近代主権国家を操縦する者の条件――「正常」と「偉大」を欠く権力者の危険
2011-6-10
近代主権国家を操縦する条件
以下は「日本国民に告ぐ」小室直樹,ワック出版,P114-115からの抜粋である。
それにもう一つ、日本の政治過程とアメリカの政治過程とを比較するうえで重大なことがある。
アメリカにおいて異常で矮小な人物が権力を握っていてはならない
アメリカ人は、かかる人物が権力の座にあることを許さない。
何としてでも引きずり下ろそうとする。
このことである。
この点、どんな異常な人にでも、どんな阿呆にでも、権力を預けても平然としている日本人とは根本的に違う。
アメリカ人は、このことをまた、次のようにも説明する。
「大統領は核兵器の発射ボタンを握っている。少しでも異常の気のある人物に、それを任せられるか」と。
それもある。
が、より本質的には、アメリカ人は近代国家権力というものを、よく理解しているからである。
近代主権国家における権力は絶対である。
前近代的専制国家における権力が、伝統主義的制約を受けているのとは違う。
近代国家の権力は旧約聖書に描かれたリヴァイアサン。
ゴジラよりも恐ろしい怪物である。
その怪物を操縦する者は、まず第一に、正常でなければならない。
精神のバランスを失した異常な人物に政治権力を委ねることは、グデングデンの酔っぱらいに自動車の運転をさせるよりも危険なのである。
次に、偉大でなければならない。
近代主権国家の操縦は、高度の政治力(徳 virtue)を必要とする。
ゆえに、偉大でない人物に政治権力を委ねることは、狼に飛行機の操縦を任せるよりも危険である。