必要なのは、なりすましアカウントや偽動画など、典型的な手口を事前に知らせ、受け手が違和感に気づけるようにすることだ

中国やロシアの認知戦は、AIを利用して不特定多数を狙う段階から、一人一人の関心や心理に合わせて働きかける段階へ移行している。
なりすましアカウント、偽のデジタルインフルエンサー、改ざん動画、AIペルソナなどの典型的な手口を事前に知らせ、受け手が違和感に気づけるようにすることが必要である。
プラットフォーム企業には、偽の人格と偽情報を迅速に検知し、排除する重大な責任がある。


私は、この論文を、私の旧筆名「芥川賢治」を名乗っているなりすましアカウントの運営者と、繰り返しの通報にもかかわらず、それを放置し続けているMeta社に向けて再発信する。
なりすましアカウントは、単なる悪ふざけでも、本人だけが我慢すれば済む個人的な迷惑行為でもない。
他人の氏名、写真、経歴、文章などを利用して偽の人格を作り出し、読者、友人、知人、社会の認識を誤らせる情報操作の手段である。
当該なりすましがAIによって作られたものか、人間が手作業で運営しているものかは、本質的な問題ではない。
問題は、実在する人物を装う偽の人格を作り、その信用と社会的関係を盗用しながら、受け手の判断を操作する手口そのものにある。
昨日の産経新聞「オピニオン」欄に掲載されたブレット・ゴールドスタイン氏の論文は、なりすましアカウント、偽動画、偽のインフルエンサー、AIペルソナが、すでに国家による認知戦の現実的な手段になっていることを指摘している。
同時に、編集委員の佐藤賢氏は、最も重要な対策を次の一文で示している。
必要なのは、なりすましアカウントや偽動画など、典型的な手口を事前に知らせ、受け手が違和感に気づけるようにすることだ。
私がMeta社に長年求めてきたことも、まさにこの一点である。
なりすましを被害者個人の問題として放置するのではなく、偽の人格を使った情報操作として調査し、削除し、再発を防止しなければならない。
以下は、昨日、2026年8月1日付の産経新聞「オピニオン」欄に掲載された論文からである。
中国がAI認知戦、個人を標的に
ブレット・ゴールドスタイン氏
米バンダービルト大学教授
「認知戦」と呼ばれる影響工作の手法が大きな進化を遂げている。
手作業の時代から、人工知能(AI)によって強化され、合理化され、推進される時代に変わりつつある。
SNSを活用した影響工作自体は目新しいものではない。
米国では2016年と20年の大統領選挙において、ロシアが世論の二極化を目的とした作戦を展開した。
中国も米国の世論をあおるために活動している。
24年の大統領選挙では米国人のふりをして、意見が激しく対立するような問題や米国の外交政策について社会的な亀裂を深めようとした。
だが、こうした手法は、現在登場しつつあるテクノロジーを駆使したやり方に比べれば、原始的なものにすぎない。
25年8月、バンダービルト大学の研究パートナーであるブレッド・ベンソン氏と私は、GoLaxyという中国企業に関する研究結果を発表した。
同社は日本、香港、台湾を標的とした影響工作のためのAIツールを開発しており、東南アジアや米国も追加の標的にしていた。
同社はSNS全体から公開情報を収集し、可能な限り人間らしく見えるよう訓練された数百の「ペルソナ(仮想の人物像)」を開発し、人々の行動を変えるために設計されたメッセージを発信している。
同社の資料によると、中国政府と情報機関の委託を受けてこれを行っていた。
台湾ではすでにこうしたAIペルソナの展開が見られており、現在、米国や日本でもその基礎的な段階が観察されている。
これらは、個人レベルでのAIを利用した影響工作がすでに行われていることを示す最初の兆候であり、状況はさらに悪化するだろう。
AIは外国による影響工作を集団レベルから個人レベルへと移行させ、かつては不可能だった規模と巧妙さを実現する。
AIペルソナは、ある人にとっては著名人であり、別の人にとっては同じ趣味を持つ仲間や、面白く刺激的なインフルエンサーかもしれない。
彼らは接近し、親しげに振る舞うが、国民国家の指示に従って行動し、対象となる人を彼らの意図する方向に導くような考えや思想を植え付けていく。
AIや最先端のモデルは、今後も進化を続けるべきだ。
しかし、AIに伴う闇にも正直に向き合わなければならない。
偽のデジタルインフルエンサー、改ざんされた動画、選挙への攻撃――。
これらはすでに、われわれの日常生活に蔓延している。
われわれが行動を起こさなければ、オンラインで関わるあらゆるものや人を信頼することは、ますます困難になるだろう。
こうしたペルソナを見抜き、その潜在的な影響を軽減するためには、すべての人に果たすべき役割がある。
個人は、こうしたツールが存在することを知る必要がある。
もちろん、個人にできることには限りがある。
学界は協力し、無秩序な世界において合成メッセージを特定する新たな方法を見つけなければならない。
政府や主要なAI研究所は、最も重い責任を負う。
そして、協力なしにその責任を果たすことはできない。
課題は、この技術の進展を遅らせることではなく、全速力でも安全に運用できるようにすることだ。
日本とその同盟国は、AIを活用した影響工作を共通の脅威と位置づけ、サイバー攻撃に対応したのと同じ方法で対応すべきだ。
狙われる日本、備え急げ
中国やロシアの認知戦はAIの進化により、単なる宣伝にとどまらず、個人の関心に合わせて働きかける手法へ移りつつある。
人間のように振る舞う「AIペルソナ」は、友人やインフルエンサーを装って近づき、判断に影響を与えようとする。
日本が標的になっているとの自覚が要る。
「ペルソナに気をつけて」と呼びかけるだけでは不十分だ。
中露の工作は、容易に見抜けるほど単純ではない。
必要なのは、なりすましアカウントや偽動画など、典型的な手口を事前に知らせ、受け手が違和感に気づけるようにすることだ。
政府やAI企業は連携し、偽の発信を検知する技術を高める必要がある。
問われているのは、AIを悪用する影響工作から、民主主義の情報空間を守る備えである。
(編集委員 佐藤賢)

Meta社に求めること

この論文が明らかにしているのは、なりすましアカウントを「単なる個人間の問題」として放置することの危険性である。
なりすましは、第三者に偽の人物像を信じ込ませ、本物の本人についての認識を歪め、その信用、著作、社会的関係を奪う行為である。
Meta社には、私の旧筆名「芥川賢治」を使用するなりすましアカウントについて、本人確認、作成及び運用実態、関連アカウントの有無、写真や文章の盗用状況を直ちに調査するよう求める。
さらに、当該アカウントの削除、同一運営者による再作成の防止、長年にわたって通報を放置してきた理由の説明を求める。
受け手に違和感を持たせるための啓発と、プラットフォームによる迅速な検知及び排除。
この二つが揃わなければ、なりすましによる情報操作を防ぐことはできない。


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