黙殺されたマッカーサー証言と「井伏鱒二現象」――NHKは歴史的証言を放映せよ

2017-6-16
以下はWill7月号増刊歴史通が故渡部昇一氏を特集し、永久保存版とした論文集からの続きである。
作家・井伏鱒二最大の傑作といわれる作品に『黒い雨』(新潮文庫)があります。
「原爆文学」の最高峰に位置づけられ、井伏が文化勲章を受章するきっかけになった作品です。
ですがこの『黒い雨』は、重松静馬という人物が書いた『重松日記』の剽窃だったことが、猪瀬直樹氏『ピカレスク』(小学館刊)のなかで暴かれています。
それだけでなく、井伏の最初の作品『山椒魚』がロシアの風刺文学作家サルティコフ=シチェドリンの『賢明なスナムグリ』にそっくりなことを明かし、「さよならだけが人生だ」という漢詩の訳文など、井伏の作品の多くが盗作やリライトだったことも明らかにしています。
これだけのことが書かれているにもかかわらず、このことは文壇からは無視あるいは黙殺されてしまったのです。
朝日新聞などは、作家による盗作が露見するとこれでもかと書きたてるのに、指弾しませんでした。
思うに、もしこのことを取り上げて検証したならば、井伏氏に文学賞などを与え「井伏神話」をつくってきた人たちの面子が立たないからでしょう。
マッカーサーの証言が黙殺されたこともまさにそれと同じことで、ですから「井伏鱒二現象」だと言ったわけです。
しかしマッカーサー証言黙殺については、井伏の行為よりも、何百倍もの害悪と禍根を残しました。
黙殺されたまま、今日まで日本人のほとんどが知らない一方で、「日本悪しかれ」史観の立場に立つことで、出世したり利権をむさぼりつづける大学教授ら知識人やジャーナリストたちが平然といるわけです。
この輩にとっては、東京裁判を命じた張本人であるマッカーサーに、「日本は自衛のために戦争をした」と言われてしまったら、面子が立たないどころか立場が危うくなってしまう。
だから世に知らしめることをしなかったのでしょう。
マッカーサー証言をTV放映せよ
第三段階としては、そのマッカーサー証言を日本に広く知らしめることです。
「梅毒」は長い時間をかければ治るでしょうが、病原菌が脳に到達しないうちに治さなければなりません。
ですから、NHKがゴールデンタイムに、「マッカーサー一代記」を製作し放映することを提案したい。
マッカーサーは、第一次大戦では数々の戦功を重ね、五十歳で史上最年少で陸軍参謀総長に任命されるなど、目覚しい昇進を遂げました。
その後、彼は米極東陸軍司令官として対日戦を指揮することとなりますが、バターンとコレヒドールで日本軍の猛攻を受け、部下の将兵数万人を置き去りにしてオーストラリアに一時的にせよ、撤退する屈辱を味わいます。
やがて、ニューギニアから島伝いに北上する対日反攻を展開、結果として「アイ・シャル・リターン」という有名な言葉通り、レイテ島上陸を果たしました。
そして、日本の敗戦に際しては連合国最高司令官を務め、公職追放、憲法改正、財閥解体、農地改革などの占領政策を実施していった。
一九五〇年一月、アチソン米国務長官は「西太平洋におけるアメリカの防衛線は、アリューシャン列島-日本-沖縄―フイリピンを結ぶ線である」と演説しました。
台湾、韓国は防衛ラインから除外されていたわけです。
この声明が、朝鮮戦争勃発の原因と言われていますが、国連軍総司令官として国連軍を指揮したマッカーサーには、東京裁判で日本が縷々述べていたことがよく解ったのでしょう。
戦争収拾方法をめぐって、主戦論派だったマッカーサーは、トルーマン政権と対立し、けっきょく解任され、本国に召還されます。
そして、上院軍事外交合同委員会で前述の証言をするわけです。
そのシーンまでを放映するんです。
最後のシーンは、くだんの「日本は主として自衛のために戦争をした」という台詞を述べるところで終わるという構成にする。
その効果たるや覿面なはずです。
日本人ひとりひとりに、彼の述べたことが伝われば、日本の思想界や教育界、あるいは政治外交といった分野を、長い問侵してきた「梅毒」は完全に治るに違いありません。
もしNHKがこの放送をやりたがらなかったら、全国民が料金不払い運動でもやるべきでしょう。
(「WiLL」2005年9月号初出)

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