リニア中央新幹線は国家の重要インフラである――環境保全と早期開業を両立させる責任
リニア中央新幹線は、東京、名古屋、大阪の三大都市圏を結ぶ新たな動脈であると同時に、地震や台風によって東海道新幹線が被災した際の代替路線でもある。
静岡県内の南アルプストンネル工事をめぐる環境問題について、環境保全、地域振興、補償、早期開業を両立させる現実的な協議の必要性を論じる。
2020年7月14日
以下は、「反対だけが知事の仕事か」と題して、先日掲載された産経新聞の社説からである。
JR東海によるリニア中央新幹線の建設工事が遅れ、令和9年、すなわち2027年に予定されていた東京・品川―名古屋間の開業時期が先送りされる見通しとなった。
静岡県内での工事が環境に与える影響を懸念する川勝平太知事と、早期着工を求める金子慎JR東海社長のトップ会談は不調に終わった。
静岡県は7月3日、JR東海に対し、「工事の着手は認められない」と文書で正式に通知した。
【冒頭引用】
地震や台風などによる東海道新幹線の被災に備えた代替路線としての役割も重要だ。
そうした重要インフラの開業が遅れる事態は、国にとっても影響が大きい。
【本文】
リニア中央新幹線は、東京、名古屋、大阪の三大都市圏を結ぶ新たな動脈と位置付けられている。
地震や台風などによって東海道新幹線が被災した場合に備える、代替路線としての役割も重要である。
そのような重要インフラの開業が遅れる事態は、国にとっても影響が大きい。
両者の協議が膠着状態に陥っている以上、政府やJR東海は、環境保全と早期開業を両立させるための妥協策を提示すべきである。
川勝氏も、大局的な観点から、早期開業に向けた協議に応じてもらいたい。
会談の中で金子氏は、静岡県内における準備工事に着手したいと要請したが、川勝氏はこれを受け入れなかった。
文書による「拒否回答」を受け、JR東海はリニア中央新幹線の開業時期を再検討する。
協議の焦点となっているのは、南アルプスを貫く地下トンネル工事である。
この工事によって大井川の流量が減少し、下流域に影響を与える恐れがある。
JR東海は環境への影響を最小限に抑えるとしているが、川勝氏は納得しておらず、工事の認可を見送ったままである。
むろん、環境の保全は重要である。
国土交通省が立ち上げた有識者会議では、大井川の流量に対する工事の影響が検証されている。
この検証作業を急がなければならない。
JR東海は、環境への影響を軽減するための具体的な対策を示す必要がある。
リニア中央新幹線は、静岡県内に新駅が建設されないため、静岡県にとって直接的な経済的メリットは少ない。
その事情も無視することはできない。
JR東海には、環境保全や地域振興の名目で地元に一定の補償を打ち出すなど、建設への協力を求めるための現実的な対応が必要であろう。
品川―名古屋間では、約5兆5千億円の総工費が見込まれている。
開業の遅れによって建設費が膨らめば、最終的には利用者の負担も重くなる。
すでに名古屋では、令和9年の開業を前提とした街づくりも進んでいる。
開業が大幅に遅延することは望ましくない。
川勝氏も、JR東海との協議において、工事を認めるための具体的な条件を示すべきである。
環境への懸念を指摘するだけでは、問題は解決しない。
反対ばかりが知事の役割ではない。
知事には、県民の利益を守ると同時に、国家全体の重要インフラについて大局的に判断し、現実的な解決策を見いだす責任がある。