ドイツで毎年放送される『南京大虐殺』番組とジョン・ラーベ神話―日本では報じられない現実
ドイツでは毎年12月、ジョン・ラーベの記録を原作とした「南京大虐殺」のドラマが放送され、日本に対する否定的な印象が繰り返し形成されている。本稿では、川口マーン恵美氏の指摘をもとに、日本のメディアが報じない現実と、高山正之氏『変見自在』が論じる歴史報道や情報戦について考察する。
2020年6月11日
毎年12月になると、ドイツのテレビ局はジョン・ラーベの記録を原作とした「南京大虐殺」のドラマを放送している。そのたびに日本に対する印象は悪化し、反日感情が醸成されるという現実がある。
私は、川口マーン恵美さんが月刊『Hanada』に寄稿した「独大衆紙が習近平に宣戦布告」を読んで初めてこの事実を知った。
しかし、日本のメディアは、この看過できない現実をこれまで一度も報じてこなかった。
それどころか、朝日新聞やこれに同調するいわゆる文化人、さらにはNHKをはじめとするテレビ局までもが、事あるごとに「ドイツに学べ」と繰り返してきた。
こうした日本の報道姿勢は、中国や韓国による対日宣伝に利用される結果を招いてきたと言わざるを得ない。
韓国は長年にわたり反日教育を続け、中国も歴史問題を外交カードとして利用してきた。
その中で、吉田清治の慰安婦証言や南京事件をめぐる報道は、世界に向けた日本批判の材料として使われてきた。
朝からこのようなことを書かなければならないのは実に不愉快だが、事実として記録しておく必要がある。
そこで今回は、2019年3月15日に「朝日新聞で言えば南京大虐殺の嘘を創った一人で支那軍に武器調達をしていたシーメンス社のジョン・ラーベを『普通の会社員』と書いた」と題して掲載した内容を、ドイツ国民にも知っていただきたいと思い再掲する。
ジョン・ラーベがどのような人物だったのかは、本来ドイツ国民であればよく知っているはずである。
彼はナチ党員であり、当時ドイツ最大級の軍需企業だったシーメンス社の中国駐在員でもあった。
第一次世界大戦敗戦後、ドイツは武器輸出を禁止されていたが、その制限を破り、国民党政府へ軍事関連物資を供給していた人物がジョン・ラーベである。
読書家の友人から薦められ、新潮文庫『変見自在 ロシアとアメリカ、どちらが本当の悪(ワル)か』を読んでいる。
これは高山正之氏の著作の中でも、とりわけ優れた一冊だと思う。
戦前・戦中・戦後を通じて積み重ねられてきた数々の虚報を検証し、世界の近現代史を膨大な資料で読み解く姿勢には驚かされる。
私は、高山氏こそ世界有数の歴史検証者であり、その知識と取材力はノーベル賞に値するとさえ思っている。
もちろん本人はそのような栄誉を望むことなく、生涯をかけて歴史の虚偽を明らかにし、日本と世界へ事実を伝え続けている。
本書の冒頭には、「平気でウソを書く新聞に騙されるな」と題する序文が掲載されている。
日清戦争は明治27年7月に始まった。
日本軍はソウル南方へ上陸し、中国軍を撃退しながら平壌へ進軍した。
高山氏は、この戦争で日本軍が中国軍の残虐な行為に衝撃を受けたと記している。
捕虜に対する扱いは極めて過酷であり、そのため山縣有朋は、生け捕りになれば惨たらしい仕打ちを受けるとして、自決も辞さないよう訓示したという。
また、旅順攻略後の様子についても紹介されている。
日本軍が旅順要塞を攻略した後、市街地では残敵掃討が短期間で終了した。
ところが、その約2週間後、ニューヨーク・ワールド紙にジェームズ・クリルマン記者による「日本軍大虐殺」の記事が掲載された。
記事では、日本軍が女性や子どもを追い回し、虐殺したと描写され、「旅順六万人虐殺説」の原点となった。
日本政府は、この報道に強く驚いた。
当時のニューヨーク・ワールド紙は、ジョセフ・ピューリッツァーが経営する、いわゆるイエロージャーナリズムの代表格だった。
UFOや宇宙人に関するセンセーショナルな記事まで掲載する新聞だったが、日本軍の残虐行為を描いた記事は、あまりにも生々しく、まるで現場を見たかのような描写だった。
しかし、この報道は後にベルギー駐日公使アルベール・ダネタンがフランスの観戦武官らの証言を集め、日本軍の潔白を確認したことで、クリルマンの記事が創作だったことが明らかになった。
では、あの迫真の描写はどこから生まれたのか。
高山氏は、ハワード・ジン著『若者のための米国史』に記されたサンドクリーク虐殺との共通点を指摘している。
コロラド州サンドクリークで起きたシャイアン族虐殺では、夜明け前、男たちが不在となった集落を約800人の騎兵隊が襲撃し、女性や子どもを容赦なく殺害した。
逃げる母子を撃ち、白旗を振る幼い少女まで射殺し、妊婦の腹を裂いたという証言まで残されている。
高山氏は、クリルマンの記事に見られる描写は、この事件と酷似していると述べている。
一方、日本軍は中国軍による残虐行為に対して報復を行わず、降伏した兵士にも危害を加えなかったとしている。
クリルマンは、日本人を「非白人・非キリスト教徒の野蛮人」と描こうとしたが、その残虐な描写は、結果として欧米社会自身が歴史の中で行ってきた行為を投影したものではなかったかと高山氏は論じている。
高山氏はさらに、故意に作られる虚報は現代でも変わっていないと指摘する。
漫画『美味しんぼ』で福島の放射線被害を描いた雁屋哲氏や、それを擁護した編集部の姿勢を例に挙げ、「事実と異なる前提から議論を始めても、本当の議論にはならない」と批判している。
また、沖縄返還をめぐる日米密約問題についても取り上げている。
元毎日新聞記者・西山太吉氏は、外務省女性事務官との関係から入手した情報を新聞では報じず、政治家へ渡した。
高山氏は、その行動は報道ではなく政治活動だったと指摘する。
ところが新聞各紙は、西山氏を「密約を暴いた記者」と報じた。
高山氏は、本当に新聞で報じていれば事件そのものは起こらなかったはずだと述べている。
さらに朝日新聞についても、南京事件をめぐるジョン・ラーベを「普通の会社員」と紹介したことや、「憲法9条にノーベル平和賞を」と訴えた活動家を「普通の主婦」と表現したことを例に挙げ、読者に誤った印象を与える報道手法を批判している。
高山氏は、中国やアメリカだけではなく、新聞もまた意図的な虚報を織り交ぜて世論を誘導していると主張する。
そして、本書がそのような巧妙な虚報を見抜く一助となれば幸いであると結んでいる。
2014年夏
高山正之