尖閣諸島は一帯一路の要衝である――中国の東シナ海支配構想と日本に対する戦略的圧力
中国の一帯一路構想と海洋進出において、東シナ海と尖閣諸島はどのような戦略的位置を占めるのか。
中国海警船による常態的な活動、尖閣諸島をめぐる中国の主張、2013年の日台漁業取決めを踏まえ、日本と台湾の連携の必要性を論じた2020年8月3日の記録。
2020-08-03
本稿は、中国の第一列島線・第二列島線戦略と南シナ海における既成事実化を論じた前章に続き、中国の海洋戦略が東シナ海と尖閣諸島にどのようにつながっているのかを考察したものである。
習近平は2013年、陸上の「シルクロード経済ベルト」と海上の「21世紀海上シルクロード」を提唱した。
中国政府の正式文書では、海上シルクロードの主要ルートは、中国沿岸から南シナ海とインド洋を経て欧州へ向かう航路、および南シナ海から南太平洋へ向かう航路と説明されている。
したがって、本文における「中国の港から世界を目指すためには、東シナ海を通過するのが主要なルートだ」という記述は、一帯一路の公式ルートそのものを説明したものではなく、中国東部および北部の港湾、海軍の太平洋進出、第一列島線、尖閣諸島の位置を結びつけた著者の戦略的分析である。
一方、日本国外務省は、尖閣諸島が歴史的事実と国際法に照らして日本固有の領土であり、日本が有効に支配しているため、解決すべき領有権問題は存在しないとの立場を示している。
引用
「一帯一路構想において、中国の港から世界を目指すためには、東シナ海を通過するのが主要なルートだ。そのため、日本を抑え、東シナ海を手中に収めることを目指している」
本文
2020-08-03
一帯一路構想において、中国の港から世界を目指すためには、東シナ海を通過するのが主要なルートだ。そのため、日本を抑え、東シナ海を手中に収めることを目指している
以下は前章の続きである。
尖閣は、一帯一路の要衝
習近平国家主席は、就任以来「中華民族の偉大なる復興」を掲げ、ユーラシア大陸を横断するシルクロードを支配し、中国から北アフリカまでの航路を切り開いた15世紀のように、世界に君臨しようとしている。
その手法が、「一帯一路」である。
大陸国家として繁栄してきた中国は、「一帯」と呼ばれる陸路では絶大な影響力を誇るが、海路は海洋国家・日本や米国に後れを取ってきた。
そこで、支配海域の拡大を時間をかけ進めてきたのである。
一帯一路構想において、中国の港から世界を目指すためには、東シナ海を通過するのが主要なルートだ。
そのため、日本を抑え、東シナ海を手中に収めることを目指している。
尖閣諸島は、東シナ海の扇の要の位置にあり、一帯一路の要衝なのだ。
中国の尖閣諸島略奪計画は、粛々と進められてきた。
そして、その結果、尖閣諸島の周りには、常に中国海警局の警備船が航行し、あたかもそこが「中国の海」であるがごとく振る舞っている。
残念ながら、日本の海上保安庁は中国警備船の動きを阻止することはできていない。
そして、中国は、堂々と尖閣諸島は中国の領土であると公言するようになっている。
そこには、日中国交正常化の交渉の際に鄧小平氏が主張した「問題の棚上げ」などの概念はない。
中国は、尖閣諸島、ひいては東シナ海を完全に手中に入れるため、最終的段階に突入しているのだ。
台湾では、国民党の馬英九総統の時代、中国本土の活動家と連帯するグループがいた。
しかし、2013年、日本が台湾漁民による東シナ海での漁を々一部認める「日台民間漁業取り決め」を結んだことにより、台湾での活動をほぼ終息した。
李登輝元総統をはじめ、台湾では、尖閣諸島が日本の領土であることを認識している有識者が多いことから、日本と台湾が連携し尖閣諸島の活用を考えるのも一案である。
この稿続く。
資料注
本文は2020年8月3日の原文を一字一句変更せず、そのまま掲載した。
第一に、中国政府の一帯一路に関する正式文書では、「21世紀海上シルクロード」は、中国沿岸から南シナ海とインド洋を経て欧州へ向かうルート、および中国沿岸から南シナ海を経て南太平洋へ向かうルートとして説明されている。
また、中国政府は、中国沿岸の港湾を結び、安全で効率的な海上輸送路を構築することを一帯一路の重点としている。
第二に、日本政府は、尖閣諸島について、歴史的事実および国際法に照らして日本固有の領土であり、現に日本が有効に支配しているため、解決すべき領有権問題は存在しないとの立場を一貫して示している。
第三に、外務省は、中国海警船などが、荒天の日を除いてほぼ毎日のように尖閣諸島周辺の接続水域に入り、日本の領海にも繰り返し侵入していると説明している。
海上保安庁は、2012年9月以降の接続水域内への入域および領海侵入の状況を、日ごとの資料として継続的に公表している。
第四に、本文中の「日台民間漁業取り決め」は、一般に「日台民間漁業取決め」または「日台漁業取決め」と表記される。
同取決めは2013年4月10日、日本と台湾の民間窓口機関の間で署名された。
取決めは、漁業法令の適用を免除する水域、特別協力水域、漁業問題を管理する合同委員会などを定めたものである。
第五に、本文中の「漁を々一部認める」は、原文の誤植と考えられ、通常の文章としては「漁を一部認める」となる。
ただし、原典・決定版としての原文保存を優先し、本文には訂正を加えていない。