中国共産党の情報戦とアメリカの大誤算――天安門事件、尖閣諸島、そして「中国は経済成長すれば民主化する」という幻想
岩田温氏と佐々木類氏の対談の続編。
中国共産党の情報統制と情報戦、1992年の天皇訪中、尖閣諸島をめぐる中国の行動、そして「経済成長すれば中国は自由化・民主化する」というアメリカの対中政策の根本的な誤算を論じる。
2020年8月6日
以下は前章の続きである。
前章では、WHOをはじめとする国際機関への中国の影響力と、新型コロナウイルスをめぐる情報統制、責任転嫁について、政治学者・岩田温氏と産経新聞論説副委員長・佐々木類氏の対談を紹介した。
本章ではさらに、中国共産党の情報戦、日本の対中政策、尖閣諸島、そして長年にわたってアメリカの対中政策を支配してきた「経済発展すれば中国も民主化する」という幻想へと論点が進む。
【引用】
【アメリカの大誤算】
岩田
ここまで徹底されると、不思議な清々しさすら覚えます。
佐々木
報道官の場合、中国共産党の不利な情報を少しでも伝えたら、それこそ一族郎党が罰せられる可能性があります。
自分たちの身を守るためには、なり振り構いません。
岩田
日本人は「正々堂々」を好みますが、中国的なやり方のほうが国際社会では常識と言えます。
日本人も倣うべき点はありますが、一方で、日本社会全体がこの種の中国人のように振る舞う社会となったら、殺伐とした社会になるだろうなとも思います。
佐々木
確かにそうですけど、中国は情報戦が巧みですからね。
騙されてはいけません。
しかも天安門事件すらなかったことにする国です。
日本政府は1992年、当時の天皇陛下を政治利用する形で訪中させ、経済制裁を加えていた国際社会による中国包囲網に穴をあけてしまった。
岩田
その見返りが尖閣諸島への侵略行為です。
佐々木
中国公船と言いつつ、人民解放軍の傘下にあります。
接続水域への侵入も、まさに軍事行動の一環です。
恩を仇で返すとは、まさにこのことでしょう。
岩田
しかも習近平を国賓招待せよと言いながらも、尖閣諸島への挑発を繰り返していました。
佐々木
豚コレラの蔓延だって、日本は大きな被害を受けています。
政府開発援助(ODA)で投資した3兆6千億円分を返してほしいくらいですよ。
新型コロナウイルス騒動が、多くの日本人にとって、「チャイナリスク」を深く認識する大きなきっかけになると思います。
岩田
アメリカも中国に騙され続けてきたと言えます。
中国を信じ続けてきた大きな理由の一つに、経済成長を遂げたならば、政治的自由を与えるようになり、普通の国家になるだろうという幻想がありました。
こういった楽観論のもとに、中国の増長を看過してきた。
でも、それは思い込みだったことが分かったのです。
アメリカ人からしたら、「自由・平等・民主主義」こそ最高の政治的理念であり、全世界はそこへ向かっていくと信じています。
その最も大きな成功体験が日本だった。
日本はかつて全体主義国家でありながら、アメリカの力で変貌を遂げたと妄想していた。
佐々木
それを中国にも適用できると思った。
岩田
それが大誤算でした。
そもそも日本は明治維新や大正デモクラシーを経ており、政治体制にしても国会が存在し、言論の自由もありました。
アメリカの恩恵によって民主主義国家が実現されたわけではありません。
でも、アメリカ人は日本を成功体験とし、イラクやリビアでも同じようなことを繰り返しています。
佐々木
伝統的な部族が支配する国家で、民主主義が実現できると本気で信じていた。
岩田
ところが、アメリカの風向きが最近、変化したように思います。
共和党・民主党を見ていると、中国に対して厳しい評価を下しています。
チベット・ウイグルに対する残虐性が明らかになったことも、大きいかもしれませんが。
【引用終わり】
この稿、続く。