聞外信部次長の矢板明夫氏が、
中国情報の危うさに関して、
「ザーサイ指数」
という言葉を教えてくれた。
ざっと以下のような意味だ。
中国の統計が信じ難いことは、
中国経済の責任者である李克強首相も公に認めてきた。
地方政府など下から上がってくる数字は全て、
中央政府の喜ぶ傾向を示しており、
そんなものを信用していたのでは判断を誤る。
そこで李氏らは、農民工とザーサイの関係に目をつけた。
社会の底辺で働く農民工の増加はすなわち、
実体経済が盛んであることを意味する。
農民工の増減をどのように調べるか。
彼らは貧しく、多くが男性で、
食事は、たっぷりのザーサイをおかずにした山盛りのご飯だ。
よって、ザーサイの売り上げ増加は、
農民工の増加、
生産活動の活発化、
景気の拡大を意味するとの理屈で、
中国政府はザーサイの売り上げを参考にするようになった。
しかし、そこから先がいかにも中国らしいと矢板氏は笑う。
「数年前にザーサイ指数について報じられると、地方政府がザーサイ売り上げの水増し報告を始めたのです。結局旧の木阿弥です」
中国経済の実態を一番正確に示すのが、
①中長期貸出残高、
②電力消費量、
③鉄道貨物輸送量、
の対前年比伸び率を一定の方式で組み合わせて計算された数字だと言われている。
この点も矢板氏は疑問視する。
「地方政府は何とか認めてもらおうと、中央政府の聞きたい数字を作成します。基礎的統計でさえも、そこに中央政府が注目していると判断すれば、地方政府は当然、手を加えます」
この項続く。