香港とは何だったのか――中国共産党・英国金融資本・江沢民派、そして香港陥落の構造
古田博司筑波大学名誉教授と藤井厳喜国際政治学者の対談を通じ、中国共産党と英国の歴史的関係、香港を介した国際金融と対中投資、マネーロンダリング、ファーウェイ、江沢民派と習近平の権力闘争を論じる。
「中国が訳の分からないことをするときは『敵つぶせ』、同じ場合のコリアはだいたい『金よこせ』」という古田博司の指摘で締めくくられる。
2020-07-22
本稿は2020年7月22日に発信した章であり、前章から続く古田博司と藤井厳喜の対談を紹介したものである。
中心となるテーマは香港である。
藤井は、中国共産党と英国との歴史的関係、香港を経由する投資と資金移動、英国金融資本、さらにファーウェイをめぐる英国の対応を論じている。
後半では香港を江沢民派の拠点と捉え、習近平による香港政策を中国共産党内部の権力闘争という観点から分析している。
以下の日本語本文は2020年7月22日の原文であり、文字を変更せず、句点ごとに改行して掲載する。
【引用】
古田 そういう権力闘争のために、香港は潰された。
中国が訳の分からないことをするときは「敵つぶせ」、同じ場合のコリアはだいたい「金よこせ」だと思っていると当たります。
中国が訳の分からないことをするときは「敵つぶせ」、同じ場合のコリアはだいたい「金よこせ」だと思っていると当たります。
以下は前章の続きである。
香港とは何だったのか
藤井 トランプは大統領候補の時、演説で「西洋文明」という言葉をよく囗にしていました。
つまり、米国を中心に西洋文明を保持している、という自負がある。
ところが、チャイナのような古代国家が世界の覇権を握ったら、近代合理主義文明が破滅に追いやられます。
だからこそ、今チャイナと対峙するのは、ある意味、当然のことです。
古田 香港も陥落してしまった。
藤井 英国にはずる賢い旧植民地主義の流れを汲む連中(守旧派=タックスヘイブン派)が存在しています。
香港こそ、共産主義者とその連中が結託する場でした。
戦前から活躍していたチャイナ専門家の佐藤慎一郎氏(1905~99年)の著作集第一巻『汨羅(ぺきら)の淵に佇(たたず)んで中国の激動史を見る』を読んだとき、ハッと気づかされたことがありました。
佐藤氏は次のように記述しています。
「中共を今日まで育成して来たものは、ソ連ではなく、イギリスである。
毛沢東が井岡山で旗揚げした時の軍資金から武器から一切が、イギリスの援助であった。
その後、中共が国民党の討伐にあっても、よく二万八千里(中国の六里は日本の一里にあたる)の逃亡に成功することが出来たのも、揚子江沿岸に権益を持つイギリスが陰に陽に守護しだからである」 と、ここまで中国共産党と英国は深い関係にあったのです。
古田 中華人民共和国ができたとき、最初に承認したのは英国だったでしょう。
藤井 それにも裏があって、中ソ紛争をやらせて、ソ連を疲弊させるという外交的思惑もあった。
香港も、その流れを汲んでいます。
中英で手を組み、返還後も国際金融の場として利用する。
対中投資の7割が、香港経由でなされ、英国金融資本は大儲け。
また、ここ20年ほど、さんざん賄賂で儲けたチャイナの役人は、香港にまず資金を移し、そこから海外に資金を逃避させました。
古田 体のいいマネーロンダリングですね。
藤井 マカオも同じ役割を担っていました。
マカオのカジノを通じて、裏金を表金に換え、海外送金していたのです。
米国はそもそも香港ネットワークの主流から外されていたので、それほど関心の高い地域ではありません。
かつての香港空港の拡張工事でも米国は参入できず、英国企業が落札した。
米国の本音としては、香港の民主政治を潰すのは許せない、でも、タックスヘイブンの香港が潰れることは賛成なのです。
古田 英国と中国の関係は今後どうでしょうか。
藤井 英国は最終的に5Gからファーウェイを排除することに決めましたが、これにも裏がある。
ファーウェイの研究所をケンブリッジ市郊外につくらせることを承認する見込みです(笑)。
古田 実にイギリス人らしい。
平壌にあるブリテイッシュ・アメリカン・タバコエ場みたい(笑)。
藤井 トランプが再選できなかったら、再び英国とファーウェイの関係が復活するというわけです。
古田 イギリス人の祖先はノルマンのバイキングだから、根が山師なんだな。
藤井 香港は反習近平勢力である江沢民派の拠点です。
習近平は民主派など歯牙にもかけていない。
江沢民派が目障りなのです。
江沢民派は紅二代で、香港に金を流し、それを運用して勢力を拡大しています。
習近平にとって江沢民派を潰せるなら、香港の金融センターとしての機能を失っても、まったく構わない。
傍から見ると香港のような「金の卵を産む鶏」をなぜ潰すのか、まったく理解しがたい行為です。
しかし、習近平個人からすると、最大の党内反対派の江沢民派を潰す必要があったのです。
古田 そういう権力闘争のために、香港は潰された。
中国が訳の分からないことをするときは「敵つぶせ」、同じ場合のコリアはだいたい「金よこせ」だと思っていると当たります。
この稿続く。