中国を包む「四面楚歌」と自己反省なき絶望――外部環境の悪化を招いた中国自身の責任
中国共産党の元高官が2020年に指摘した、米中関係の劇的悪化、サプライチェーンの断裂、人民元と米ドルの切り離し、食糧危機など六つの危機。
石平氏は、中国を取り巻く外部環境の悪化を招いた最大の原因は中国自身の行動であり、自己反省の欠如こそが問題の本質であると論じた。
2026年現在も続く米中対立、先端半導体規制、世界的なデリスキングの動きを考える上で重要な記録である。
2020-07-17
本稿が発信された2020年7月、中国共産党政権は、新型コロナウイルスの世界的感染拡大、米中対立の激化、国際企業による生産拠点の見直し、そして香港国家安全維持法の施行によって、急速に厳しさを増す国際環境に直面していた。
それから6年が経過した現在も、本稿で指摘された問題は消えていない。
米国商務省産業安全保障局は、先端半導体や半導体製造装置をめぐる対中輸出規制を継続し、2026年1月にも中国向け半導体輸出の許可審査方針を改定している。
EUも中国との経済関係において「デリスキング」を進めており、2025年第3四半期のEUから中国への直接投資額は、直近8四半期で最低の水準となった。
香港では、2020年の香港国家安全維持法に加え、基本法第23条に基づく「国家安全維持条例」が2024年3月23日に施行され、国家安全法制はさらに拡大された。
一方、IMFは2026年2月の中国経済に関する審査報告で、不動産市場の危機や貿易摩擦などの逆風に直面しながらも、中国経済は一定の強靱性を維持し、直近3年間の世界経済成長の約30%に寄与したと評価している。
したがって、現在問われているのは、中国が直ちに経済的崩壊へ向かうかどうかではない。
中国共産党政権が、自らの対外政策や国内統治が国際社会の警戒と反発を招いている可能性を認め、政策を修正できるかどうかである。
石平氏が2020年に指摘した「外部環境悪化の原因に対する自己反省の欠如」という問題は、2026年の現在も本質的な意味を失っていない。
以下は、「『外部環境悪化』の原因は」と題して、2020年7月16日の産経新聞に掲載された、石平氏の連載コラムからである。
【引用】
中国の外部環境悪化の原因を作り出したのは、まさに中国自身であることは明々白々だ。
それに対する自己反省の徹底的な欠如にこそ、中国の絶望がある。
今月3日、人民日報系の環球時報が注目論文を掲載した。
執筆者は、中国共産党中央委員会対外連絡部元副部長の周力氏。
タイトルは「外部環境の悪化に備えて六つの準備を整えよう」である。
共産党中央委員会対外連絡部は、外国の政党・政治組織と交渉する組織である。
党の外交政策・意思決定に助言する役割も担っている。
そこの副部長を務めた周氏は、国際情勢・外交に精通する大物だけに、「外部環境の悪化」をテーマとした彼の論文は大きな注目を集めている。
六つの方面における中国の「外部環境の悪化」を取り上げ、それらに「備えよう」と呼びかけた論文の要点は、以下の通りである。
①米中関係の劇的悪化、米中間闘争の全面的レベルアップに備えよう。
②外部需要の萎縮、サプライチェーンの断裂に備えよう。
③新型コロナウイルス感染拡大の常態化に備えよう。
④人民元とアメリカ・ドルとの切り離しに備えよう。
⑤世界的な食糧危機の勃発に備えよう。
⑥国際的テロ組織の巻き返しに備えよう。
米中関係の「劇的悪化」を捉えて、「米中間闘争の全面的なレベルアップ」に言及した点は興味深い。
つまり、この共産党元高官の認識において、米中関係はもはや普通にいう「対立」の域を越えて、「闘争」のレベルに達している。
中国側が認識している米中対決の深刻さは、われわれの想像以上である。
周氏が「外部環境の悪化」の二番目に取り上げたのは、「外部需要の萎縮」と「サプライチェーンの断裂」である。
それが指しているのは、中国の対外輸出が頼りにしている国際市場の萎縮と、多くの世界企業が生産拠点を中国から撤退・移転していく動きである。
もちろん、その両方ともが中国経済に甚大な打撃を与え、国内の深刻な失業問題を引き起こしている。
それ以外には、新型コロナの影響や、アフリカ・中東のバッタ被害がもたらす世界的食糧不足が、食糧輸入大国の中国に与える悪影響について述べている。
また、新疆のウイグル人とつながる国際的イスラム勢力が、「テロ」の矛先を中国に向けてくる危険性などについても警告を発している。
全体的に見れば、この論文は、中国にとっての「外部環境の悪化」に対する共産党エリート層の強い危機感の表れであるといってよい。
中国発の四字熟語でいえば、まさに「四面楚歌」の感じである。
その一方、「外部環境の悪化」の原因についての分析が、周力論文からは完全に欠如している。
ましてや、「悪化」を招いたのは、そもそも中国自身の悪行・蛮行であることへの反省はまったくない。
「悪いのはあいつらであって、中国はちっとも悪くない」という中国式の論理が、周力論文の基調となっている。
しかし、客観的な原因分析も自己反省もなしでは、「悪化」を改善することは到底できない。
それどころか、「自分たちはちっとも悪くない」という独善的な態度は、より一層の「外部環境の悪化」を招きかねない。
実際、まさにこの論文発表の数日前、中国政府は希代の悪法である「香港国家安全維持法」を強引に施行した。
そして、これによって米英との対立をより一層深め、西側先進国全体の反発を招き、経済の面においても国際資本と企業のさらなる「脱中国化」を促すこととなろう。
中国の外部環境悪化の原因を作り出したのは、まさに中国自身であることは明々白々だ。
それに対する自己反省の徹底的な欠如にこそ、中国の絶望がある。