新型肺炎が暴いた習近平体制の限界――櫻井よしこ氏が示す日本の対中大戦略

2020年2月3日発信。
産経新聞に掲載された櫻井よしこ氏の論文を取り上げ、新型コロナウイルスの拡大が中国共産党一党支配の限界、WHOへの中国の影響、エチオピアと中国の特殊な関係、債務のわな、一帯一路、そして日本が取るべき対中戦略を浮き彫りにしたことを論じる。
同時に、政府・与党には中国共産党に対する21世紀の大戦略と緊急事態条項を含む憲法改正が、野党には現実に基づく国民保護の議論が求められていると指摘する。

2020-02-03
中国はエチオピアの存在を存分に利用すべく、一昨年末までの同国の対中債務の利子を帳消しにし、中国企業は総額40億㌦の投資を約束した
以下は今日の産経新聞に、新型肺炎 対中戦略示せ、と題して掲載された、櫻井よしこさんの論文からである。
彼女は最澄が定義した国宝であるだけではなく、今を生きる空海、信長であると言っても過言ではない。
文中強調は私。
習近平体制の限界か。
中国全土と世界20力国以上に拡散した新型コロナウイルスは、中国共産党一党支配は本質的に人間を幸せにしない、中国は国際社会における信頼に足るリーダー国ではあり得ないと世界の人々の心の奥深くに改めて刻み込んだのではないか。
その認識は国際政治の潮流に大きな変化をもたらさずにはおかないだろう。
この局面で、わが国の与野党双方が重要な課題を突きつけられている。
外交・安全保障に直接の責任を負う政府および与党は、新型ウイルス問題がえぐり出した一種絶望的な体質の中国共産党に対する21世紀の日本の大戦略を描いてみせなければならない。
また、国民の命を守るために緊急事態条項を設けるべく、憲法改正を急がなければならない。
野党は課題に優先度をつけ、国民の生命・安全の保持に現実的に取り組むことが求められている。
中国共産党も習近平国家主席も、明らかに17年前の重症急性呼吸器症候群(SARS)問題から学んでいない。
当時、情報隠蔽を世界から厳しく非難されたが、今回も同じだ。
専制独裁政権は反省せず、またもや失敗したのだ。
世界保健機関(WHO)は中国の強い影響力を受けて、1月22~23日の会議で「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」も宣言せず、当該ウイルスには人から人への感染は認められないなどの誤った情報まで出した。
同時進行で、中国政府は発生源の都市、武漢封鎖を1月23日午前2時すぎに通知したがすでに500万人が武漢を離れていた。
感染が最初に報じられた昨年12月8日以来、中国本土の感染者数は1万1860人、死者は259人に拡大したと、中国共産党機関紙「人民日報」が2月2日付で報じた。
だが、その後感染者は1万4千人以上となり、死者も300人を超え、大流行の様相を見せている。
習氏と中国共産党は決して自らの失敗を認めようとしないが、そんな身勝手な一党独裁政権の思惑はウイルスには通用しないのである。
にもかかわらず、WHO事務局長のテドロス氏は1月30日、ようやく「緊急事態」を宣言し、こう述べた。
「中国国外の感染者数が少ないことについて、中国に感謝しなければならない」
中国マネーの効用だろう。
自然を尊び畏怖する人々や国々は謙虚に恐れるが、習氏ら中国共産党の指導膕は異なる。
彼らの最高の指導者は天でも自然でも神でもない。
彼ら自身だ。
中国共産党が君臨し、そびえ立つ。
それが「人類運命共同体」の幸福の条件だと考える。
だからこそ、懲りない隠蔽体質で国内世論を誤導する。
マネー作戦で中華圈を確立しようとする。
テドロス氏の祖国、エチオピアはアフリカ連合や国連アフリカ経済委員会の本部を擁し、アフリカ外交の中心地のひとつだ。
中国はエチオピアの存在を存分に利用すべく、一昨年末までの同国の対中債務の利子を帳消しにし、中国企業は総額40億㌦の投資を約束した。
中国政府は16力所の工業団地への送配電網整備費として18億㌦を投じると発表し、エチオピアの首都とアデン湾に面する要衝の地ジブチを結ぶ鉄道は中国の全面的援助で開通済みだ。
中国の「一帯一路」政策を受け入れたエチオピアは名目国内総生産(GDP)約800億㌦、同GDP約14兆㌦の中国の掌の中で債務のわなに陥っている。
だが、「債務のわな戦略」も新型ウイルス問題が経済に及ぼす負の影響でさらに行き詰まるのではないか。
それ以前に、世界は中国が弱小国や弱小勢力にどれほど無慈悲に振る舞うかを、ウイグル、香港、台湾の事例から知ってしまった。
債務のわなに落とし込んだ国の繁栄も、その国の国民の幸せも、中国は考えていない。
自国の民の健康や幸せにさえ十分目配りしてこなかった。
そんな政権が持つはずはないだろう。
尋常ならざる危機に習近平政権は直面している。
この状況下で、ひと月後に迫った全国人民代表大会(全人代)を開催できるのか。
米中貿易協議、日中外交など、まともに展開できるのか。
日本は習体制の可能性と限界をどこに見てとるのか。
対中政策の展望を政府は国民に示すべきときだ。
他方野党は、まず目の前の新型ウイルスの危機に対処するために現実に基づいた議論にまともに参加する責任がある。
政府・与党の足らざるところを的確に指摘し、万全な対策につなげていかずして、何のための野党か。
にもかかわらず、国民民主党や日本維新の会を除く野党は一体、何なのか。
1月29日の参院予算委員会で立憲民主党の蓮舫副代表は質問時間全てを「桜を見る会」に費やした。
中国に残された日本国民のことなど念頭にないのか。
国民の反発を受けて、野党はようやくウイルス問題を議論し始めたが、政府の初動を「後手後手だ」などと非難するだけでは無意味だろう。
立憲民主党こそ、いち早くウイルス問題でただすべきであったろうに。
「桜」ばかりただしておいて政府を非難する資格があるとも思えない。
武漢市を含む湖北省にはまだ帰国できていない邦人がいる。
その人々を一刻も早く日本に連れてこられるよう、真剣に取り組め。
航空自衛隊の輸送機は空飛ぶ集中医療室、機動医療装備室を搭載し、重症患者を運ぶ能力がある。
中国の人民解放軍が拒否した結果、飛べていないが、日本国民搬送のために、自衛隊機の受け入れを、政府・与党とともに中国政府に要請するのが野党の責任でもあろう。
まず自国民を守り、中国にも救援の手を差しのべる。
さらに友邦台湾のWHO加盟にも汗をかく。
そうした前向きの議論を野党主導で展開してみせよ。

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