朝日新聞の慰安婦報道が国際問題と日韓関係にもたらした影響――検証記事における自社責任への言及の欠如をめぐって
朝日新聞の慰安婦報道をめぐり、強制連行説の国際的拡散、慰安婦像、日韓関係への影響、検証記事における自社責任への言及の欠如、英語発信の問題、さらに同紙の歴史的な報道姿勢を論じた対談記録。
2020年8月18日
本稿は、朝日新聞による慰安婦報道の検証をめぐり、その報道が国際社会と日韓関係に及ぼした影響、自社の報道責任への言及、海外への英語発信、さらに朝日新聞の歴史的な報道姿勢について、櫻井、門田、阿比留の三者が論じた対談部分を収録したものである。
ここで問われているのは、単に個々の記事の訂正や取り消しにとどまらない。
一度広く流布された情報が国際社会でどのような認識を形成し、その後の外交関係や国家・国民に対する評価にどのような影響を与えたのか、そして報道機関はその結果についてどこまで説明責任を負うべきなのか、という問題である。
「朝日がつくり出した話が、こういうふうにまさに国際問題になって、あたかも事実であるかのように独り歩きを始めている。銅像の設置もそのひとつです。」
日韓関係にもたらした悪影響に対する自らへの言及なし
櫻井 強制連行が独り歩きしたために、何が起きているのか。韓国の人たちが今米国で慰安婦を題材にした「コンフォート(comfort=奴隷)」というお芝居をしていますね。ニュースで見ましたが、嫌がって泣き叫ぶ女性を暴力的に連れていく、犯そうとするシーンが舞台で描かれています。慰安婦問題について何も知らない米国の方々は「こんな話があったなんて知らなかった。なんてひどい話だ」と思うのは無理もなく、実際、そういうコメントを出しています。
朝日がつくり出した話が、こういうふうにまさに国際問題になって、あたかも事実であるかのように独り歩きを始めている。銅像の設置もそのひとつです。
責任の重さをはかり、にもかかわらず朝日がほとんど反省していないことを考えると私は、朝日新聞の廃刊を促したいと思います。文藝春秋が雑誌「マルコポーロ」でユダヤ人虐殺事件をめぐる記事で廃刊になりましたね。
門田 アウシュビッツ収容所に「ガス室はなかった」という記事だったと思います。
櫻井 それからもう一つ、アグネス・チャン氏が講演で高額の講演料だという記事を書いたけれども、それが必ずしも事実でないとわかった講談社発行の雑誌、「DAYS JAPAN」も廃刊になりました。後者の判断が妥当か否かは議論の余地があると思いますが、とにかく廃刊になった。ちなみに「DAYS JAPAN」は廃刊から十四年後に別の経営体から再び出版されています。今回朝日の行ったことは、この前二社に比べても負けず劣らずひどい。朝日の行ったことは、過去の日本人、現在の日本人、そして未来の日本人、日本国に対する犯罪的報道ではないでしょうか。
すでに少し触れましたが、朝日の報道が「日本人はそんなに悪いことはしていない」と考えていた多くの韓国人に悪影響を与えた。これも見逃せない点です。韓国でも「慰安婦の強制連行などはなかった。実は父親や夫が売ったのだ」という真面目な論文や本を書いている学者もいるわけです。しかし、そうした話を全部横に飛ばしてしまって、日本軍が強制連行したという間違った話に仕立てて、本来はもっと親日的であり得た人々を、反日に駆り立ててしまった。韓国では今や親日的なことを口にするだけで社会的に抹殺される状況です。その意味で朝日は韓国の人々にも、計り知れない不幸を負わせている。朝日の責任は大きい。だからやっぱり朝日を一回廃刊にしてジャーナリズムをやる気があるのならば、新しい陣容でもう一回新聞を立ち上げなさいというところに来ていると私は思います。
阿比留 朝日は六日付の検証記事では、一ページを割いて「日韓関係なぜこじれたか」と書いているのですが、そこに自社の責任はまったく言及がない。先の政府の河野談話の検証報告書にも、平成四年の一月十一日付の朝日新聞の記事によって韓国世論が過熱したという指摘がされている。にもかかわらず、そういうこともまったく触れていない。私はあるとき─これは冗談ですけど─「世の中に絶えて朝日のなかりせば 日韓関係のどけからまし」とちょっと詠んでみたのですが…。
