中国「千人計画」の契約が明かす知的財産獲得の構造――「影の研究室」と米国研究成果の流出
中国の「千人計画」をめぐる米上院報告書から、参加科学者に中国のために働くこと、契約を秘密にすること、中国側研究機関へ知的財産権を譲渡すること、さらに米国での研究を再現する「影の研究室」を中国に設けることが求められていたとの指摘を紹介した章。
NIHや米エネルギー省の調査を通じ、研究者、人材、電子ファイル、先端研究と中国の軍事力近代化をめぐる問題を論じる。
2020-07-27
本稿は2020年7月27日に発信した章であり、前章に続いて、月刊誌『Hanada』掲載の産経新聞論説副委員長・佐々木類氏の論文「習近平の頭脳狩り『千人計画』」を紹介したものである。
前章では、チャールズ・リーバー教授をはじめとする米国での捜査・訴追、中国の人材招聘政策、軍民融合、「中国製造2025」、そして2019年11月に公表された米上院の超党派調査報告書が取り上げられた。
本章では、その報告書が指摘した「千人計画」の具体的な契約内容へと踏み込み、中国側研究機関への知的財産権の移転、米国での研究を再現する「影の研究室」、研究資料の国外持ち出し、さらには中国の防衛力近代化につながる研究計画について記している。
以下の日本語原文は変更せず、そのまま掲載する。
本文
2020-07-27
金に釣られて仲間を売る人間はどこの国にでもいるからいまさら驚かないが、それにしても、売国奴という三文字以外に当てはまる言葉が見つからない
以下は前章の続きである。
そのなかで最も有名なのが、千人計画だとしている。
報告書は千人計画について、2008年に始まり、2017年までに7000人の研究者を集め、ボーナスや諸千当や研究資金が用意されたと指摘している。
問題なのは、契約内容だ。
ポートマン上院議員によると、契約書は千人計画に参加する科学者に対し、中国のために働くこと、契約を秘密にし、ポスドクを募集し、スポンサーになる中国の研究機関にすべての知的財産権を譲り渡すことを求めているという。
契約書はまた、科学者たちが米国で行っている研究を忠実にまねた「影の研究室」を中国に設立することを奨励しているという。
NIHのマイケルーラウアー副所長は連邦議会の公聴会で、「中国は『影の研究室』のおかげで、米国で何が進んでいるかを世界に先駆けて知ることができる。
NIHが『影の研究室』の存在を米国の他の研究機関に(警戒を促すために)知らせると驚かれる。
多くの研究機関は、職員が中国に研究室を持っていることを知らなかった」と証言している(ネイチャー・アジア・コム日本語版)。
エネルギー省の調査では、NIHに所属していたあるポスドク研究員は、千人計画に選ばれて中国で教授職を得、中国に戻る前にこの研究所から3万件の電子ファイルを持ち去ったという。
幸い、機密扱いではなかったためにNIHにとって致命傷とはならなかったようだが、エネルギー省は研究員の行為自体を悪質な事案として重大視している。
エネルギー省自身も、議会報告書が公表される前の昨年六月、省内の研究者の千人計画への参加を禁止した。
NIHの研究員は、中国の研究機関に対し、米国での自分の研究分野は高度な防衛力を持つために重要なものだと売り込み、中国の防衛力の近代化を支援する研究を計画していたという。
金に釣られて仲間を売る人間はどこの国にでもいるからいまさら驚かないが、それにしても、売国奴という三文字以外に当てはまる言葉が見つからない。
この稿続く。