見出しと写真が事実を逆転させるとき――軍艦島報道に見る朝日新聞の印象操作
2020年7月23日発信。
月刊誌『Hanada』に掲載された産業遺産国民会議専務理事・加藤康子氏の論文を取り上げた前章の続編。
高島炭鉱のコレラ被害と感染症対策を中心にした朝日新聞の記事が、軍艦島の写真と見出しによって本文とは異なる印象を読者に与える構成になっていたとの加藤氏の指摘を紹介し、見出し、写真、記事本文の関係と報道の印象操作を問う。
2020-07-23
本稿は2020年7月23日に発信した章であり、前章で紹介した月刊誌『Hanada』掲載の産業遺産国民会議専務理事・加藤康子氏の論文からの引用を続けたものである。
ここで焦点となるのは、2020年5月20日付朝日新聞福岡県版の記事と、そのデジタル版における見出しと写真の使われ方である。
引用部分では、高島炭鉱で1885年に発生したコレラと、その経験を踏まえた感染症対策、その後の軍艦島の労働環境整備について説明した記事でありながら、紙面およびデジタル版で軍艦島の写真を前面に使用したことについて、加藤氏が「記事の内容と正反対の印象」を生みかねないと批判している。
以下、日本語原文は変更せず、そのまま掲載する。
本文
2020-07-23
この見出しと写真だけ見た人は「ああ、軍艦島でそんなひどいことが??」と思う…記事の内容と正反対の印象を、見出しと写真で読者に植え付けようとしている…あきらかに印象操作
以下は前章の続きである。
朝日の姑息な印象操作
最近も、朝日の報道でひどいものがありました。
「炭鉱の島、コレラの教訓 4密で多数の死者 近代化の膿出した」(5月20日付)と題する福岡県版の記事です。
建築家の中村享一氏へのインタビュー記事で、高島炭鉱ではコレラが蔓延し、80人を超える死者が出て、軍艦島ではその教訓が活かされたという内容です。
〈1885年、島内(高島=筆者注)でコレラの集団感染が発生しました。
当時は3000人弱が働いていたとみられますが、炭鉱幹部の日誌によると一夏で132人が発病し、80人超が死亡。
年末から翌春には天然痘で99人が犠牲になり、遺体を「酒樽に入れて焼き捨てた」とする資料も見られます。
右肩上がりだった出炭量が減る事態になり、三菱は感染症対策に乗り出しました。
便所を清潔にし、住居に隔離部屋をつくり、石灰をまいて消毒し、清潔な水を得るため蒸留水製造機を設置しました〉〈能率的に生産するため、労働環境を整える。
1890年に三菱の手に渡った軍艦島もそうした考えに沿って開発されました。
高層アパートの整備もその延長線上にあります。
感染症が近代化の膿を出したのです〉
この記事、紙面のつくり方が非常に狡猾で、内容は高島のことが中心なのに、紙面では軍艦島の写真を使っています。
これでは、見出しと写真だけ見た人は、「軍艦島の労働環境は劣悪で、死者がたくさん出たんだな」と思ってしまいます。
恐ろしいのが、朝日デジタル版ではさらにミスリードするように仕掛けており、「『4密』の炭鉱の島、遺体は酒樽で…コレラ大流行の教訓」と夕イトルをつけ、軍艦島の写真をトップに大きく使っている。
この記事は有料会員でないと全文が読めなくなっており、この見出しと写真だけ見た人は「ああ、軍艦島でそんなひどいことが??」と思うでしょう。
記事の内容と正反対の印象を、見出しと写真で読者に植え付けようとしているのです。
あきらかに印象操作でしょう。
私はこの記事をハーバードのアンドリュー・ゴードン教授よりご提供いただいたのですが、教授も最初、この記事が端島の話だというご印象をお持ちになっていました。
この稿続く。