櫻井 いいですね。(笑)
阿比留 ほんとに今のような状況になってしまうと、修復はなかなか難しい。けれども、もともとはもっとうまくやれたはずの日韓関係をここまでこじらせた大きな要素は朝日ですよ。
櫻井 最大の責任者でしょう。
門田 やはり一度けじめをつけないと、影響が計り知れないほど大きい。私の息子もそうですが、外国でこのことは至るところでネックになっているわけです。若者の国際進出の壁となり、そして日韓関係の真の意味の友好、若者同士の交流や友好にも大きな影を落としています。朝日のやったことは、たしかに廃刊に値すると思いますね。
阿比留 でも実際は廃刊どころか、今回の朝日の不十分な検証記事ですら、朝日は英語で発信していない。
櫻井 そうです。
阿比留 明らかに外国での評判が落ちることを気にして、日本の国益よりも自社のイメージを大事にしている印象です。
門田 しかも韓国では、この朝日新聞のその検証記事でよけい慰安婦問題が盛り上がっている。朝日が女性の人権が踏みにじられたことが本質だと書いたことが、大きく報道され、さらなる問題になっています。
櫻井 朝日は歴史の節目で大きな間違いを犯して、しかし絶対反省しない。これを繰り返してきました。昭和二十年の八月十四日の朝日新聞社説は、「敵米英」が「広島ならびに長崎の空襲において原子爆弾を使用」「無辜のわが民衆を殺戮」したと書いたうえで、「ただこれに対しては報復の一途あるのみである」「一億の信念の凝り固まった火の玉を消すことはできない」と煽っているのです。しかし、五日前に下村宏情報局総裁から朝日はすでに降伏の可能性を聞かされているのです。当時の朝日幹部の日記を見ると、急に論調を変えて無条件降伏とは言えない、「知らぬ顔をして、従来の『国体護持、一億団結』を表に出して」いくのがよいということが書かれている。
新聞人としてどうかと思うのは、降伏に関する情報を取ったからには、いち早く書くべきです。書けないのならば紙面で匂わすのが当たり前だと思う。ところが、降伏前日の社説まで「一億総火の玉」説を書いている。そして戦後はすっかり変わっていくわけです。
朝日人、朝日の知識人という存在は度し難いと私は思います。どういう状況下でも反省しない。自らを常に高みに置く。国民や世論を下に見て自分たちが指導していくという考えが染みついている。こんな新聞を読者は許してはならないとさえ、思いますね。
阿比留 それに言ってきたことはほぼすべて間違いだらけですからね。単独講和に始まり、六〇年安保、PKOも然りですし、最近の反原発、特定秘密保護法、集団的自衛権だってそうです。
門田 中国の文化大革命報道から北朝鮮の〝地上の楽園〟報道もそうですね。
櫻井 カンボジアのポル・ポト革命も。
阿比留 ですから今回の集団的自衛権を巡っても、ある外務省幹部が私に言っていたのは、「朝日がこれだけ反対してくれると自信を持って断行できる」。
門田 櫻井さんのおっしゃる昭和二十年八月十四日の社説からその直後の変わり身の早さはこの新聞の特徴でもあります。高校野球があったのでそれを言うと、明治四十四年に朝日新聞は「野球害毒論」という大キャンペーンを張っている。野球は害毒だと二二回に渡る大キャンペーンを展開しているのです。
櫻井 野球の何が害毒?
門田 例えば野球では相手のプレーを盗みますよね。これは「巾着切り(きんちゃくきり)のようなスポーツだ」というわけです。盗塁もそう。相手のタイミングをはずして投げるといった技量なども「賤技」つまり卑しい技だと新渡戸稲造に言わせ、乃木希典まで駆り出しているのです。乃木希典には「こんなに時間を要する試合は若者に弊害をもたらす」といったことまで言わせて当時二二回の大連載で野球を徹底批判している。ところが、その四年後、朝日は全国中等学校優勝野球大会を始めるのです。今の夏の甲子園大会の前身ですよ。皆、唖然としたわけです。業界で朝日新聞だけは野球に反対だからライバルからはずしていたわけですが、そうしたらいきなり全国中等学校優勝野球大会を主催して、それが今、第九十六回を数える大会になっているのです。彼らの変わり身の早さは昔から何も変わっていない。節操がないわけです。あっという間に変えてしまう。