自国の船は自分で守れ――岡本行夫氏が問う、日本の安全保障と不作為国家からの脱却

産経新聞は、外交評論家・岡本行夫氏が中東への自衛隊艦船派遣を求めた寄稿を再掲した。岡本氏は、ホルムズ海峡を通る日本関連船舶を日本自身が守るべきであり、他国にリスクを押しつけてはならないと訴える。湾岸戦争、インド洋での給油活動、民主党政権による補給艦撤収を振り返り、日本が「カネで済ませる」国から、自国民と自国船を自ら守る国へ脱却できるかを問う。

2020-05-09

これは高く評価されていたが、民主党政権は各国の継続希望を押し切って2010年に補給艦を撤収し、代わりにアフガニスタンの警察官の給料など5千億円を差し出す道を選んだ。

産経新聞は、今、日本のみならず、世界においても最もまともな新聞である。
購読者の人たちは、今朝の産経新聞を読んで、私の評の正しさを痛感したはずである。
見出し以外の文中強調は私。

自国の船は自分で守れ。

4月24日に亡くなった外交評論家の岡本行夫氏は、厳しい安全保障環境を踏まえた日本のあるべき姿について、鋭い論考を重ねた。
昨年7月28日付産経新聞朝刊に掲載した、中東へ自衛隊艦船の派遣を求める寄稿を再掲する。
23面に関連記事。

ペルシャ湾が緊迫している。
もともとはトランプ米大統領が政治的に作り出したイランとの緊張が発端だ。
迷惑な話だが、現実に民間船舶6隻が何者かに襲われる事態となっている。
襲撃者は不明のままだが、安倍晋三首相の和平仲介気運などを吹き飛ばし、米国とイランの武力衝突を望む人々の仕業だろう。

トランプ大統領は、各国はホルムズ海峡を通る船舶を自分で守れとツイートし、米国は「有志国連合」を提案している。
具体的な中身は不明だし、欧州の足並みもそろわない。
しかし、仮にそのような構想が動き出すときに、日本はどうするか。
いよいよ安倍外交の正念場である。

答えるべきは、同盟国として米国に協力するかどうか、ではない。
自国の船を自分で守るのか。
それとも、リスクを他国に押しつけて、自分は圏外に立つのか。
そういう選択である。

海洋の安全確保について、日本はこれまでリスクは負担せずに、カネで済ませてきた。
1987年、イラン・イラク戦争の際には、湾内の民間船舶を護衛する多国籍艦隊が組織された。
日本はペルシャ湾の最大利用国であったが、米国の参加要請を断り、電波灯台の設置で勘弁してもらった。

それで済むはずもなく、日本は翌年に特別協定をもって多額の在日米軍経費の増額を行い、今日に至っている。
1990年、湾岸戦争に際して艦船も航空機も人も出さなかった日本が、130億ドル、1兆7千億円の巨費を米国に支払った例は有名だ。

しかし、小泉内閣の下では、カネによる対応ではなく、アフガニスタンのタリバン封じ込めを支援して、海上自衛隊の補給艦をインド洋に派遣し、各国海軍に給油活動を行った。
これは高く評価されていたが、民主党政権は各国の継続希望を押し切って、2010年に補給艦を撤収し、代わりにアフガニスタンの警察官の給料など5千億円を差し出す道を選んだ。

このように巨額の税金を使って切り抜けてきた日本だが、今回はカネで済ませられる話ではない。
有志国連合といっても、目的は自国船舶保護である。
個別的自衛権の話だ。

野党は、
「武力衝突に発展していく可能性が高い」
と反対している。
日本の船を守って相手から攻撃されれば、防戦しなければならないので参加するな、というわけだ。
要するに、個別的自衛権も正当防衛も悪だという議論である。

この人たちに致命的に欠落しているのは、
「日本船防護のリスクは、日本が引き受けなければ他国が背負わされる」
という事実だ。
韓国まで含めた多くの関係国が自国船を守ることになっても、日本だけは、われ関せずと他国にリスクを押しつけるのか。

日本船警護は、自衛隊法の「海上警備行動」として法律上すでに想定されている。
日本船と一緒にいる外国船が襲われた場合には、武力行使に至らない方法で救ってやれるだろう。
7月10日、イギリス護衛艦「モントローズ」は、発砲することなく襲撃艇から民間タンカーを守った。
必要なのは、明確な政治意志である。

イランへの説明は必要だ。
同国は、これまでのタンカー攻撃への関与を強く否定しているのだから。
「テロリストからペルシャ湾の安全を守ることは、イランの利益にも資する」
と繰り返せばよい。
現に、日本関連タンカーが安倍・ハメネイ会談の当日に攻撃されたのだから、日本船警護にイランが文句をつける理由はない。

要は、自国の船を自国で守るという当たり前のことを決断し、1987年以来の不作為国家から脱却する意思があるかどうかだ。
今度こそ、自分の力で自国民を守るという課題に、正面から向き合うときだろう。

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