高山正之「さらばクルドよ」――谷村新司『昴』の原風景とアナトリア高原のクルド人

2024-01-18
以下は本日発売された週刊新潮の掉尾を飾る高山正之の連載コラムからである。
本論文も、彼が戦後の世界で唯一無二のジャーナリストであることを証明している。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読。

さらばクルドよ
「地平線まで続く大草原に満天の星」 
「昔からまぶたに浮かぶ心象風景を、歌詞に託したのが『昴』だというー」 
と、これは谷村新司を悼む産経抄の冒頭部分を書き写したものだ。 
「そして20年」とコラムは続く。
テレビ局が名曲の「原風景」を探す旅を企画し、谷村はそれが支那にあると信じた。 
西安に飛び、そこからバスに揺られて8時間。
辿り着いたところが「死せる孔明、生け暴る仲達を走らせた」五丈原だった。   
バスを降りて「荒野に向かう遣」の先、壮大な空に目をやった谷村の一言は「違う」だった。 
周りが揃ってずっこけるのが目に見えるようだ。 
しかし少し考えれば原風景を「支那で探す」ところから間違っていたのではなかったか。
支那と言えば世界の温室効果ガスの総排出量の32%を一か国で占める。 
都市も景色も濃いスモッグが覆って「PM2・5」なる新手の汚れも生み出した。
おまけに黄砂も舞う。 
大気汚染と相まって支那人の鼻も喉も肺の奥までも汚す。
だから彼らはところ構わず痰を吐く。
元産経新聞台北支局長の林慧児は天津生まれで、大通りのポプラの幹が真冬でもてらてち光り輝くのを覚えている。 
不思議に思った母が傍に寄って、それがみみなの擦り付ける手洟と知って卒倒したのも覚えている。
そういう国で透き通る夜空にさんざめく星々が見えると思う方がおかしい。
だいたい昴は牡牛座の肩の辺りの三等星の集まりだ。六連星(むつらぼし)とも言う。 
空が少しでも濁れば見える星々ではない。 
谷村がそこまで「昴」の原風景を欲していたのを知っていたら、一も二もなくトルコ行きを勧めていた。 
イラン国境から西へ。
ヴァン湖から400㌔。
標高の高いアナトリア高原を走っていたとき、緑の草原がどこまでも広がる台地に行き合った。       
緑は遮る山並みもなく地平線の際まで続き、ちぎれ雲が浮かぶ青い空がそれを包んでいた。 
そこを車で走ろう。
ベトナムからアジアハイウェーを走り、様々な国を取材して新聞連載を続けること半年間。
今、終点のトルコまで来た。
旅の掉尾を飾るに相応しい壮大々写真になるだろう。    
産経抄を読んだとき、すぐこのアナトリアの草原を思い出した。 
あそこに夜の帳(とばり)を下ろせばいい。
見上げる南東の空にオリオンの三ツ星が並び、その先に牡牛座のアルデバランが輝く。 
すぐ後ろにプレアデス星団こと昴が瞬く。
谷村新司もきっと思い残すことはなかっただろう。 
唯一つ、注意しておくことがある。 
こちらがアングルを決めていい映像を撮っていたら、異様な黒装束の一団に取り囲まれた。
お前らは何者かと問う。
趣旨を説明すると、この辺を仕切るタルトの族長という若者が応じた。
「趣旨はいい。ただここは草原でなく我々の大麦畑だ」と無残に踏みにじられた畑の方を顎で指した。    
怒りが燃えていた。
殺されるかと思ったが、たまたまこちらには大統領オザトルの親書があり、大統領はまた偶然にもこの若者の割礼父(キルベ)だった。 
生還できたのは奇跡に近かった。
草原か畑かはよく気を付けることだ。 
今、そのコワいクルド人が世界に出回る。
スウェーデンではクルド人の親玉が仕切る難民ギャングが治安を乱し、軍隊が出動する騒ぎになっている。 
日本にもいいトルコ人を装って紛れ込み、川口市には2000人がたむろする。 
クルドの偉人と言えば高潔を意味するサラディンがいる。
第3回十字軍を破ったイスラムの英雄だ。 
しかし川口にいる末裔どもはアラーの教えも忘れて焼酎をあおり、通行女性に絡み、抗争に飽きると改造車で暴走する。 
体験から言えば彼らは実にコワい。
そして彼らには草原が似合う。
あっちで昴を見るよう勧めたい。

2024/1/17 in Kyoto

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