安倍晋三元首相が暴いた北朝鮮の嘘――横田めぐみさん拉致事件と朝日新聞の醜悪

2024-01-15

以下は、高山正之の最新刊『変見自在 安倍晋三を葬ったのは誰か』からである。
本書は、週刊新潮の高名な連載コラムを書籍化したシリーズの最新刊だが、原文には更に磨きがかけられ、より一層読みやすくなっている。
この一冊だけでも、彼はノーベル文学賞に値する。
日本国民のみならず、世界中の人たちが必読。
安倍元首相が暴いた北朝鮮の嘘
横田めぐみさんが学校からの帰り道で忽然と姿を消したのは、1977年11月のことだった。
父親の滋さんは夜が明けるまで娘を捜した。
校舎内のトイレを一つ一つ開けて捜し、翌日も、その翌日も、通学路や小道、海岸を歩き回ったが、何の手掛かりも見つからなかった。
とうとう、その場にしゃがみ込んで泣いた。
そんな日々が10年も続いた1988年、大韓航空機爆破事件の実行犯、金賢姫が、拉致された日本人女性について語った。
彼女の身柄を確保したのは、バーレーンの日本大使館員だった。
しかし、韓国は彼女の身柄を要求した。
戦前、日本は未開だった朝鮮の人々に教育、医療、社会基盤を与えた。
しかし彼らは、自分たちはひどい扱いを受けたとして、日本に金と援助を要求した。
金賢姫の身柄要求も、その一例だった。
しかし韓国は、その後、拉致に関する情報の提供を渋った。
「恩」という言葉を知らない人々だった。
金賢姫を韓国に引き渡したことは、日本にとって痛恨の失敗だった。
それでも横田夫妻にとっては、わずかな希望の光に思えた。
それを追うように、英国留学中に消息を絶った有本恵子さんの両親のもとへ、彼女が北朝鮮に拘束されていると記された私信が届いた。
北朝鮮が日本国民を拉致したことを証明する最初の証拠だった。
ところが外務省は、この問題を調査するどころか、「日朝交渉の妨げになる」と両親に口外しないよう求め、門前払いした。
両親は土井たか子の事務所を訪ねた。
しかし、その訪問は最悪の結果を招いた。
土井も外務省と同様、誰にも話さないよう口止めし、直ちに朝鮮総聯へ通報した。
その2カ月後、北朝鮮の秘密を明らかにした恵子さんと夫、そして子供は不審な死を遂げた。
役所も政治家も、誰一人として取り合おうとしなかった。
しかし、恵子さんの両親の話に耳を傾け、この問題を解決すると約束した人が一人だけいた。
「その人こそ、当時、父・晋太郎外相の秘書官だった安倍さんでした」と、早紀江さんは安倍元首相を追悼する産経新聞への寄稿で記している。
それから10年後の1997年、めぐみさんに関する情報が突然現れた。
北朝鮮の工作員が13歳の少女を拉致したと証言し、脱北者もめぐみさんが連れ去られる場面を目撃したと語った。
しかし田英夫や埼玉大学の吉田康彦らは、「韓国による捏造だ」と、この話を否定した。
日本で進歩派を名乗る文化人たちの反応は、共産主義国家である北朝鮮が拉致などするはずがない、というものだった。
外交の場でも、拉致問題は無視され続けた。
それを象徴していたのが、外務省アジア局長の阿南惟茂と、外務省記者クラブ「霞クラブ」との懇談だった。
朝日の記者が、「証拠もないのに、拉致疑惑だけが独り歩きしている」と茶化した。
「モリカケ」騒動のときにも、ぜひ聞かせてもらいたかった台詞だが、それはさておく。
阿南はその誘導に乗り、「証拠はない。疑惑の段階から一歩も出ていない」と語った。
そう誘導した朝日も社説で、拉致被害者家族を嘲笑するように、「拉致疑惑が日朝国交正常化交渉の障害になっているのではないか」と書いた。
阿南の後を継いだ外務省アジア大洋州局長の槇田邦彦も、自民党外交部会で、「たった10人の(いわゆる)拉致問題で、日朝国交正常化交渉を止めてよいのか」と語った。
朝日と同じ論法だった。
驚いたことに、そんな人間が日本の外交官だった。
北朝鮮は、朝日が日本の世論を説得してくれたと思ったに違いない。
2002年、北朝鮮は小泉首相を招き、日本人拉致を認めた。
外務省は、北朝鮮が拉致を認めれば、日本は笑顔で1兆円を与えると約束していた。
しかし小泉首相に同行した官房副長官の安倍は、盗聴されていることを承知のうえで、「拉致被害者を日本へ帰さないのなら、協定を破棄するしかない」と小泉に告げた。
こうして拉致被害者5人は日本へ帰国したが、めぐみさんを含む8人については死亡したと告げられた。
しかし早紀江さんによれば、「安倍さんは、死亡したという証拠は何もないと、私たちに力強く語ってくれた」という。
そして北朝鮮の作り話を暴いた。
実際、北朝鮮が「めぐみさんの遺骨」として持ち込んだ骨片の一部は、DNA鑑定によって「まったく別人、それも複数の人間」のものと判明した。
外務省の田中均が、犯罪国家・北朝鮮との口約束を理由に、帰国した5人を送り返すと言い出したときも、安倍官房副長官は「外交交渉の人質にはさせない」と断固として拒否し、その家族も日本へ帰国させた。
北朝鮮には一円も渡さなかった。
安倍元首相は、武器を持たない日本でも、ならず者国家を相手に堂々と交渉できることを示した。
それに比べて、虚偽の告発とその場しのぎで生きる朝日新聞の醜悪さは、異様なほど際立っていた。
(2022年7月28日号)

2024/1/14 in Kyoto

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